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難病営業マンの温泉治療㉓【鳴子湯治回想 旅館すがわら~姥の湯】

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 ※この日記は数年前、宮城県鳴子温泉郷にて1週間の湯治を行った際に記したものです。

 残り日数も少なくなる中、印象深かった湯の再訪で行程を組む。

まずは2日目に訪湯した「高友旅館」。前回は連休中、混雑のためゆっくり浸かことができなかった旅館だ。日帰りの受付は16時まで、15時過ぎにアタックすると見事に客は誰もいなかった。

 黒湯名湯の独泉に成功。入った源泉自体は全く同じだが、やはり独泉は格別。閉眼し神経を研ぎ澄ませ、その油臭をキッチリと効かせた。流石は鳴子の至宝、納得の一湯だ。
 

 家族経営の湯治宿が多い鳴子温泉郷にもおいても、客室の多い大型ホテルはいくつか存在する。オリンピックを見据えてか老舗旅館をリノベーションしたであろうホテルチェーンも数件。鳴子温泉駅前にも4件ほど巨大旅館が並んでいる。
 
 一概に優劣はつけられるものではないが、収容人数が多くなるほど浴槽は大きくせざるを得ないのは必然。そうなると循環・消毒液を投入する確率は上がっても不思議ではない。
 観光とは一線を画す湯治旅、自分にとっては無縁の存在、、のはずか、この日の晩思わぬ形でお世話になることに。

 夕食後、コンタクトレンズを外そうとすると洗浄液がなくなっていることに気が付く。ファミリーマートか薬王堂に行かなければならない。
 車で数分の移動。どうせなら、まだ入り切れていない東鳴子エリアの湯治場に寄ることにした。「勘七湯」であれば、最終受付が20時まで可能だ。


 車で向かう途中、洗浄料(髪・顔・体を全て洗えるメンズビオレ。湯巡りの必需品)を部屋に置いてきてしまったことに気づく。湯治場には基本的に石鹸もシャンプーもない。宿に戻るのは少々面倒だ、かと言ってこの一回のためにそれを買うのももったいない。
 と、思った瞬間だった。東鳴子の外れに「ホテルニューあらお」という看板が見えた。
 
 いかにもと言うネーミング。この手の名前は経験上循環湯の可能性が高い、だが洗い具は絶対に揃っているはずだ。湯巡りチケットが使えるのでここで晩湯することに。
 たいした期待もせず入口を潜ると大型ホテルそのものの造り、ロビーには有名人(と言っても誰だか分からない)のサインがびっしり。

 受付でチケットを渡しエレベーターで2階へ。大浴場の脱衣場に入り分析表を確認。すると何とこちらのホテルも加温・加水、濾過循環・消毒液使用なし、モール泉100%かけ流しだ。
 ジャグジー付きの内湯と小さな露天、入浴感からも湯のフレッシュさを確かに感じられる。
 
 ”いったいどこまで凄いのだ鳴子温泉”

 ここまでダイブした全ての湯がかけ流し、まさに源泉のデパート。
温泉業界には温泉Gメンの如く、湯元のチェックや源泉の湯遣いをパトロールする方々がいる。諸説あるが、かけ流しの源泉に入れる確率は10%以下とされる(定義に幅があるが、1%以下とする専門家も存在する)。
 
 ここに来てもうすぐ1週間、鳴子の底力見た。

 

 天候に恵まれた今回の湯治。途中好転反応から多少崩れはしたものの、出発前よりはかなり体調も回復した。連日、気温は15度~30度程度。昼は少々熱さを感じたが、夜は窓を開ければ涼しい風が入り、過ごしやすい陽気だった。
 一方で、体質改善や長年の痼疾の治療には、ある程度の期間の滞在が必要と実感。「湯治 七日一回り」とはよく言ったものだ。初の長期滞在、先人達の知恵、故きを温ねた。


 近年、2泊3日のプチ湯治プランを打ち出す旅館も散見されるようになった。一次産業では生計が立たない現代。会社勤めをする以上、易々と1週間もの休みは取りにくいだろう。
 連休や休暇制度を利用して、まずはここからチャレンジしてみると新たな気付きがあるはずだ。2泊であっても、疲労回復や自律神経を整えることが分かっている。

 
 幸か不幸か、海外から後れを取る日本の働き方は、疫病萬栄によって荒療治的に推進されることとなった。それは私の勤務先、創業50年となる不動産会社も例外ではない。
 
 誘惑の多い観光地やリゾート地での推奨は考え物だが、通信環境が整っていることを条件とし、保養や療養に適した地でのテレワーク・ワーケーションは、どうもマイナス要因が見当たらなかった(職種や適性の見極めは必要だが)。働き方の多様化が加速すれば、無駄なタスクの廃止なども同時に進むことだろう。


 旅も大詰め。初湯は2日目に訪れた鳴子エリア「旅館すがわら」。
東鳴子と鳴子の中ほどに位置する老舗の旅館。一見こじんまりとした外観だが、奥へ奥へと続く館内は迷路のよう。最奥にあった男性湯(時間制で男女交代)は、脱衣所を挟み内湯と露天が。2種の別源泉は青みを帯びた乳白色と、東鳴子に見られる黒湯。

 たかが数メートルの距離に、これほど異趣の源泉が配湯されていることに感動すら覚える。

 次浴は108号線沿いの「姥乃湯」。こちらはその上を行く4種の源泉がいただける。建物自体はなかな年季が入っているが、1つの宿で湯巡りが完結できてしまう。清掃の関係で3ヵ所しか入ることができなかったが、色や香り、肌触りまで異なる源泉。鳴子の真骨頂がこの宿に集約されているようだ。
 
 普通の温泉街であればそうはいかない。豊富な湯量・源泉数を誇っていても、同エリアから湧出する源泉の種類は大体似通ったものが多い。それは白濁酸性硫黄泉の代表格、東の横綱と称される「草津温泉」も例外ではない。
 
 鳴子温泉郷のその種類の多さから、専門家に「東の横綱は鳴子」と呼称されるのも納得。いよいよ明日が最終日だ。


                           令和2年9月24日

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