それでは今日も尾崎紅葉の『二人比丘尼色懺悔』を読んでいきたいと思います。
やせ衰えた体で脛を組み、刀にすがって乱髪の頭を垂れる小四郎。自分の体も今宵で見納め……。思い出すのは、妻の若葉のこと。出陣の際の別れは、2月6日、春の曙……。草履を結び、兜を受け取り、身を動かさず、声を出さず、見つめ合うふたり……。「健固で……」という小四郎、「御無事で……」という若葉。胸は煮える、五臓は千切れる、身を伸ばして見渡せば、小四郎の影は二尺ばかり……。小四郎を眺めるが、あいにく眼を曇らす涙。拭ってまた見れば、薄黒き粒となった姿も跡なく消えます。若葉は眼を閉じ手を合わせ「南無正八幡大菩薩」と唱えます。そして……再び現実へと戻ります。小四郎は太刀を鍔元からまで眺めます。我が身を護るべき太刀は、今、我が腹を裂く……我が本意か、太刀の本意か……「父上の形見と思えば、太刀までが懐かしい……一刻も早く父上母上に対面しようか……」。太刀を袖に巻き、切っ先を少し露わにし、下腹を左手で撫でまわし……「伯父上伯母上に受けたご恩を書き置きにて述べたいが、矢による傷のためどうも手が……明日はいよいよ伯父上がお帰りになる……勇んでお帰りになって、小四郎の切腹……さぞ仰天あそばすことであろう……」
というところで、『二人比丘尼色懺悔』が終了します!
若葉と芳野が、互いに気づき始めるところを、もう少し細かく描いてほしかったですね……
ということで、次に読む作品に関しては……
また明日、近代でお会いしましょう!