生涯かけて繰り返し読みたい3冊
たった一度の読了で、書かれた内容のすべてを理解できる。
そんな人間になれたら話が早いのかもしれません。
しかし、好奇心のままに乱読を重ねていると「これは絶対に今後も繰り返し読むべきだ」と思える一冊に巡り会う、ギフトみたいな瞬間が訪れることがあります。
今回は、2024年3月時点の私が考える、これからも何度も読み返したい本の話です。
1.『喜嶋先生の静かな世界』森博嗣
大学四年生で論文を書くために配属された講座で出会った「先生」との出来事を中心に描かれる、森さんの自伝的小説とも言われている作品です。
と同時に、歳を重ねることに伴う、喜びと喪失を描いた内容でもある。だからこそ読み返す度に胸を打つ場面が変わります。
価値観からその後の人生まで、決定的に変えてしまう。
そこまで影響を受けるほどの大きな出会いって、生涯を通しても決して多くはないものです。しかしそれほど強烈に憧れを抱いた人がいる(いた)なら、理系とか文系とか関係なく刺さるものがあるんじゃないかな。
2.『禅と日本文化』鈴木大拙
世界的な仏教哲学者の鈴木大拙さんが、外国人向けに英語で書いたものを邦訳した一冊なので、本当は原著で読むほうが理解しやすいそう。
私は英語力が壊滅的なので日本語で読むしかないんですが、初めて読んだ時の「分かるけど理由を説明できない」の感覚が忘れがたくて、少しでも近づきたいがために再読を重ねたい一冊です。
上記引用に顕著ですが、そもそも言葉で理解する次元のものではない「禅」を知るために、言葉の連なりで出来た本で読むのも根本的に矛盾してますよね。
(それが言葉の限界でもあるんですが)
でもその「矛盾」を踏まえてもなお、確かに心の琴線に触れるものが幾つもある。言葉を超えた会得のために、これからも繰り返し読みたい一冊です。
3.『八本脚の蝶』二階堂奥歯
この世に真に「博覧強記」と称するに相応しい人がいるとしたら、私にとってのそれはアルベルト・マングェル氏と二階堂奥歯さんの二人を指します。
本書は、生きた日数よりも多くの本を読み、思惟と発信の糧にした、二階堂奥歯さんの二年間の日記です。
自ら人生を終える直前の言葉まで遺されているので、誰にでも勧められる一冊ではないのも確かです。
でも「読む」ことは「言葉の姿をした書き手」と場所も時代も超えて出会うことでもあるから、私は何度でも読み返したい。その知性に打ちのめされる痛みごと引き受ける気持ちで。
おわりに
今回のタイトルには「生涯」という強い表現を使いましたが、一方で「繰り返し読み返したい」とまで感じられる思い入れの強さを抱く対象は、時の経過によって入れ替わるのが自然なことだとも思っています。
人間が生き続けるのはそういうことだ、とも。
だから「今」を記録するつもりで書いてみました。
いつかラインナップに変化が起きたら、今とは違う自分になっていることの証左でもあるので、それもまた楽しみです。
お読みいただき、ありがとうございました。
今日も良い日になりますように◎