発見!代替肉の新常識
2021年の干支は、「丑」🐄。
綺麗な霜降りの入った牛肉を思い浮かべると、心躍る人も多いのでは?
今日のトピックは、私も大好きな牛肉のお話・・・ではなく、そんな牛をはじめとする食肉の対抗馬として、ここ1〜2年前から食産業で注目されている「植物性代替肉」を取り上げてみたい。
1.そもそも「代替肉」とは?
(1)「代替肉」って何?
「代替肉」とは、文字通り、畜肉の代わりとして、大豆やエンドウ豆など植物性原料を使って肉の食感や味を再現して作られた、植物由来の肉(英語では「plant based meat」という)を意味する。
ここまで読むと、植物由来の肉なら、10年近く前から健康食材として聞いたことあるけど・・・という方も多いのでは。ところが、昨今注目されている代替肉は、ここ数年で大きな進化を遂げているのがポイントだ。
(2)「代替肉」の進化
Amazonの食品産業研究カテゴリーで現在ベストセラー1位になっている本『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』の中で、この進化過程が非常にわかりやすくまとまっていたので紹介する。
代替肉レベル1「肉の代用品」 特徴:豆腐ハンバーグなど、肉を他のもので置き換えており、味わいからして自分が食べているものが肉ではないことが明確なもの。
代替肉レベル2「肉もどき」 特徴:肉の食感を中心に再現したもの。乾燥大豆ミートやセイタン(小麦のグルテンを主原料とした食品)など。肉っぽさはあるものの、肉の香りはせず、乾燥した食材を湯で戻して調理するなど、肉とは異なる体験が残る。
代替肉レベル3「肉に近い喫食体験」 特徴:ベジバーガーなど、肉の食感だけなく味も再現しようとしたもの。ただし、肉の香りはせず、ベジタリアン向け。肉好きの人々を満足させるには至らない。
代替肉レベル4「肉と同じ調理~喫食体験」 特徴:米国Impossible Foods社やBeyond Meat社に代表される植物性代替肉。”鮮肉”としての状態で販売され、調理すると赤みが茶色く変化し、”肉汁”とアロマが広がるなど、調理体験まで肉と同じにしているもの。味わいや食感も本物の肉と大きく変わらず、肉好きの人々にとっても満足度が高い。また、調理・喫食いずれにおいても変化は求められない。
同本の著者は、現段階の代替肉がレベル4に位置づけられると同時に、レベル1~3までの進化と、レベル4には大きな進化の飛躍があることに着目している。現在、レベル4にいる世界のスタートアップや大企業が狙っているターゲットは、18年で22億ドル(約2400億円)と推計される代替プロテイン(たんぱく質)市場ではなく、世界の食肉市場1兆7000億ドル(約184兆円8500億円)というのだ。
ちなみに、代替プロテイン(たんぱく質)の市場は、「植物性代替肉」以外にも、代表的なカテゴリーとして、「昆虫食」や「培養肉(牛・豚・鶏などの細胞を培養して肉を製造する手法)」が挙げられる。
しかし、昆虫を食べる心理的ハードルの高さや培養コストを鑑みると、消費者にとって原材料になじみがある「植物性代替肉」は、この市場のトッププレイヤーだと理解できる。
(3)代替肉市場の成長率
2020年10月3日付の日本経済新聞で、『植物肉「普及元年」に コロナ契機に消費者選好』という記事が掲載された。同記事によれば、食肉市場は2040年まで年3%成長していき180兆円規模となり、このうち植物肉などの代替肉は年9%の伸びが見込まれるという。
食肉市場全体の規模は、出所先で差異はあるものの、代替肉の更なる進化や、培養肉の課題解決(培養生産コストの削減)を達成できれば、この成長曲線には大きな期待が持てそうだ。
ちなみに、同記事を始め、植物性代替肉について調べると先端プレイヤーとして必ず登場するのが、米国のImpossible FoodsとBeyond Meatの二社だ。今後耳にする機会が増えるはず。ぜひ下記記事をご参照いただきたい。
2.「植物性代替肉」活況の背景
続いて、前述した「植物性代替肉」の背景について、考察する。従来、2つの理由が挙げられてきた。
①世界的な人口増(特に肉食が増える中間所得層の人口増加)に伴い、このまま肉の消費量が増え続けると、現状の畜肉生産・食肉供給体制では持たない、という強い危機感。「どうやって世界100億人の胃袋を満たすのか?」という観点だ。
