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オリジナルの「物語の考え方モンスター」を創作した話。

はじめに

 この記事では、私がオリジナルの「物語の考え方モンスター」を考え、形にしていくまでのチャレンジをまとめたものである。

もっと、学習を楽しくしたい。
もっと、学習を分かりやすくしたい。
そうすればきっと、子どもたちは、もっと主体的に学べるはずだ。

そのためのツールとして考えたのが「物語の考え方モンスター」だ。

教科ごとのサングラス

 新しい学習指導要領になり、教科の「見方・考え方」が重視されるようになった。簡単に言えば、それぞれの「教科特有の視点を意識して学ぼう」ってことだ。その「教科のときにかけるサングラス」と言ってもいいかもしれない。

 例えば、「たまご」を教材としたとき。
 家庭科のサングラスをかければ、「どうやって調理しよう?」煮る?焼く?炒める?と調理方法を考えることができる。
 理科のサングラスをかければ、「なんのたまごかな?」と生物学的な視点から考えたり、「どれくらいの高さから落としたら割れるかな?」と物理学的な視点から考えたりできる。
 図工のサングラスをかければ、「もし、このタマゴから何か出てくるとしたら…?」と想像を膨らませて絵を描いたり、「タマゴの殻を使って工作できないかな」と道具として使って工作したりすることができる。
 同じ教材でも、それを見る視点で、考えることや学ぶことはガラッと変わるということだ。

算数のサングラス(算数の考え方モンスター)

 算数の考え方を視覚化した、興味深いものがある。それは学校図書の算数の教科書にある「算数の考え方モンスター」だ。

学校図書(算数の考え方モンスター)

 くわしい説明はサイトを見てもらうことにして、簡単に言うと、楽しみながら「算数の考え方」を学べるように、「算数の考え方」を視覚化したってこと。これを授業で使ってみたら、子どもたちの反応がよかった。「ポ〇モン」みたい!と高学年でも大ウケ。意欲的に学ぶ子が増えた。
 ただ楽しいだけでなく、「このモンスターを使ったら、今回の問題は解けそう」と課題解決の見通しをもつのにつながった。
 算数が苦手な子は、とりえあえず「このモンスターを使いたい」と最初の考えをもつことができたし、算数が得意な子は「次はこのモンスターを使ってみよう」といろいろな解き方にチャレンジするようになった。
 私は、国語を専門に勉強してきたので(小学校教諭でも、力を入れている教科が何かしらある)これを、国語でもできたらな…と思った。

国語のサングラス(物語文)

 国語は「話す聞く」「書く」「読む(物語文・説明文)など、領域がたくさんある。今回の記事では、その中でも、「読む(物語文)」のサングラスについて話をしたい。

 物語を読み解くため(読み深めるため)の「見方・考え方」は、これまでたくさんの先生方が「読みの視点」として作ってきている。しかし、それを視覚化した人はいない。
 算数モンスターのように、物語モンスターを作ることができれば、子どもたちは楽しく、主体的に学べるようになるのではないか。
 そう思い、物語モンスターの創作にチャレンジすることにした。

「物語の考え方モンスター」の創作

①物語の設定(イツカ・ドコカ・ダレカ)

 物語の学習で、まず確認しなければならないのは「物語の設定」だ。物語の学習では、最初に「時(いつ)」「場(どこ)」「登場人物(だれ)」を確認する。そのためのモンスターをつくることにした。

 考えを巡らせているうち、昔好きだったゲームに「いつ花」というキャラがいたことを思い出した。そこから着想を得て、「時」のモンスターは「イツカ」と名付け、花のモンスターにすることにした。
 物語の設定はセットで覚えやすくしたかったので、「場」のモンスターは「ドコカ」、「登場人物」のモンスターは「ダレカ」とし、花のモンスター3兄弟にした。

(左から)イツカ・ドコカ・ダレカ

 ちなみに、私に絵の才能は無い。私の下手な落書きをイメージ化してくれたのは妻である。
 私は「物語の設定3兄弟」を、花の色を変えるくらいで考えていたのだが、花びらの形を変えたり、それぞれのモンスターにアイテムを付け加えたりしてくれた。
 イツカには時計を、ドコカにはコンパスを、ダレカには仮面を…。素晴らしいアレンジだ。本当に感謝しかない。

②場面分け(バメン)

 物語の学習で、「物語の設定」を確認したら、次にすることは「場面分け」だ。「場面分け」をして各場面を短い文でまとめて、あらすじを捉える。だから「場面分け」のモンスターを作ることにした。

