それでは今日も尾崎紅葉の『三人妻』を読んでいきたいと思います。
新聞社に探りをいれた事実を、あからさまに余五郎の耳に入れれば、いかなる椿事を仕出すか……。あの記事は、お才に棄てられた菊住の虚説とし、今後身を慎めば、世間のうわさも七十五日とお才に意見を加えるが、ひとつマズイのはお才のもとを訪れたこと。伝内から伝わってしまえば、お才への忠告も心苦しいものとなる。そこでウソは言わないが、事実を半分隠して、このたびは不埒な自分に免じて許してほしい事、お才の浮気のもとは、余五郎がお才を疎遠にした事、今後は満遍なく来てほしい事を伝えると、余五郎は笑い、山瀬の頼みなら知らぬ顔して何も言わないと言います。余五郎が菊住はどうしていると問うと、某省の雇いとなって、ある若後家の男妾を稼ぎおると答えると、あのような意気地なしの男を忘れられぬとは、お才の気性にも似合わないことだが、この道の格別というはそこであると言います。
というところで、「後編その十五」が終了します!
さっそく「後編その十六」へと移りたいのですが……
それはまた明日、近代でお会いしましょう!