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#289 聞くの遅くね?

今日も坪内逍遥の『当世書生気質』を読んでいきたいと思います。

『当世書生気質」』はいよいよ最終回に突入!任那くんからの手紙を読んでいる小町田くんのところに、倉瀬くんが登場!田の次のことで話があるから、応接所へ来いと呼びつけます。行ってみると、そこにいるのは守山くん。久々に会った三人は、服装に関する議論で、桐山くんにコテンパンにやられた須河くんのことで盛り上がります。小町田くんが言います。

小「ヘヘイ。不思議だネ。須河と桐山とは莫逆[バクギャク]だといふ話だつたが。」
倉「どうして莫逆どころぢゃアない。今まで親しくしてゐたのは、全く須河が桐山に媚[コビ]てゐたからさ。いはゆる知音[チイン]ぢゃアなかつたのさ。而[シカ]して交情[ナカ]の悪くなつた源因が可笑[オカシ]いテ。君は大方[オオカタ]御存じぢゃアなからうが、先日噴飯的の珍談があつてネ。須河が桐山と草津の温泉で出会[シュッカイ]したといふ事件がある。」
友「なるほど、だれかにその話を聞いたやうだ。たしか桐山が眼鏡をなくして」
倉「それそれ。それが可笑[オカシ]い訳で、実はあの時に須河の野郎が、目鏡[メガネ]を板の間で拾つたさうだが、桐山がゐるのに気がついたからして、見つけられちゃア大変だと思つてか、故意[ワザ]と知らん振[フリ]でゐたところが、イザ帰るといふ時に臨んで、覚えずその眼鏡[メガネ]をおッことしたので、それが元で隠謀露見。桐山が真憤[ムキ]になる。須河は退怯[ショゲ]る。よっぽど奇妙珍不可思議だつたさうだ。しかし双方とも弱身[ヨワミ]があるから、その日はグズグズですんださうだが、それから後[ノチ]は敵同士[カタキドウシ]同様、随分抱腹[ホウフク]な珍事が多いよ。」
友「ハハハハ。そいつア面白い後談[ゴダン]だつたネ。」ト話なかばへ小町田粲爾が、衣服を被[キ]かへて出来[イデキタ]れば、さらばとばかり三人が、急[イソイ]で学校をたちいでつつ、兼て門前にまたせおきし車に守山が乗うつれば、小町田は、これに相乗なし、倉瀬は別に車をやとひて、やがてこれに乗うつりつ。守山は倉瀬に向ひて、
友「オイ倉瀬君、少し遠くッてお気の毒だが、親父[オヤジ]を呼寄せる都合もあるから、新橋の方まで来てくれたまへ。オイ車夫[ゴスケ]、新橋まで帰つてくれ。」
車夫「ヘイヘイ。」ガラガラガラ。
車の上にて小町田は、守山に打向ひ、
小「倉瀬が余[アン]まり急ぐからして、何も理由を聞ませんでしたが、全体けふは何の御用ですか。僕に用事でもある訳ですか。」

って、ようやく聞くんかい!w

ということで、小町田くんが、やっと本筋に戻してくれたところですが、この続きは…

また明日、近代でお会いしましょう!

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