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難病営業マンの温泉治療㊱【横向温泉 中の湯旅館】
<前回はこちら>
何度か宿に電話を架けたが誰も出ない。
忙しいのか、今日は休みなのか。。とりあえず宿泊は諦めて、下見に日帰りで寄ってみよう。
秘湯ファン垂涎もののボロ宿があることは知っていた。一泊素泊まり3,860円、これでも値上げをしたという。自炊専用の湯治場、建物が傾いているとかいないとか。
検索するとあるブログがヒット。
予約しようと電話をした折、「隣(マウント磐梯という大型施設)に泊まって、一度日帰りで来た方がいいよ」という女将さん。
湯治場を予約すると女将さんと時折こんなやり取りが発生する。サービスを期待した旅行客とのギャップがあり、当日になって旅館を変更する客もいるという。
温泉は安いほど良い、小さいほど良い、そして、ボロイほど良いとも。
今回の湯治旅を通じても、その原則は寸分の狂いもなかった。米沢を出て旅も終節へ、いよいよ東北の玄関口福島へと戻って行く。
日本百名山にも選ばれる安達太良山を囲うように点在する名湯群。
「野地温泉」「岳温泉」「土湯温泉」「鷲倉温泉」・・・会津東山にて宿を取り、私が立ち寄りで選んだのは宿。
「横向温泉 中の湯旅館」
横向温泉には3件の施設がある。「上の湯(マウント磐梯)」「中の湯」「下の湯(滝川屋旅館)」。上と下は既に日帰りで入湯済み。鉄臭のする素晴らしい源泉だったことはハッキリと記憶している。未湯の「中の湯」、何でもこちらが本家だそうだ。湯族の血が騒ぐ。
相馬市から猪苗代へと繋がる国道115号線。西へ西へと向かう、土湯トンネルを抜けると福島市から猪苗代町に入っていた。
通り沿いから一本脇道へ。割とすぐ看板が見えた。だが旅館はまだ先、ダート道を数百メートル走ると「純自炊湯治療養の宿」の案内が。その奥に母屋を発見。
確かにボロい、そして、傾いていると言えば傾いているような・・・
これまで巡ってきた宿の中でも外観のビジュアルは最襤褸クラスだ。良泉の予感がプンプン漂う。この手の旅館で地雷を踏んだことはない。
重厚な横引きドアを開け館内へ。誰もいない。だがよく見ると女将さんらしき人が奥の畳部屋にいる。横になりながらテレビを見て、しかもタバコを吸っている。素晴らしき生活感だ。
何度か合図を送ったり、「すいません」と声をかけるも一向に反応する気配がない。玄関を上がり框に箱が置いてある。
「外の仕事に出ています 入浴の方は300円を」と張り出しが・・・
どうやらこちらも常にセルフスタイルで入湯するそうだ。その上にも張り紙、6月10日まで宿泊業は休業中とのことだ。
ここでは当然wi-fiはなく、電波も繋がらなかった(時々1本~2本立つ)。結果論だがテレワークはここでは無理だった。まず下見に来て正解。
早速地下の浴場へと向かう。ギシギシと軋む廊下に鉄錆の目立つ炊事場。何とこの宿築95年になるという。凍結防止のため蛇口は常に開放されている。宿泊休業中とのことなので部屋までは確認出来なかったが、館内は外観ほどヘビーではない。この程度であれば宿泊は問題なさそうだ。
脱衣所に着くと先客が一人、こんなところに来るとは恐らく同類の好事家なのだろう。ちょうど入れ違いですぐに出て行き、独泉となった。
こちらの浴槽は、混浴内湯、女性内湯、混浴露天がひとつずつ。先ずは内湯にダイブ。浴槽は熱湯と温湯の二つに区切られているが、どちらもなかなかの熱さ。温湯と聞いていたので少々面食らった。
かつては鉱泉の様に冷たい湯だったようだが、度重なる震災の度に高温になっているのだという。今年2月の地震では湯が1週間全く出なくなってしまったらしい。地震により泉質や湯量、色までも変貌するのはよくあることだ。その尊さに魅せられた温泉ファン達は、全国を巡り一湯一会に陶酔するのだ。
無色透明の湯に鉄錆の様な浮遊物が大量に舞う。鉄分を含む源泉に見られる独特の茶色の湯の花だ。内側からじわじわと効き始めた。予想に違わぬ素晴らしき源泉。
5分程浸かった頃だった。脱衣所が少し騒がしい。何やら女性2人組が話をしているようだ。暫くするとドアを開けこちらに入ってきた。
「お邪魔するわね」と仰る。母よりも明らかに年上の世代のようだ。
「どうぞ」と答え、気まずいので外の露天に出た。
渓流に手が届くほどのロケーション、こちらは加水のため37度ほどの不感温度だ。かなりの気持ち良さ、ついウトウト眠ってしまいそうだ。10分ほど恍惚に浸っているとこちらにも先ほどの女性2人がやってきた。
他のブロガーさんの記事でも確認できるが、ここの湯は地元のお婆さんがよく入りにくるそうだ。混浴なので変に気遣うのもお門違いか、、入れ違いで退湯するのも失礼かと背を向ける格好に身体を入れ替えた。
やがて10分20分と経過。「あなたはどこか悪いの?」から始まり、3人和気藹々とし始め、時間は着々と経過。
ワイルド系露天でお婆さんに混じり3人での同浴。何ともエキセントリックな光景は、1時間続いたとさ。
令和3年6月4日
<次回はこちら>
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