寛大さん、「探究学習」ってなんですか?vol.8 掘って掘って掘りまくれ!内面にベクトルを向けて「本当にやりたいこと」を探す
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ー寛大さん、こんにちは。前回はグローバル探究学習ブログラムを教育機関様や学生さん達とどのように作り上げていくのか伺いました。今回はもう少し踏み込んで、経験学習サイクルについてお聞かせいただければと思います。
行動や経験を通した気づきから「学び」を取り出す
中村寛大(以下中村):経験学習サイクルは、タイガーモブのグローバル探究カリキュラムの特徴の一つです。学校の授業などを通じた探究学習の取り組みは、「調査」「発表」のプロセスが重視されがちで、「行動」を起こすところまで至らないことが多いのですが、当社では、企業研修や人材育成の現場で用いられる経験学習サイクルをもとにした授業の設計・運営を行っています。この経験学習サイクルでは、①実践→②経験→③内省→④気づきの4ステップを重視しながら、参加者の学びをサポートしています。
-経験学習サイクルに基づいた授業は、具体的にどんな風に設計しているんですか。
中村:簡単な4つの質問による「振り返りシート」を使っています。
【経験したことを言葉にしてみよう】
1.どのような経験、事実と出会ったか
2.その中でも特に印象に残っていることは?
3.印象に残ったことに何を思ったか?(どんな解釈をしたか?)
4.自分の中で獲得した新たなものの見方は?
まずは「今日やったこと」を聞き、次に、その中でも印象に残っていることを出してもらう。なぜ印象に残っているのか、感想を聞く。そして最後に、授業を通じて自分が新しく獲得したものがあるかを考えてもらいます。
「振り返りシート」をツールにして気づきを抽象化する作業を繰り返す。このサイクルを通じて、いろいろな学びを獲得していきます。
-「振り返りシート」は、書いて提出するだけですか?。
中村:いやいや、全員に毎回フィードバックをしています。
-生徒さん全員に毎回? 授業中にやるのですか。
これまでは授業中にシートに記入し、Slackに投稿してもらっていました。最近は「学びシート」という新しいツールも導入しました。ツール内でコメントができるので、効率的にフィードバックができます。振り返りとフィードバックを繰り返していって、「こういうことをやってみたら」という提案に繋げていくようなイメージですね。
-まさに「生きた」学びですね。
いろいろユニークな学びが生まれていますよ。
これは、長野日本大学高校・中学の「世界部」における取り組みの中で実施した振り返りの一部です。
気づきや経験を通して抽象的に学んだことのなかで大事なことは何か、どんな行動からそのことに気づけたのか、というプロセスを繰り返します。その結果として、「こういう風にやるとこんなこんなことが取り出せるんだ」とか、「行動すると気づきがあるんだ」とか、経験の中から学習できることが分かるようになってもらうことが狙いです。
経験したことを具体的にどんどん書いていった結果、分かったことや学びが増えていく、というプロセスですね。
気づきからエネルギーが生まれて走り出す
-「こんなことに気づいた!」と行動が変わった、印象に残った生徒さんのお話があったらお聞かせいただけますか。
中村:Vol.6でお伝えした土偶について発信した中学生は、経験学習サイクルで自分の好きなことに気づき、行動が変わった好例だと思います。彼女は最初に取り組むことにしたテーマにどこかピンときていなくて。「それじゃあ、なにが好きなの?」と掘り下げていったら、「私はずっと土偶に興味があった」と気づいて、「このテーマだった!」と。
-「土偶だ!」と気がついた途端にエンジンがかかったんですよね。
中村:そうそう。あのブレイクスルーのエネルギーには驚かされましたね。
イメージの刷り込みでできた「仮の自分」からの脱却
-キャリア形成や将来の職業選択の価値観がひっくり返った生徒もいるとか。
