TJMods / Thermal Jungle

楽器エフェクターの制作・モディファイ・修理をしています

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最近の記事

Sam Gendelの使用機材などについて (Nov. 2024)

2024年11月のSam Gendel & Sam Wilkesデュオでのジャパンツアーを観てきました。毎回、少人数編成での演奏ではメンバーや曲目に合わせて楽器のセットを変えていますが、今回は小さい会場が多くかつ直近でリリースしたアルバムからの曲が多めだったことが強く反映されている気がしました。 Sam Wilkesの機材は以前の来日時と特に変更点はなく、Pitch ForkとOC-2によるピッチシフトを軸にした音作りとRC-30によるループ演奏を聴くことができました。京都

    • BOSS RV-3 Warp Switch モディファイ

      BOSSの2番目に古いコンパクトタイプのリバーブRV-3 Digital Reverb / Delayに、モーメンタリー式の外部スイッチを押している間だけフィードバックを最大にする、DD-6のwarpモードのような効果を狙ったモディファイをしました。 RV-3は1994年から2002年まで生産されたモデルで全11モード中3モードでディレイのみ、4モードでリバーブのみがかかり、残り4モードでディレイとリバーブを同時にかけることができます。ディレイとリバーブを両方かけるとスプリ

      • ブースター/プリアンプ "Hyperbolic Pump"の製作

        ギターに限らずベース、シンセ、ドラムマシン等に幅広く使えるバッファ、ブースター、プリアンプの役目をするペダルを作りました。 きっかけは「バイパス音が気に入っている」とmoogのエフェクターmoogerfoogerを使っているベーシストの演奏を聴いたことでした。このシリーズはエフェクトのオン・オフにかかわらず入力段のプリアンプを経由しています。DRIVEノブで様々な信号入力ゲインの楽器に対して音量を調整して使用できるとともに、このプリアンプ部を通した音質が人気です。ギタリスト

        • JHS PedalsによるBOSS TR-2のモディファイ

          DS-1に続いて、TR-2 TremoloのJHS modについても具体的にどんな改造がされているか紹介します。 もともとギターアンプについたトレモロを意識して作られたTR-2ですが、JHSの"Versa Trem Mod"は「Fenderの'65 Deluxe Reverbのようなトレモロを目指して改造した」とのことです。一つ注意点として、TR-2は他のBOSSの定番製品と同じく、長い歴史の中で何度も回路のアップデートがされています。そのためブティックメーカーが古いバージ

          The Depths (Earthquaker Devices)のモディファイ

          EQDのユニヴァイブタイプのモジュレーション、The Depthsを入手しました。回路はMXRのPhase 90に似た4段フェイズシフトをベースにしており、ケース内部に設置されたLEDが点滅するのをLDRで検出して位相の揺れを作り出しているエフェクターです。 The DepthsはRate、Intensity、Voice、Throbのコントロールでエフェクトをかなり幅広く変化させることができるのですが、他のモジュレーション系ペダルによく見られる、原音とエフェクト音の音量バラ

          The Depths (Earthquaker Devices)のモディファイ

          JHSによるBOSS DS-1のモディファイ

          いまや人気ブランドとなったJHS Pedalsですが、最初はBOSSのエフェクターの修理とモディファイから始まっています。ブランド開始初期にはカスタムメイドの改造を受け付けており、ハンドペイントの筐体にリケースするなどもしていたようです。その後定番のモディファイを代理店を通して販売していました。現在ではモディファイ品の取り扱いは全体的に終了していますが、代表的な過去のラインナップはメーカーサイトから閲覧できます。 BOSS、electro-harmonixなどが多いですが、

          JHSによるBOSS DS-1のモディファイ

          なんでみんなレコードの音が好きなのか?

