
縁の下の力持ち。働くことを今一度考えさせてくれる「75歳、交通誘導員まだまだ引退できません」
道路工事、駐車場整理で見ない日はないくらい姿を目撃する交通誘導員。
道路で見かけたとき、同じ場所でずっと立ちっぱなしの仕事をするのもツラいだろうなぁと思ったり。
直接話をする機会もないので実際どうなのかわかりませんが……。
「75歳、交通誘導員まだまだ引退できません」(柏 耕一 著)では、編集プロダクションを設立し金銭面の問題から交通誘導員の仕事を始め、75歳を越えてもなお現場で働き続ける著者のエッセイです。
筆者と同じく高齢でありながらも理不尽なことに耐え、生活のために働き続ける姿に哀愁を感じる物語。
僕も仕事で交通誘導員の方にはお世話になりますが、
・初めての現場で状況を理解し対応する
・近隣の方や通行している方からの苦情にも対応
工事を円滑に進めることに加えて、まわりへの柔軟な対応も求められる、工事になくてはならない存在のように感じてます。
生涯現役のような働き方に、働くこととは何なのかを今一度考えさせてくれる作品。
〇求められるコミュニケーション能力
通航制限をする道路工事でよくあるのが、近隣の方や通行している方からのクレーム。
直接の関係はないものの、窓口として受け付けざるを得ない交通誘導員にはコミュニケーション能力が求められます。
我関せずで適当に対応してしまうと、工事関係者、自分の所属する会社にも迷惑をかけてしまいかねない、大きな影響を及ぼしてしまう可能性が。
揉め事がその場で収まればいいが、そうでなければ、相手は必ず「お前の会社の電話を教えろ」と言うか、立て看板の工事会社の親会社の電話番号を控える。
こうなると厄介である。そのため、警備員のコミュニケーション能力が試されることになる。警備員に外国人が少ないのもそこに関係がある。
交通制限をかけた仕事をしていると、近くに住んでいる方から直接声をかけられるのはよくあること。
工事の目的等以外にも、ここを通れないと困るといったクレームを受けることも少なくありません。
そんなとき、工事関係者は工事の進捗や現場作業で頭がいっぱいいっぱい。
そこで工事内容などを説明し、うまくコミュニケーションを取ることが交通誘導員には求められます。
その対応をしつつ、流れてくる車両を誘導したり、工事関係者からの指示を聞いたり、柔軟な対応が求められる中々ハードな仕事内容。
高いコミュニケーション能力を求められるのも納得です。
〇お互いを尊重し合う姿勢が求められる
これは交通誘導員の立場からではなく、一緒に仕事する人たちに求められる姿勢。
お金を払っている立場だからと、極端に上からの態度ではお互いが気持ちよく仕事することはできません。
どちらが上か下ではなく、お互いの気持ちを思いやることが大切。
自分たちはカネを出しているから、警備員などアゴで使えばいいと思うのである。しかし、お互い尊重し合わなければ、いい関係はつくれない。
本書にもあるように、高齢の方が多く、ときには慣れていないのかなぁと感じるときもあります。
しかし、朝に作業の打ち合わせを簡単に行ったあとは、的確に動いていてくれる姿はまさにプロ。
急なお願いにも即座に対応してくれ、通行している人へのコミュニケーションも絶妙にこなしてくれる。
会社やその人その人によって違うのかもしれないけど、こんな働きぶりをみせられると、缶コーヒーの1本や2本は買わせていただきますという気持ちになります……。
主従関係ではなく、対等な関係で現場をスムーズに動かすことが最優先事項。
アスファルトからの照り返しで立っているだけでもしんどい夏。
指の先の感覚がなくなるほど寒い冬でも立ち続け、車や歩行者を安全に誘導する交通誘導員という職業。
ちょっとトイレ、と言うのも許されない環境で、自分の仕事を全うする姿はまさにプロ。
工事、駐車場誘導など欠かせない仕事のひとつ。
実際に現場で働く交通誘導員としての生活を面白おかしく覗き見れる、おもしろいエッセイでした。
人にはひとりひとり、まったく違う人生が存在する。
エッセイで追体験でき、自分の知らない世界を知れる良い機会。
気になった方は是非どうぞ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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