②代替肉に移行できれば、食肉生産が環境に及ぼす影響を軽減できるという環境保全への期待。家畜は、温暖化ガス排出の主な要因と言われており、生育にも大量の飼料や水、空調管理などの膨大なエネルギーを要するので、環境負荷の低い植物肉を推奨しようというワケだ。ビーガンやベジタリアン人口増加の背景もここに繋がる。
・・・さらにここに新型コロナウイルスの登場だ。
昨春、米国の食肉加工工場でコロナの集団感染が発生。これよって、精肉の供給が止まり、精肉の購入を制限するスーパーや、ハンバーガーを販売できない外食店が続出したという。精肉の値上がりで、割高感が薄れた植物性代替肉に消費者が手を伸ばしやすくなったり、外出制限で運動不足になった人々が健康を気にして、植物肉を試食する機会が増えてきたようだ。
3.日本人と代替肉のこれから
ここまで、「代替肉とは何か?」から始まり、近年の代替肉進化や市場での成長見込み、活況の背景について言及してきた。
最後に、「では日本で、植物性代替肉は普及するのか?」という点を考察してみたい。
結論から述べると、日本において植物性代替肉は(海外と比較して)普及しないだろう、と考える。現に、この投稿を読むまで、「植物性代替肉なんて聞いたことないよ。」という方も多かったのでは?
この結論を導いた整理は、以下のとおり。皆さんはどう思うだろうか?
・まず、日本人の食生活は、今も和食文化が中心であり、和食には周知のとおり大豆等の豆類をはじめ、植物性原材料をベースにした調味料・食品(味噌、醤油、豆腐など)が多く使われている。
・すなわち、日本人は、もともと植物性プロテイン(たんぱく質)を肉以外のいろいろな形で摂取してきたのであり、「植物性代替肉」という形でたんぱく質を摂取しなくても成り立つ食文化の中で生きている。
・・・余談だが、前述の代替肉レベル1「肉の代用品」で挙げた”豆腐ハンバーグ”を世界で一番おいしく感じながら食べられるのは、やっぱり日本人だろう!(わざわざ代替肉レベル4までを欲する人は少数派では。)
・一方で、米国を始め、ドイツやフランス、イタリアなどの欧米では、プロテインの摂取源第1位が「肉」である。前述の米国Impossible Foods社やBeyond Meat社が提案する代替肉主力商品は、国民食のハンバーガー。
「肉」は、彼らにとって、たんぱく質摂取のため絶対に欠かすことができない食材だと推察できる(すなわち、食肉の代わりとして、代替肉レベル4を欲する人が潜在的に多いだろうと予想)。
・・・経済協力開発機構(OECD)によれば、1人あたりの牛肉の消費量は、米国の年26.1kgに対して、日本は年7.4kg。食習慣が異なる以上、植物性代替肉のような新しいモノに対する見方は、日本と米国では大きく異なるはず。
・また残念ながら、日本国内ではまだまだ環境問題への関心が低く、代替肉と環境保全を結び付けて考える人が少ない。欧米では、ビーガンやベジタリアンに加えて、植物性食品を中心に食べつつも、日によって肉・魚も摂取する「フレキシタリアン」も増えているという。植物性代替肉を求める購買層の厚みが異なるだろう。
・・・他にも、宗教上「肉を食べられない」信者には、代替肉を摂取可能食材として受け入れてもらう必要がある。この点、前述の米国Impossible Foods社は、提供する代替肉につき、ユダヤ教徒向けのコーシャ認証や、イスラム教徒向けのハラール認証を取得。これらの宗教国では、代替肉が新しい市場を開拓・普及する可能性が高い。
4.最後に・・・
長々と、植物性代替肉に関して考察を行ってきたが・・・「植物性代替肉の現在地」を知るためには、やはりぜひ一度食べて、味を経験するのが一番。
そんな訳で、近所のフレッシュネスバーガーで、100%植物性由来の大豆パティを用いた「THE GOOD BURGER(アボガド)」を試食!
・・・先の代替肉進化でいう、代替肉レベル3「肉に近い喫食体験」に相当するという印象。大豆の風味があり、アボガドとタルタルソースとの相性もGOOD。肉と同じ喫食体験までは求めず、一つのヘルシーバーガー・野菜バーガーという位置付けであれば、十分美味しいと感じた。
植物性代替肉の未来を思い描きながら・・・是非一度ご試食あれ!
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