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燃え尽き症候群の正体
前回は、やる気の心理学と題して前向きに自己研鑽に取り組む方法についてお話しました。
それに関連して今回は、
近年増加していると言われている燃え尽き症候群について解説していきます。
医師や看護師といった対人援助職に多いとされている燃え尽き症候群。
知らず知らずのうちに罹患している人も多いのではないでしょうか。
燃え尽き症候群の定義
燃え尽き症候群とは、
責任感を持って仕事に取り組んでいた人が、急にやる気や熱意を失くしてしまう状態のことです。
「バーンアウト」とも呼ばれ、
1970年代にアメリカの精神科医であるハーバート・フロイデンバーガー氏によって提唱されました。
「燃え尽き症候群」という名前の疾病があるのかというと、そうではないようです。
あくまで、“健康状態の悪化につながる要因“として取り上げられており、それ自体は疾患ではありません。
とはいえ、燃え尽き症候群の提唱から数十年経って大きな変化がありました。
世界保健機関(WHO)の最新の国際疾病分類(ICD-11)に記載された事です。
ICD-11において、
燃え尽き症候群とは「健康状態に影響を及ぼす要因」として、
「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスに起因するもの」と定義されています。
大きくは職場の問題であり、
精神疾患の分類としては、業務量過多による反応性のうつ病や適応障害の概念に近いと言えるかもしれません。
燃え尽き症候群の3つの症状
それでは、代表的な3つの症状を見ていきましょう。
①感情的疲労(情緒的消耗感)
・今まで楽しいと思えていた仕事が、つまらないと感じる
・仕事に精を出しすぎて、身も心も疲れ果てたと感じる
仕事に対しての情熱が燃え尽きて、熱意や意欲が低下している状態のことです。
燃え尽き症候群の中では中心的な症状として取り上げられることが多いです。
何らかのきっかけがあって起こる心の動きを情緒と言います。
その情緒が枯渇した状態が、すなわち燃え尽き症候群なんですね。
対人援助のように過大な情緒的資源が要求される職務で燃え尽き症候群が発生しやすいのは、ある意味必然なのかもしれません。
②脱人格化
・同僚やクライアントの顔を見るとイライラするようになった
・普段出来ていた周囲への気配りが面倒に感じる
今までの人格が変わったように周囲に対して攻撃的になったり、思いやりのない態度を取ることが特徴です。
情緒的資源を使い果たしてしまった人が、
さらなる心の消耗を防ぐために情緒的資源を「節約」した結果として起こります。
患者の話をろくに聞かずパソコンばかり見て問診する医者は嫌われますが、
見方を変えると自分を守っているが故の行動なのかもしれません。
③個人的達成感の低下
・仕事が終わっても達成感が生まれない
・仕事に対しての有能感が消えて、自己否定的な思いに囚われる
仕事で得られていたはずの達成感が失われてしまうことです。
達成感の欠如はモチベーション低下につながり、それにより情緒的消耗感や脱人格化がさらに悪化する悪循環が生まれます。
燃え尽き症候群の影響
約7,500人のフルタイム従業員を対象としたギャラップ社の調査によると、
従業員の23%が仕事中に燃え尽き症候群を感じることが“非常に多い“、または“いつも感じる“と回答し、
さらに44%が燃え尽き症候群を感じることがあると回答しています。
つまり、
フルタイム労働者の約3分の2が燃え尽き感を経験していることになるわけです。
同調査によると、
常に高レベルの燃え尽き症候群に陥っている従業員は、
仕事に時間を取られるため「家庭的な責任を果たすのが難しい」と強く同意する可能性が2倍高くなります。
さらに恐ろしいことに、
燃え尽き症候群の従業員は、救急外来を受診する可能性が23%高いことも分かっています。
職場で燃え尽き症候群になることがよくある、またはいつもあると答えた従業員は、次のような傾向がありました。
・病欠をする可能性が63%高い
・業績目標への取り組み方を上司に相談する割合が半分になる
・救急外来を受診する可能性が23%高い
・現在の職場を退職する可能性が2.6倍高い
・自分の業績に自信が持てなくなる率が13%高い
燃え尽き症候群になりやすい5つの原因
ギャラップ社の調査で判明した、
燃え尽き症候群になりやすい原因を5つ紹介していきます。
❶職場での不公正な扱い
職場で不当な扱いを受けることが多いと強く思う従業員は、
高いレベルの燃え尽き症候群を経験する可能性が2.3倍高いとされています。
不当な扱いには、
同僚による偏見、えこひいき、いじめや不当な報酬、企業方針まで、あらゆるものが含まれています。
❷対処不能なほど過大な業務量
たとえ業績優秀な社員でも、
手に負えない仕事量に溺れると、楽観的な気持ちから絶望的な状態へと急速に変化することが分かっています。
勤務時間や作業量といった量的な意味での負担だけではなく、
業務の内容を含む質的な負担についても考慮する必要があります。
❸求められる役割についての明確性の欠如
職場で自分に何が期待されているかを理解している、と強く同意できる労働者は60%に過ぎない、
とするデータがあります。
上層部が自分や自分の部署に何を求めているのか、
それを理解しようとするだけで、多くの従業員は疲れ果ててしまいます。
❹マネジャーとのコミュニケーション不足、マネジャーによる支援不足
上司からサポートされていると強く感じている従業員は、
定期的に燃え尽き症候群を経験する可能性が約70%低いことが分かっています。
当たり前ですが、
非協力的で敵対的な上司がいる場合はリスクが大きく増加します。
❺非合理な時間的プレッシャー
仕事において、十分な時間があることが多い、あるいは、いつもあると答えた従業員は、
燃え尽き症候群になる可能性が70%低いことが分かっています。
外来診療や訪問介護、リハビリ職のように、
次から次へとこなさなければならない予定が入っている職業では燃え尽き症候群のリスクが高くなります。
燃え尽き症候群に至る3つの要因
前述したように、燃え尽き症候群に至る原因はたくさんあります。
その要因をまとめると、大きく3つの括りに分けられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1713071406449-gGGJT9wYwd.jpg?width=1200)
(1)仕事に関連する要因
・仕事の自主性の低さ
・労働環境のコントロールの喪失
・時間の不足
(2)個人に関連する要因
・過度に自己批判的な性格
・役に立たない対処法の実施
・過剰なコミットメント
・完璧主義
・理想主義
(3)組織に関連する要因
・仕事量の偏り
・上層部と従業員の価値観の不一致
・自身の仕事に対する認知度の低さ
・対人協力の不足
・昇進の機会の不足
ICD-11に燃え尽き症候群の事項が追記されたことは良いのですが、
疾病のひとつとして認識されることで、「個人に関する要因」だけに注目が集まってしまうのは問題だとする意見もあります。
(1)〜(3)のどの要因が一番問題になっているのか、どこならすぐに変えられるのか、
分析した上で一歩ずつ対策を講じていくしかないと思います。
次回は燃え尽き症候群の実態について、
スペインの理学療法士を対象とした研究を基に紹介していきます。
【参考文献】
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
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理学療法士を11年やってきたけど、自分のパーソナリティを今すぐ理解して欲しい。学校では「患者や同僚との関わり方」は教えてくれない。真面目な人ほど対人関係でメンタルを病みやすい。でも、自分の根っこを知ると変われる。パーソナリティを作る”5つの特性”について分かりやすくリプ欄に書きました
— 寺島佑@理学療法士×自律神経×心理学 (@re_1021_) February 27, 2023
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