
#1975 「学習としての評価」にするために
「学習評価」には、以下のような3つの種類がある。
➀学習の評価
②学習のための評価
③学習としての評価
➀は、評価主体が教師であり、総括的評価にあたる。
②は、評価主体が教師であり、形成的評価にあたる。
③は、評価主体が学習者自身であり、形成的評価にあたる。
私たち教師は、➀や②を重視しがちだ。
しかし、最終的には、学習者である「子ども」自身を「評価主体」にしていかなければならない。
いつまでも「他人」である教師に「評価される」構図ではなく、適切に「自己評価」ができる学習者に育て上げていくことが求められる。
つまり、「自己評価」という営み自体が、「学習経験」となっていることが重要となる。
「学習としての評価」には、「評価」と「学習」が両方とも内包されているのである。
教育の究極の目的は、「人格の完成」だ。
しかし、「自己評価主体となる」ことも、教育の目的となりえるくらい重要なのである。
それを可能にするのが、「学習としての評価」という概念なのだ。
では、このような「学習としての評価」を機能させていくためには、どのようなことが必要なのか。
以下に整理していきたい。
1 授業における子どもの学びを「自己調整学習」にデザインする
「旧態依然とした教師主導の単線型一斉授業」をしているうちは、「学習目標」は教師から与えられる構図となる。
「目標」が一方的に設定され、「学び方」もコントロールされている以上、自己の学習状況を子どもは「自己評価」することはできない。
「学習目標」を子ども自身が設定し、「学び方」や「学習方略」を自己選択するからこそ、終末の「省察」「自己評価」が機能する。
この「省察」「自己評価」により、「学び方」や「学習方略」の是非を判断し、次の学びに生かしたり、修正したりすることができる。
さらに、最初に設定した「目標」自体も省察し、必要なら修正するという「ダブルループ学習」も可能となるのだ。
よって、自分自身で自己の学習目標を設定する「自己調整学習」「自由進度学習」「けテぶれ」などの学習デザインをすることが重要となる。
「旧態依然とした教師主導の単線型一斉授業」では、「学習としての評価」は成立しえないのである。
2 「目標」「現状」「ギャップ」をもとにしたフィードバックを行う
子どもの学習を「自己調整学習」にしたからといって、「初学者」である子どもの「学びの質」は低いままである。
そこには、教師の適切なフィードバックが欠かせない。
では、フィードバックを機能させるためには、どのような要素が必要なのか。
それは「目標」「現状」「ギャップ」という三要素である。
1つ目は、「目標の把握」である。
子どもは、学習中に暗中模索となることがある。
そこで、教師は「目指すべき目標はどこなのか」を明確に指し示す必要がある。
2つ目は、「現状の把握」である。
子どもは、自分の現在地をメタ認知できていないことが多い。
そこで、教師は「現時点の状況はどうなのか」を明確に教えてあげる必要がある。
3つ目は、「ギャップの橋渡し」である。
子どもは、「目標地点」と「現在地」が分かっても、その差をどうやって埋めていいか分からない。
そこで、教師は「目標と現状のギャップを橋渡しする方法」を指導する必要がある。
このような3つの要素を重視したフィードバックを行うことが、「形成的評価」の肝なのだ。
そして、このようなフィードバックを繰り返し行うことで、子ども自身も「目標」「現状」「ギャップ」という三要素を意識できるようになっていく。
なぜなら、「自己モニタリング」「自己コントロール」という「メタ認知」ができるようになっていくからだ。
これが、三要素を意識した形成的評価としての「自己評価」につながっていくのである。
まさに、「評価熟達知」が向上するのである。
3 ルーブリックを活用した「パフォーマンス評価」を取り入れる
そもそも、教育や学習という営みに、なぜ「評価」が必要なのだろうか。
それは、他者や自己の「コンピテンス(能力)」を可視化するためである。
知識・スキルなどの「学力」や「能力」というものは、観察不可能な要素である。
「体重」であれば、体重計を用いれば、自分の体重を可視化できる。
しかし、上記で述べたような「コンピテンス」は観察不可能であり、可視化が困難である。
そこで必要となるのが、「実演」や「作品」といった「パフォーマンス」を行うことである。
ある特定の「パフォーマンス」を行うということは、観察可能である。
その観察可能な「パフォーマンス」を「評価」することで、その人の「コンピテンス」を可視化しようとするわけだ。
その際に必要となるが、「パフォーマンス課題」である。
この「パフォーマンス課題」により、子どもに「実演」をさせたり、「作品」に表現させたりするのだ。
そして、子どもの「パフォーマンス」から「コンピテンス」を可視化するときに用いるのが「評価基準」となる。
いわゆる「ルーブリック」である。
※「理想の作品事例」でもよい。
これにより、観察不可能であった「コンピテンス」を可視化することができるのだ。
また、「ルーブリック」は教師だけが把握すべきではない。
それでは、教師だけが「形成的評価」をすることになる。
これまで述べてきたように、「学習としての評価」にするためには、「ルーブリック」を子どもにも公開し、「自己評価」に活用させることが重要なのだ。
よって、授業における「単元デザイン」に、「パフォーマンス評価」を取り入れることはマストとなる。
単元のゴールに「パフォーマンス課題」を用意し、「ルーブリック」を事前に共有することで、「目指すべき姿」を把握することができる。
これにより、「2」で述べた「目標」「現状」「ギャップ」の三要素が生きてくる。
「ルーブリック」があることで、目指すべき「目標」と自己の「現状」を両方とも確認することができる。
そして、その「ギャップ」を埋めるために、リフレクションをしたり、軌道修正をしたりできるのだ。
まさに、「学習としての評価」が機能するのである。
「ルーブリック」を繰り返し活用することによっても、子どもの「評価熟達知」は向上していくのだ。
以上、「学習としての評価」を機能させるために必要なことを整理した。
そのためには、「自己調整学習」「フィードバック」「ルーブリック」などの要素が欠かせない。
ぜひ、このような要素を取り入れた学習をデザインし、「学習としての評価」を機能させ、子どもを「自己評価主体」に育てていきたい。