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ブースター/プリアンプ "Hyperbolic Pump"の製作

ギターに限らずベース、シンセ、ドラムマシン等に幅広く使えるバッファ、ブースター、プリアンプの役目をするペダルを作りました。

きっかけは「バイパス音が気に入っている」とmoogのエフェクターmoogerfoogerを使っているベーシストの演奏を聴いたことでした。このシリーズはエフェクトのオン・オフにかかわらず入力段のプリアンプを経由しています。DRIVEノブで様々な信号入力ゲインの楽器に対して音量を調整して使用できるとともに、このプリアンプ部を通した音質が人気です。ギタリストではJohn Frusciante、西田修大など、ベーシストではThundercat、Robin Mullarkey、Joe Cleveland、新井和輝など、キーボーディストではNicholas Semrad、BIGYUKIなどがmoogerfoogerシリーズのユーザーとして知られています。

音の良さと筐体のデカさに定評があります

「ヴィンテージ機材のプリアンプ回路を取り出したペダル」と言えばテープエコーのEchoplexから作られたXotic EP boosterをはじめ、BOSS CE-1やKlon Centaurからのインスパイアなどが既に普及しています。最近リリースされたBOSSのBP-1w Booster/Preampも同じ系統の機材ですが、これがたいへん使い勝手よい製品です。ゲインで音色作りをした上で全体の音量を調節するマスターボリュームがあり、かつオン・オフができるというのがちょうど良かったので、これと同じような操作性を意識して「moogerfoogerのプリアンプ」を製作しました。

実際に自分でもLow Pass Filter M-101とRing Modulator M-102を入手してリバースエンジニアリングしながら作りを勉強し、一般的なエフェクターの筐体サイズに収めるようにしました。せっかく作るならある程度の数を作れるようにしようと思ったので、KiCadで回路図の作成と基板レイアウトをおこない、FusionPCBへプリント基板の発注をしました。アルミダイキャストケースはTyda Electronicsのcustom drill serviceを利用して穴あけと塗装をした状態のものを作ってもらいました。基板設計からの製作プロセスはどれも初めての経験だったので、習得するのにそれなりに時間がかかってしまいました。しかしいずれも公式のドキュメントが充実しているので楽しく勉強していました。完成したのがこちら↓

回路としてはオペアンプによる増幅と、トランスコンダクタンスアンプ(OTA)による軽い歪みの付加が主な要素です。独特のやさしい歪み方はOTAの増幅曲線がtanh(x)関数の形でサチレートすることによるものと考えられ、Hyperbolic Pumpという名前はそこから取りました。OTAは古いシンセによく見られたICですが、dyna compをはじめコンプレッサーにも現役で使われます。正負電圧の電源供給のほかに信号の増幅率をコントロールする電流入力があり、moogerfoogerではこれをバイパススイッチのオン・オフ機能に利用しています。moogの他機種では、廉価シリーズminifoogerのMF boostやベースシンセのTaurusなどにもローファイな音色を作る目的で使われています。

本家moogerfoogerでもそうなのですが、OTA由来の「シャーー」というノイズが常に出ています。「バイパス音が太くて好きだけどノイズが目立つからボードから外した」というコメントは時々目にします。このモデルでは完全に無くすことはできていませんが、できるだけ目立たないように調整しました。

本家moogerfoogerよりも大幅に小型化したので、ペダルボードに組み込んでステージで使用するのにはかなり使いやすい出来になりました。今後は管楽器やボーカルマイクからのバランス信号を入力できるようにXLR端子を装備したバージョンや、ステレオ入出力に対応したバージョンなども考えています。

友人用に赤い筐体の2号機も製作

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