夏だからビシソワーズ
スープって寒い冬、体が温まっておいしいですよね。たとえばこんなシチュエーション。
📖ショートストーリー「スープの前に」
冬の夜、明日の天気予報は雪。今夜はまだ星も見えるけど、空気はどんどん冷たくなっていく。待ち合わせのお店までは、歩いてあと5分。自然と足早になるのを自覚しながら、手袋のままコートのポケットに入れた手を出して、マフラーを巻きなおす。
びゅっと鋭い風が吹き、頬には肌も切れそうな空気が当たってくる。2、3度風を受け止めて、そうしてようやく見えてきた店の灯り。
ドアを開けると思わず涙がにじんでくるほど、瞳は冷気にさらされていたようだ。案内されるままに席につき、まだあわぬ歯の根の奥からしぼりだす。
「スープを」
ここで出てくるスープはクリーム系。今夜のお店のおすすめは、スープ・パルマンティエ。とろけるような、クリーム仕立てのじゃがいものスープだ。
冷え切ったわたしを最初に温めてくれるのは、スープなのかそれとも。そんなことを思いながら、ようやくすこし感覚の戻った指でスマホを操る。
メッセージがはいっていた。もちろん送信者は決まってる。わたしは慌てすぎないように、それを開く。そしてウェイターを呼んだ。「スープ、もうひとつお願いします」
ほどなくあの人はやってくる。そしてきっと、スープより先に、わたしの手を取って温めようとするだろう。そのとき見せるはずの、遅れてごめんねという表情はわたしの心を温める。たとえ、握られたその手が、また外の温度に戻されたとしても。
🥄スープは夏に合わないのか
突然物語がはじまってしまいましたが、こういうシチュエーションで飲むスープ、絶対おいしいと思うんですよ。恋人と待ち合わせてるかどうかはさておき、真冬の寒い夜に外を歩いてようやくついたカフェなのか、レストランなのか。
そこで最初に持つ食器がスープカップで、中には熱々のスープ。それもクリーム系。絶対あったかくておいしいやつです。
でもいまは夏。もちろん夏でもじゃがいものスープだろうが、コーンポタージュだろうが、スープ自体はおいしいんですけど、このところあまりにも暑すぎて、そもそもスープをつくる気力も失せそうです。
夏には合わないメニューなのか。スープ好きには悩ましいところです。
🥄夏のビストロ人気メニュー
だけど、スープは飲みたくなる。だって、好きなんだから。
そんなときこれでどうだ、というメニュー。それがビシソワーズ。
冒頭のストーリーに登場したじゃがいものスープ・パルマンティエ。冷やすとなぜか名前がビシソワーズになります。
もちろん日本語で呼ぶなら、冷製じゃがいもスープで通じるんですけど、それ以上にビシソワーズというこの名前が知られるようになった気がします。
今回はそんな夏のビストロの人気メニューをつくってみたお話です。
🔪スープベースをつくります
まずはじゃがいもと玉ねぎを薄切りにして、バターで炒めます。
玉ねぎが透き通って全体にバターがからんだら、水とコンソメを投入。
強火で煮詰めながら、じゃがいもをやわらかくしていきます。
水分が半分くらいまで煮詰まったら、いったん冷ましておきます。
この煮詰めたじゃがいも、いい香りがするんですよね。ついついスプーンでつまみ食いしてしまいます…あ、味見でした。ちょっと多めの味見です。
🌀ミキサー大活躍
じゃがいもがしっかり冷めたら、ミキサーを準備。
味見しすぎてなくなったりしてなくて、よかったです。お鍋の中身を煮汁ごとミキサーへ。
あとはスイッチオン。ペースト状にします。
ミキサーにかける時間はお好みで。ところどころじゃがいもの形が残るくらいにすれば、コロコロとした具のはいった仕上がりになります。
逆になめらかなスープにしたい場合は、完全に混ざってから、さらに網で濾すのがおすすめです。
🧊スープも器もしっかり冷やして
今回はちょっと粒を残すイメージ。そこに牛乳を注ぎます。
ペーストをしっかり牛乳でのばして、こしょうで香り付け。このまま冷蔵庫で2時間ほど冷やします。
そのとき、スープを盛り付ける器も冷やしておくのがおすすめ。
この冷え冷えのグラスに、ビシソワーズを注ぎます。
どうでしょう。ひんやりしたこのビジュアル。
仕上げに振った刻みパセリで、彩りもOK。
⛱️夏だからビシソワーズ
冷たく冷やしたビシソワーズは、冬のスープ・パルマンティエとおなじ中身なのに、まるで別のスープのよう。
口当たりはひんやり。でもじゃがいものまろやかな甘みとコクが、心の中が温まるような気分にしてくれます。
夏だからビシソワーズ。冷たいスープで猛暑を凌ぐのも、夏の食卓の過ごし方のひとつです。
前の夜に多めにつくっておけば、トーストやサンドイッチなど、朝ごパンのお供にも活躍してくれます。
🥄ビシソワーズの材料
🥔分量(1皿分)
・じゃがいも…1個
・玉ねぎ…1/8個
・バター…10グラム
・水…1カップ
・コンソメパウダー…小袋1/2
・牛乳…200ml
・こしょう…適量
・刻みパセリ…適量