          ずっと前からぼんやり考えているのだけれど、レコードほかアナログ媒体の音質が好まれる要因には、周波数空間で見えるスペクトル特性とは別に、「リスニング体験の複製不可能性」とでも言える性質がデジタル媒体よりも強いということがあるのではないか。 アナログ媒体の音質はよく「温かみのある音」と言われるのだけど個人的にはその表現は思考停止ワードだと感じてあまり好きではない。もっと根本的な、音質という枠の外の要素が異なっているのではないかと考えたくなる。 音声を記録していくらでも複製でき

          なんでみんなレコードの音が好きなのか?

          Earth Quaker Devices Tentacleのモディファイ

          Earth Quaker Devicesから出ているアッパーオクターブのペダルTentacleです。ジミ・ヘンドリックスの使用で知られるオクターブファズのオクターバー部分を抜き出したものの代表格、Dan ArmstrongのGreen Ringerをもとにした回路になっているそうです。tentacle(触手)という名前はOctaviaからもじったものでしょう。 コントロールノブなし、on/offスイッチのみの構成ですが、持ち主いわく「音量を調節できるようにしたい」とのことで

          Earth Quaker Devices Tentacleのモディファイ

          ベースのコード弾きでピッチシフター4機種を比較

          ThundercatやSam Wilkesなど、ベースでリードパートやコードを演奏するプレイヤーの多くが1オクターブ上の音を加えるエフェクトを使用しています。それに影響されてこちらのツイートの動画ではデジタル四機種を比較しました。 いずれもボリフォニックモード、原音なしのエフェクト音100%で統一し、後段にStrymon blueSkyのリバーブをかけています。以下各機種の印象です。 Electro-harmonix Pitch Fork Sam WilkesやSam G

          ベースのコード弾きでピッチシフター4機種を比較

          MXR M80 bass d.i.+の修理

          プリアンプ、DI、ディストーションと多機能の定番ですね。雑誌やSNSの写真でも結構な割合で使用されているのを見かけます。こちらのペダルは「スイッチの切り替えができず音が出なくなった」とのことで修理を頼まれたものです。 症状を確認すると、distortionのランプはつきますがeffectのランプが点灯しません。そしてスイッチの設定によらず楽器の信号は一切出力されていません。XLR出力も同様に機能していないですね。 effectのon/offによらず音が出ない onにして

          MXR M80 bass d.i.+の修理

          Pino Palladinoの使用機材などについて

          2022年11月のPino Palladino and Blake Mills feat. Sam Gendel & Abe Roundsとしての来日のうち、11/8東京ビルボードでの公演を観てきました。4人とも楽器の持ち替えや多彩なエフェクトを多く使うので、明確な中心を持たず刻々と変形し続けるアンサンブルをものすごい演奏技術で目の前に現すようなライブでした。 意外だったのはPino Palladinoのペダルボードが大きくなっていて、過去にないほどペダル類の数が増えていた

          Pino Palladinoの使用機材などについて

          BOSS RV-3の修理とちょっとした調整

          コンパクトタイプのデジタルエフェクターが出始めた頃のBOSSの自信作です。Number Girlの田淵ひさ子さんなどの使用でも知られています。 「on/offのスイッチの効きが悪い」ということで修理を依頼されました。そちらは電子スイッチを新しいものに交換するだけでしたが、楽器でテストしているうちに気になることがありました。 ハムバッカーなど出力の大きいピックアップで低音弦側を弾いたり、ベースで使ったりするとディレイ音が若干歪んでしまいます。入力ゲインに関する当時の仕様上の

          BOSS RV-3の修理とちょっとした調整

          Sam Wilkesの使用機材などについて

          今年6月に東京で開催されたFestival Fruezinhoで、Sam Gendel and Sam Wilkesのデュオを観に行ってきました。その前後で調べたり考えたりしたことを雑にまとめておきます。 デュオでのステージはペダル類を確認すると二人ともピッチシフター+モジュレーション+リバーブで音色のバリエーションを作ったうえで巧みなルーパーさばきに驚嘆しました。ピッチシフターはSam Gendelはいつもの特注品、Sam Wilkesの方はOC-2とエレハモのPitch

          Sam Wilkesの使用機材などについて