八月の湯治⑤【増富温泉グルメ】
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連泊中の三英荘。女将さんはいつも果物や野菜をどこからかもらって来る。近所の商店や旅館からだろうか。
私は散歩や食事の買い出しで1日に何度も外出する。大体昼過ぎの散歩から戻ると、「もらって来たよー」、と様々な青果物をフロントでくれる。
トマトや桃、巨峰、梨、トウモロコシまで。部屋に戻り果物ナイフでカットしたり、フロントの椅子に座りそのまま丸かぶりするものも。勿論ご厚意で(※だぶん長期滞在なので)。
宿のすぐ横には家庭菜園があり、女将さんが野菜や花を育てている。三階の私の部屋からは時々撒水している姿が見えた。
ある日、私がフロントでモモ(シーズー、2歳)と遊んでいると、女将さんがキュウリを持って上がって来た。
女将 「これ美味いんだよ。食べなよ」
私 「ありがとうございます。綺麗な色ですね」
定規を当てたように真っすぐに伸びた一本物。女将さんが中央でポキンと折る。冷蔵庫から持ってきたのはししとう味噌。これを付けてガブリ。
私 「凄い、美味しいですね。瑞々しい。」
女将 「そりゃそうさ、さっきまでそこで生えてたんだから。」
「農薬は使わないよ。虫は指で取るんだから大変」
こちら山梨県は北杜市、日本で一番日照時間が長いことで知られている。
寒暖差も激しく、八ヶ岳に茅ヶ岳、金峰山に甲斐駒ヶ岳。多数の名山に囲まれた自然豊かなこの地。夏野菜やレタスなどの高原野菜は生育に特に適しているそうだ。
また山梨県はミネラルウォーターの生産量が全国の4割を占める。水源も豊かなこの環境で育った成果物、うまいのも納得。
元々三栄荘では素泊まりと想定しており、近くの「村松物産店」でおにぎりやうどん等の軽食で済ませるつもりだった。だが、こちらに来て朝食付きに切り替えることに。とにかく、お腹が空いて仕方がないのだ。
それもそのはず、温泉は思っている以上に体力を消耗する。
あくまで目安だが、10分間の入浴は同時間のジョギングの消費カロリーにも匹敵するほど。私は交互浴とは言え、一日3時間近くここの風呂に浸かっている。腹が減らない方がおかしい。
女将さんの手作りの朝食。一般的な旅館だと連泊用に数パターン用意しているケースがあるが、大体決まりきったもの。
ここでは毎日違うメニューが出る。地元野菜を使ったバランスの良い朝食。
米は地元白州町産、艶があって美味しい。発汗で失われるミネラル(食塩)は味噌汁でチャージできる。
毎日仕事に追われていた頃は朝食を抜くことも多かった。ここではおひつ満タンの米を完食する、健康な証拠だ。
病で倒れていた時は頑なに食事が摂れなかった。今度発作が起きた時は、薬漬けになる前にここに来た方がよさそうだ。
こちらに来て2日目のこと。
女将 「昼と夜はどうするの?」
私 「今日も村松さん(村松物産店)で買ってこようかな」
女将 「渓月でも食べられるよ。事前に言っておけばね」
私 「そうですか。じゃ、行ってみます」
何度か通った温泉街の中ほど。いつも誰もおらず、営業している形跡がなかったこの民宿。店のガラス戸を見ると確かに予約制で営業しているようだ。
中に入り、「ごめん下さい」と発声。
暫くすると女将さんが出てきた。こちら渓月も地元産の小麦粉を使ったうどんがお勧めだという。オーダーメイドで、取りに来る時間に合わせて女将さん自ら手打ちするそうだ。客数が読めず、廃棄が出ない様にこのスタイルなのだろう。
かけうどん(冷)、一玉400円。テイクアウトが可能とのこと。17時半に予約し取りに行く。見た目は普通、具はなく大葉とネギの薬味をかけズルズルと。
「おっ、これも旨い」
平打ちでちょっとゴワゴワ系の麺、のど越しよりも噛んで楽しむヤツだ。
5分足らずで完食。ん、、ヤバい、全然足りない。。。
3玉は食えたかも。でも後悔してももう遅い。この時間、増富温泉街全ての店が閉店している。
19時。もう腹が減ってきた。
令和3年8月10日
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