八月の湯治⑥【続・増富温泉グルメ】
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滞在中はリハビリのため毎日3回散歩に出た。こちらに来てからは脚の状態が良く、長いときは休憩を入れながら1時間程度。数か月前は10分と立っていられなかった、かなりの回復だ。
宿を出て右に行くと温泉街(と言っても商店と民宿が2件ずつ)。左に行くと緩やかな坂路が続き渓流へと繋る。
何度も来たことのある増富温泉。失礼だが温泉街の中心を流れる本谷川は汚いイメージがあった。各旅館から川へと流れだす茶褐色の源泉、河原が腐鉄色に変色してしまっている。水も濁っていて、魚が住める環境ではなさそうだ。
到着から4日目の朝。この日は絶好調で瑞牆山方面への坂路をどんどん登って行った。
街中を通る川と同じ水脈とは思えぬほど透明度は増していく。緑が次第に深くなり美しい渓流を望む。
早朝5時台、もう渓流釣りをしている女性がいた。朝の方が魚は活発で、爆釣を狙うのにはこの時間がベストだという。車中泊かキャンプをしたのだろう。
数々の渓流を見てきたが、このクリスタルライン沿いの渓流は指折りの美しさだった。
こんな大自然の中での食事は、さぞ美味しいだろうな・・・
翌日10時、毎日通っていた村松物産店へ。
昼か夜、必ずここでテイクアウトか食事をしていた。おしゃべりが趣味だと言う大女将(パンフレットより)に頼み、12時前に名物だという天むすを作ってもらうことに。渓流を眺めながらの昼食を画策したのだ。
だが、昼が近づくに連れ雨雲が立ち込める。
八王子市で39度を記録した日を境に、ここ北杜市も一気に天候が崩れ始めていた。前日は熱帯夜で部屋に羽アリが大量発生する事態となったが、翌日には全て消えた。
一気に秋の気候へ、昼間もTシャツでは肌寒いほど。
結果的にそれ以降晴れ間は出ず、降り続ける雨。渓流沿いでの食事は未遂に終わった。
と、いうことで部屋で天むすをいただく。
「中村農場」という地元の有名な養鶏場とタッグを組み、名水仕込みの鶏肉を使用したというもの。
かしわ天の様にパサついた肉ものを想像していたが、これは多水でジューシー感がある、作り立てのためまだ衣もサクサク。予想していた以上に美味しかった。
小ぶりなので足りないかもと大女将、梅おにぎりも。1週間薬漬けになり絶食したのは半年前。完全にリバウンドした。
17時を過ぎる頃、増富温泉街には人影はなくなる。
宿泊している三英荘向かいの「金泉閣」、並びの「不老閣」は、この時期満室近い稼働していた模様。玄関の「○○様御一行」の黒板、空きスペースがなかった。
皆2食付で、夕食前になると館内に巣籠になるようだ。増富には遊技場や観光案内所すらない、療養に徹するのだろう。
そんな街なので、村松物産店は本来15時に閉店する。だが昼のうちに予約をしておけば夜も開けてくれた。いつも客は私一人だった。
時折大女将は生後8か月のお孫さんを抱いて登場。大変気さくな方で、すぐに懇意にさせていただいた。
店の前にはいつもネコが2匹いる。
私 「飼っているのですか?」
女将 「実は野良ちゃん。餌をあげてたら住み着いちゃったの」
私 「黒猫、足引きずってますね」
女将 「狐か狸に噛まれたみたい、この辺しょっちゅう出るのよ」
話している間に注文のカレーうどんが着丼。芳醇な香りが漂う。
「ズルズルッ」
「おおっ、これも美味い」
出汁の効いたちょっと和風のカレー。麺は北海道産の小麦粉を使用、3代目主人の手打ちだ。ツルツル系細麺がスープに良く合う。
「米があれば、」と、心の中で。
「ご飯食べる??」と、大女将。
これも毎日通ったのでご厚意。
お里が知れるかもしれないが、やはりやってしまう。白米を残りスープにダイブ!
「う、美味すぎる」
残りスープを全て白米に吸わせ、一滴残らずねぶり取る。
「ヤバい、カロリー取り過ぎだ、」
そんな時でもダイジョーブ。
いつもより長めに上がり湯に浸かり、汗を流せば罪悪感も全て相殺!
流石に、ちょっと太ってきた気がする・・・
令和3年8月12日
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