それでは今日も尾崎紅葉の『三人妻』を読んでいきたいと思います。
六月のなかば、神戸の分店で揉め事が起こり、余五郎はその地に赴きます。今夏は家族で興津に海水浴に行くつもりが、肝心の人が留守となり、この話は立ち消えになるが、お末が余五郎のお帰りを待つまでなしと思い立ち、明日の発足と定まります。さいわい紅梅も暇の身となり、ぜひお伴にと仰せつけられます。明日は暗いうちの一番汽車でも、今夜の最終汽車でも一刻も早く参りとう存じますと、紅梅は十三のお末よりも勇み立ち、お麻に笑われ、いろいろ支度もあれば心急かされて暇乞いしますが、まっすぐに帰らず、お艶の家に立ち寄ります。思いがけぬお出でにお艶は喜びますが、紅梅は気のない顔。今朝、本家から使いの者来て、何事かと御用を窺いに行くと、余五郎の留守を好機に興津の別荘で保養にと私を連れて行くというありがた迷惑。イヤと言えばご立腹、その返しの恐ろしさに、ありがとう存じますと明日の朝お供して興津に行くことになるが、窮屈の思いするは保養よりも寿命の毒、見込まれたが不運と諦めて、行きたくないのは山々だが、逃れられぬ義理に責められる切なさを思いやりたまえとお艶に言います。
お艶、素直すぎるだろw……紅梅の言葉が巧みなのか……いやはや嫉妬とは恐ろしいものですね……
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!