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100キロぶっ通しで歩いた

終わったら色々忘れてしまった。足腰が痛くて一歩一歩を前に出すのが如何に辛かったか、どこまで行っても何十キロも残っていたこととか、大して進んでいない気がずっとしていたこととか、眠気がとんでもなくて意識を飛ばしたままふわふわ歩いていたこととか、そのこと自体は覚えているのに、実感としてそれがどれ程のことだったか残っていない。

正直、舐めていた。私は何度かフルマラソンの経験があり、歩くなんて幾らでもできるだろうぐらいに思っていた。毎日のようにランニングしているし、体力には自信がある。

実家の母から、京都で100キロウォークというものがあり一緒に歩かないかと誘われたのは数ヶ月前。え、楽しそうじゃん、夜のピクニックじゃん、紅葉とか綺麗な季節だよね、などと言いエントリーした。そこに妹たち2人も加わり4人での挑戦となった。速さを競う大会ではなく、兎に角歩き続けて、制限時間(28時間)以内にゴールすることを目的とするイベント。スタート時には主催者から「走らないように」との注意があった。

京都市内をぐるっと一周して、琵琶湖ゴール

スタート時間は午前10時。参加者は多分300人ぐらい。何となく40代50代ぐらいの人が多そう。もう何十回と100キロウォークに参加されている方が何人かいらっしゃって、開会式で表彰されていた。すげぇおじさんおばさんが、この世には沢山いるもんだ。ワクワクして、ふざけまくった写真がスマホにいっぱい残っている。この時は、これから地獄が始まるなんて思ってもなかったな。

川辺をとことこ
京都、嵐山
最初は景色を楽しむ余裕があった

スタートから25キロ地点ぐらいまではかなり余裕があった。早歩きぐらいのスピード感でどんどん進んでいった。京都嵐山は観光客でいっぱい。歩くのに不便で、せっかちな私はいらいらするほどだった。この辺まではかなり元気だったよなあ。

ここから山の中にある貴船神社へと向かう。雨が降ってきて、体力は言わずもがな、気力までもが奪われていく。太陽は落ちて、ヘッドライトと前を歩く人のバックライトを頼りに黙々と進む。ちょっとずつ足が重くなっていく。

途中のエイドステーション
(主催者によって準備された休憩所)
でカップラーメンをゲット
染みる〜

普段はカップラーメンなんか食べないのに、もう雨を避けて座って温かいものを食べられるだけでかなり復活する。これまでの人生で食べたカップラーメンの中で一番美味しかった。

正直なところ、もっとエイドに期待していた。色んなものが食べ放題で食べられるかと思っていた。エイドだけを楽しみに何とか歩いているので期待外れだった。あと、エイドを頼りにしていたのでもっと食料を持ってこればよかったと後悔した。

京都の街中へ。深夜になる。

足全体が痛い

半分(50キロ)を超えて次のエイドまでが長い。睡魔がちょいちょい現れ始める。

八坂神社

酔っ払い集団とすれ違う。呑んだ後であろう、コンビニ前でしじみの味噌汁を啜る人がいる。そうだよね、土曜日だもんね。あなた方は呑んでいたかもしれないけれど、こちとら10時から歩いとんねん。明るくなってもあと10時間以上、歩き続けとんねん。

この辺で、ガチで気持ち悪くなった。それまでは、友達に暇電したり、一緒に歩く家族とふざけたりおしゃべりしたり、疲れた中でもその時間を楽しんでいた。けれど、眠気と脱水と疲労のトリプルパンチで嘔気を催す。吐ければ楽になるかなと思いつつ、母の腕に引っ張ってもらいながら真夜中の御所の砂利道を歩いた。歩いたというか、最早引っ張られていた。ひとりだったら、ここでリタイアしていたかもしれない。

自動販売機で、あったかい綾鷹を買い一気に一本飲み干したら、ちょっとずつ回復していった。良かった。もう無理かと思った。

身体中が痛い。肩凝りしているし、側腹部も痛いし、腰も痛いし、股関節も痛いし、足が上がらない。あと、とにかく眠い。眠い眠い眠い。眠いしか考えられない。寝ながらふらふら歩いて、どうしても我慢できなくなったら路肩で蹲って少しだけ寝る。睡魔がどこかにいく場面もあって、その時は良いのだがまたそのうち眠くなる。途中のコンビニで買ったものを時間をかけて食べながら、食で睡魔を誤魔化してもすぐまた眠くなる。

すぐ下の妹は、足が痛すぎて途中から自分で自分の足を引っ張りながら歩き、上り下りのある道に対してひとりで怒っていた。一番下の妹は、足の元々疲労骨折の既往のある箇所を痛めて、足を引きずりながら何とか進みながら時々不機嫌だった。母はエイドでゲットしたお菓子をぼりぼり食べて、一番元気だった。

明け方、全員痛み止めを服用する。神様仏様ロキソニン様。プラセボ効果もあるのかもしれないが、薬を飲んで数十分で効き始めてまた歩けるようになった。ずりずりとすり足で、止まっているのか歩けているのかよくわからない状態だったのに、回復した。Google mapで何度現在地を確認しても、ほとんど場所が変化せず、ここからゴールまでまだ数十キロあることに絶望していたのに、ロキソニンってこんなに効くんだ、とびっくりした。

最後のエイドを超えて、あとちょっと

ここから、家族によると京都から滋賀までちょっとした山を最後に越えたらしいのだが、私は眠すぎて寝ながら歩いていたら頂上に着いていた。記憶がない。苦しさを知らずに坂を登れて、ラッキーだった。一番下の妹ともうだらだら散歩のようなペースで歩いた。ロキソニンが効いたのと、終わりが見えてきて楽しく歩みを進められた。最後は琵琶湖のほとりに辿り着き、そこは開放感があってゴールに相応しかった。

完歩賞

お昼の11時半ごろ約25時間半で完歩。ゴールには、京都に住むおじいちゃんおばあちゃんが来てくれて、小雨の中待っていてくれた。その後迎えてきてくれた父が運転する車の中で既にうつらうつらし、そんな状態で銭湯に行き、2日分の汗と砂埃を落として、家ですぐ爆睡した。夜ご飯は、鰻とお刺身だった。最高!

深夜気持ち悪くなった時が個人的に一番辛くて、もう絶対100キロウォークなど参加したくないと思ったのだけれど、何と今回の京都大会の前々から既に屋久島100キロウォークに申し込んでしまっている。今度は、いつも一緒に大学で勉強している友達と歩く予定。今回は、一緒にいたのが母と妹だったから、疲れすぎてちょっとしたことにいらいらしたり、嫌な性格になったりする自分がいても許されたからまだ大丈夫だったけれど、友達と歩いて嫌われたりしないだろうか。

申し込んでしまったものはしょうがないから、もう一回チャレンジしたいと思い込むしかない。なんだかんだ楽しかった、はず。しゃあない。屋久島か。京都よりきつそうだぞ。

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おなかすいた
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