 場面分けの仕方を説明するとき、子どもたちには「紙芝居の絵が変わるところ」と伝える。だから「モンスターにするなら紙芝居かな…」と思い、昔の、紙芝居おじさんが持っているような装置を考えたが、どうも形にならない。
 一方で「分ける=切る」ということで、カニのモンスターも考えた。紙芝居の装置を、テレビだと考えればわかりやすいかなと思い、カニとテレビを合わせたモンスターにした。
 しかし考えていくと、今度は、口の中が画面に見えない…。そこで画面の中に映像を映すことにした。どんな映像を入れようか…。

 場面分けのポイントは、時が変わったところ、場所が変わったところ、登場人物が変わった(増減したり、ちがう人物になったりした)ところである。そこで、イツカ・ドコカ・ダレカを映像として入れることにした。
 妻には、「モンスターの中にモンスターがいるってどうなの?」と言われたが、私はナイスアイデアだったと信じている。

完成したモンスターがコレ。

③中心人物の変化(ヘンカ)

 場面分けをしてあらすじを捉えたら、物語の学習で次にやるのは中心人物(いわゆる主人公)の変化を捉えていくことだ。物語の初めと終わりの中心人物を読み、どう変わっているか、変わるきっかけは何だったのかを考える。そこで、中心人物の変化のモンスターを考えることにした。

 変化は「へんげ」とも読む。子供の頃から、忍者に憧れをもっていた私。「へんげ」と言えば忍者かなぁ…と思い、忍者をモチーフとすることに決めた。
 中心人物の変化は、「初め」〇〇だった中心人物が、■■を「きっかけ」に、「終わり」には⭐️⭐️になる話。といった感じで捉える。
 だから大切なのは、「初め」「きっかけ」「終わり」の3要素。これを絵の中に落とし込みたかった。

ヘンカ。個人的にお気に入り。

 上の画像が「ヘンカ」である。黒い右目が「初め」を表している。顔の中心に置かれ、顔を左右に分けている葉っぱが「きっかけ」を表す。葉脈が、きっかけの「き」になっているのは私のこだわり。妻は「意味あるのコレ…」とぼやいていたが気にしない。そして左目は色が変化している。これは「終わり」に変化した中心人物を表している。

ちなみにこれは下書きが残っていたので、載せる。

 最初は、葉っぱだけでなく、目にも字を入れるつもりだったみたいだ。両目とも色がついているし…。顔の色ごと変えているデザインはプロレスラーみたい…。今のデザインの方がシンプルで良い。妻に感謝。

④山場(ヤマバ)

 最初と最後で中心人物がどう変わったのかを捉えたら、次は「なぜ、変わったのか」を考えていく。物語学習の終盤の活動だ。
 物語文の指導では「中心人物が変わったところ」を「山場」とか「クライマックス」と呼ぶ。そして、そこでなぜ変わったのかを考えていくことで、物語の主題に迫っていく。

 山場というくらいだから、モチーフは山しかない。ただ、起承転結の「転」のところで変化が起きることが伝わるようなモンスターにしたかったので、あえて、左右非対称の山にした。山の端の部分が「物語の盛り上がりを示す曲線」になっている。そして、曲線の頂点(頂上)で「中心人物が変わる」ので、回転矢印がついている。

ヤマバ

妻よ、ありがとう。

 まだまだ、モンスターはいるのだが、とりあえず今回の紹介はこの辺にして終わろうと思う。最後に、妻の技術の素晴らしさを讃えて終わりたい。

 下の画像は、「会話文・心内文・地の文」のモンスターを作るときに、妻に渡した下書きである。下手過ぎて恥ずかしいが、妻のすごさを伝えるため我慢して載せる。

 いろいろ考えたのだが、C案でいくことにした。この下書きを渡して、あとはおまかせ。妻はうんうん唸りながら、完成したものを見せてくれた(下のイラスト)。B案とC案を混ぜた素晴らしいデザインだ。すごすぎ。

(左から)会話文・心内文・地の文

さいごに

 今回作った、「物語モンスター」のオリジナリティは、物語を読む視点を視覚化したところにある。
 読みの視点自体は、いろいろな先生方のものを参考に作った。特に、桃山学院教育大学(元:筑波大学附属小学校)の二瓶弘行先生の著書を大いに参考にしている。

 他のモンスターのデザインについて、また、このモンスターをどう授業の中で使っていくかについては、また別の記事を書きたいと思う。
 物語モンスターは、まだまだ発展途上だ。モンスターの種類を増やしたり統合したりした方がいいかもしれない。授業での使い方も、まだまだ研究中だ。
 これから、さらにより良いものにしていくためチャレンジし続けたい。そのチャレンジの経過も伝えていけたらいいなと思っている。

おまけ

 この物語モンスター、思い入れがありすぎて、妻にお願いしてグッズにしてもらった。職場で使っているのだが、まだ誰にも触れてもらえていない。私はコーヒーを飲みながら、このモンスターたちを愛で、日々癒されている。


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