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なぜ「いじめ」は起こるのか
学校、職場、人が集まるコミュニティで起こってしまう「いじめ」。子どもたちが、集団生活をする学校というなかで生まれやすいものだという印象を受けます。
昔から今まで、テレビなどのメディアでも問題視され続けている深刻な問題。あらゆる考え方や方法が試されているとは思うもののなくならない現状。
なぜ起きてしまうのか、なぜなくならないのか。
近年、こうした人間集団における複雑かつ不可解な行動を、科学の視点で解き明かそうとする研究が世界中で進められています。
その中でわかってきたことは、実は社会的排除は、人間という生物種が、生存率を高めるために、進化の過程で身につけた「機能」なのではないかということです。
つまり、人間社会において、どんな集団においても、排除行動や制裁行動がなくならないのは、そこに何かしらの必要性や快感があるから、ということです。
「ヒトは「いじめ」をやめられない」(中野信子 著)で書かれているように、いじめをすることで楽しい感情を味わっているからやめられないという仮説。
まだ成長段階で未熟である子どもはまだしも、成長した大人の社会でもおきてしまう「いじめ」。
今回は、「いじめ」の要因となるいじめに関わる脳内物質に注目しました。起こってしまう要因を知り、自分の状態を俯瞰し照らし合わせ、自分自身も気をつけることが大切。
〇仲間意識を高めるオキシトシン
男女問わず、見つめあったりスキンシップをとったりすることで発生する脳内物質のオキシトシン。愛情ホルモンとも呼ばれ、ペットと触れ合うことでも発生するそう。
相手への親近感や安心感が生まれ、精神的なストレスも軽減してくれるオキシトシンが、なぜいじめを助長してしまうのか。
しかし、共同社会作りに欠かせない側面がある一方で、オキシトシンが仲間意識を高めすぎてしまうと、「妬み」や「排外感情」も同時に高めてしまうという、負の側面をも持った物質であることもわかっています。
仲間を大切にしようという気持ちが生まれる一方で、良い仲間を選別しようという気持ちも発生してしまい、排除してしまおうといういじめが発生してしまいます。
”可愛さ余って憎さ百倍”。まさにですね……。
〇安心ホルモン、セロトニン
セロトニンが多く分泌されるとリラックスし、満ち足りた気分になり、少ないと不安を感じやすくなって、ひどいときにうつ病につながってしまうセロトニン。
集団の構成員として、他のメンバーを眺めながら、「この人は将来的にズルをするかもしれない」「もしかすると、この人は集団からはみ出しているのではないか」といった逸脱者を見つけ出そうとする、検知する脳の思考プロセスを「裏切り者検出モジュール」と呼んでいます。
集団社会では、集団を守るために逸脱した人を排除しようとする動きがおこりますが、まず逸脱者を特定することが必要になります。そのための検知する役割を担うのがセロトニン。
世界的に見ても日本人は不安傾向が強いそう。江戸時代の宝永大噴火、安政の大地震など災害が多く起こり、集団で協力することが生き抜くために必要だったことも関係するようです。
安心するために不安因子を取り除く。合理的ですね。
〇快楽をもたらすドーパミン
脳が快感を感じるのは快楽物質と呼ばれるドーパミンの働きによるもの。
食事をするとドーパミンが放出され快感を覚えるのもこのためらしく、快感をもっと得ようと食べ過ぎてしまうのもドーパミンの影響だそうです。
また、間違ったものに制裁を加えるという正義心にもドーパミンは発生します。
いじめの始まりは、「間違っている人を正す」という気持ちから発生します。「おまえは間違っているだろう!」という気持ちで制裁し、「自分は正しいことをしている」と感じることで得られる快感があるのです。
いじめている側の、自分は正義であるという思い込みは絶対で、自分の行動を正当化し、「正しいことをするのは楽しいことだ」という感覚で相手を攻め、批判し、追い込んでいくのです。
ネットやSNSが炎上するのもドーパミンが放出される影響があるかと思います。
正義達成欲求、所属集団からの承認欲求などが正義のために行われる制裁で満たされるため快感を感じてしまう。なかなか複雑で難しい問題ですね。
脳内で発生するホルモンはそれぞれを表面的にとらえると有益なものになります。しかし、個人でなく社会の一員としてとらえると、それが歪んだ形であらわれることがわかりました。
なぜいじめは起こるのか、要因を一つ一つ理解しておくことで、自分はそうなっていないか俯瞰することができます。この第三者目線が大切だと思います。
本書では、大人・子どもなど、さまざま場面で起こる回避なども解説されています。
多くのコミュニティが存在し、参加しないと生きていけないながらも、属することで生きづらさを感じる現代。興味あるかたはぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
おしまい。
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