殺されるのではないかという恐怖
この猟奇的な件は何事もなかったかのように
学校は日常に戻った。
しかし私の心は違った。
毎日学校へ行くことが怖かった。
教室のドアを開けたら皆が無言になったらどうしよう。
廊下に出たら誰かに刺されたらどうしよう。
なので、廊下には極力出ないようにした。
怖かった。
怖かった。
とても怖い。
だけど、犯人はいつまで経っても噂にならなかった。
私がスカート丈を怒られた翌日に
「川辺さん学校辞めるらしいよ」と毎日言われるのに
誰かの財布が盗難にあったら
「あの子が犯人らしいよ」と噂になるのに
噂が大好きな女子校なのに
何で、この犯人だけは噂にならないのだろうか。
当時、不登校というのは私の周りではなかった。
ましてや中学受験で入った私立の学校を辞めるなんて選択もなかった。
だから学校に行くしかなかった。
殺されるのだろうか
刺されたらどうしようという恐怖を抱えながら
なるべく普通に、
いつも通りバカなふりをして。
だけど、犯人が分からない限り
私以外の人間は容疑者である。
自分以外の誰かが
中高合わせて2700人、先生を含めたら2800人、
誰かがやったことは間違いない。だが、
クラスメイトだけは疑いたくないから知りたかった。
怒らないから、
むしろここまでするくらい私を憎んでいたのなら
私が何かをしたのだろう
話を聞く、場合によっては謝る。
ただ、ただ犯人が知りたかった。
でも、いつまで経っても噂にはならなかった。
おかしい。
何でも噂する学校が
これだけは何も誰も知らないということが。
勘の良いひとは、何となくピンとくるかもしれないが
私は14年後くらいに、やっと気が付いた。
前回から時間が経過したが
母校からは「何も答えない」の一点張りで
卒業生であるのに話をする機会も設けてもらえずにいる。
もちろん、この件だけではないので様々なことを
今だったらどう対応するのか‥等。
分かってはいたが
ここまで頑なな対応、組織としては大丈夫なのだろうかと懸念しながら
仕方ないので
結局はここから先は顧問弁護士の先生にお願いすることとなる。
が、私は当人なので
まだまだやることはある。
心は擦り切れるが、今やらないといけない。
今年38歳になる私には時間がないのである。
※この話はフィクションかもしれません。