廃棄される寸前だった鎮目桃泉旧蔵の澤田四郎作『Phallus-Kultus』―稀覯本の運命を考える
以前、以下の記事で澤田四郎作の発行していた『Phallus-Kultus』を紹介したが、架蔵のものにはいくつかの蔵書印が押されており、寄贈先も書き込まれている。以下にあたらめてこの蔵書印と書き込みを写真で掲載しておきたい。
架蔵のものは、澤田から鎮目桃泉に送呈されたものであり、鎮目旧蔵であったことが分かる。鎮目については、以前拙noteで紹介した蒐集家名簿『和漢楽(わからん)』には以下のように紹介されている。
鎮目は様々なものを蒐集しており、その蒐集分野のひとつに性に関する風俗があったのだろう。
他にも2枚目の写真にあるように、「松井蔵書」という蔵書印と「宇部短期大学附属図書館 (除籍済)廃棄」というスタンプが押されている。私はこの蔵書印の主が何者であるか分からなかったが、Twitterで交流のあるぬりえ屋様(Twitter:@nurieya2016)より「松井蔵書」の蔵書印の主は、ウナギの研究者で宇部短期大学の学長をつとめていた松井魁ではないかとご教示いただいた。そのため、架蔵の『Phallus-Kultus』は澤田から鎮目に送呈され、その後松井の蔵書となり、宇部短期大学附属図書館に入ったと推測される。もしくは、鎮目から松井の蔵書になる前に持ち主がいたのかもしれない。
驚きなのは、『Phallus-Kultus』が図書館から除籍、廃棄されようとしていたことである。拙noteでも紹介したように、この雑誌は稀覯本であり、所蔵している図書館、研究機関もほとんどない。この雑誌が廃棄されようとしていたことから、図書館の資料の管理方法や地域資料の保存の基準などに疑問を感じざるをえない。鎮目、松井旧蔵の『Phallus-Kultus』は幸いにも廃棄されず古本市場に出て私の手元にあるわけだが、一歩間違えれば処分されていたであろう。廃棄せずに古本市場に流した方々にはおおいにGood Jobと伝えたい。
私が知らないだけで、同じような経緯で廃棄されてしまう貴重な資料も多くあるのではないかと考えると非常に残念だ。最近では、「映える」図書館が話題になっているが、地域資料の蒐集、保存は図書館の重要な役割のひとつである。目立たないかもしれないが、非常に重要であるということを今一度思い出していただきたい。
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