中村:僕がこれまで出会った生徒さんたちって、最初は「医者になりたい」「弁護士になりたい」「国際機関で働きたい」という子がかなり多いんですよ。でも、実はあまりその職業を分かっていない。
ところが、プロジェクトを通して自分の得意なことや好きなことが見えてくると、「世の中にはいろんな仕事があるよね」「どんな人がお客さんになり得るだろうね」と考えるようになるんです。その結果、「私、商品開発がやりたいです」とか「本当にやりたかったのはバイオ系の研究です」とか、そういう希望が出てくるんですよ。「医者になりたかったけど、実は先端恐怖症で。。。」という子がいて、「それだと医者は無理じゃないか」と話すと「人の心に向き合うことがすごく得意、人の話を聞くのが好きだから心療内科がいいです」と具体的になったり。
-彼らにとって、自分を知るのは初めての経験だったりするんでしょうか。
中村:基本的にはそうですね。自分の内面にベクトルを向ける経験が彼らにはほとんど無いんです。外部から「これだったらいいじゃん」とか「あなたにはこれが向いていると思うよ」という提案や情報が溢れるぐらい入ってくるので、それを真に受けて「自分はこうだ」と思い込んでしまっています。
イメージの刷り込みに支配されて、かつ忙しいから内面にベクトルを向けてこなかった。だからこそ、僕らの授業を通して内面にベクトルを向けると、大きな変化を体験するんです。
意思決定の瞬間にベクトルを向けると考え始める
中村:一つ、面白い小学生のエピソードをご紹介します。小4の男の子なのですが、彼は授業中に座らなかったんですよ。ずっと走っている(笑)。それで、「お前、すごい。よく授業中ずっと走っていられるね。なんでその意思決定をしたのか、俺に手紙を書いてよ」って、振り返りシートを渡したんです。どうして走っていたと思いますか。「プロ野球選手になりたいから、授業中もトレーニングをしている」と。超面白かったので、さらに掘り下げてみたんですね。「ずっと走っていることに、どんな意味があるんだろう。授業中に走ることって、周りを含めてどのぐらい意味があると思う?」と。そうしたら、「あまり意味がなかったです」と言い始めて、次の日から座ったんです。それを聞いた親御さん、泣いたそうです。「うちの子が授業中に座った」と。
-すごいエピソードですね。
中村:その子、「好きなこと=野球」「特技=野球」「将来の夢=プロ野球選手」なんですよ。でも、最近はリンゴの研究にはまっちゃって。抗酸化作用があって健康にいいぞ! みたいに全部野球に繋げるんですけど(笑)。
-リンゴの研究を野球に繋げて自分ごとにしているんですね。
中村:才能の一つですよね。ちょっとした発達の凸凹だと切り捨てられてしまいそうなんですけど、そうじゃない。
授業中に寝てる子って、どこの学校にもいるじゃないですか。いわゆる「ヤンキー」に限らず。僕、彼らに聞くんですよ。「すごいね。みんなで勉強しているときに、意思決定して寝てるんだよね。ちなみにどうして?」って。そうすると面食らうんですよね。そんなこと聞かれたことないんじゃないでしょうか。でも、その子の意思決定にベクトルを向けてあげると、やっぱり考える瞬間が訪れるんです。
流れの中に巻き込まれて無理やりやらされていて、彼らはイライラしている。でも、「お前の意思で決めているんだよね。」と言うと、急に変な感じになっちゃって、真面目に授業を受け始める子も出てくる。そんな面白い彼らは僕の大好物です(笑)
-だいたい、そういう子たちも頭の中で考えてはいるんですよね。
彼らは才能の塊だと思いますよ!
彼らの気持ち、僕もすごく分かるので、エネルギーを向ける先があることに気づいて、少しずつでいいので何かを得てほしいですね。
-ありがとうございます。探究を自分の内面に向けることで大きな変化を遂げる生徒さんたちのエピソード、ワクワクしました。次回は熱中・熱狂を生み出すテーマとファシリテーションについて詳しく聞いていきます。
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