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『文芸オタクの私が教える バズる文章教室(著:三宅香帆)』〜「バズる」文章の解剖学:読解力と分析力で紐解く、文章力の秘密

【内容】
文豪の小説からブロガーの記事、広告のコピーまでと様々な文章を取り上げ、著者ならではの解説と、「バスる文章」の手法を抽出した本。


【感想】
この本は、目につくあらゆる文章を参考にし、その中から「バズる」要素を抽出しているもので、読解力だけでなく、それを優れた分析力で具体的な手法に落とし込んでいる良書だと感じました。
これまで文章作成術に関する本をいくつか読んでいるのですが、読みやすさや理解のしやすさを強調するものは多い一方で、実際にどう書けばよいのかとなると、途端に抽象的になりがちだったりしました。しかし本書は、非常にわかりやすく、なおかつ高度な内容を扱っていながら、そこに難解さを感じさせない…こういった書き方こそ、文章が「上手い」ということなのかもしれません。

https://www.sanctuarybooks.jp/book/detail/1087


【追記】
ここから、この本とは関係ない話になります…
ちょうどこの本を読んでいる途中で、『この本、読みました』という本に関する紹介番組に著者の三宅香帆さんが出演されているのを見ました。今年発行された『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が、上半期の新書売上1位になったそうで、これからますます活躍していくのだろうなと感じました。

そういえば、以前三宅さんが配信していたポッドキャスト番組『こんな本、どうでしょう?』で、工業高校の生徒に作文指導を行い、名門校ばかりが入賞する作文コンクールに、その生徒を入選させたというエピソードを話していました。その指導法が秀逸で、「確かに」と何度も納得させられる内容でした。残念ながら最近配信が止まってしまっていますが…
https://note.com/tenten2021/n/na7e55c029ce7
このポッドキャストでは、三宅さんとライター谷頭が交互に新しい本の企画を提案し合い、どれも読んでみたくなるような本ばかりを紹介していて、楽しく聴いていました。また、メディアに出演する際の三宅さんはいつもしっかりと役割をこなしているのに、このポッドキャストでは少しとぼけた一面や雑な部分も見られて、それが個人的に良かったです。
個人的には、一緒にポッドキャストに出演していたライターの谷頭さんが年下で、緊張しないで接している(ちょっと舐めている?)感じがあって、なにか素に近い喋りになっていて良いなあと…
番組説明になると唐突に喋りが拙い印象になるのも、普段の出来る三宅さんでな面も垣間見れて、不思議な魅力があったりしたのですが…
吉田豪的に言うと人間の「ほつれ」のようなものが、こうしたラジオやポッドキャストなどの音声コンテンツにおける大きな魅力の一つだとも思うので、気が向いた時にでも更新してくれると良いなあと思ったりしています。
もう10年以上聴き続けているポッドキャスト『東京ポット許可局』みたいに、気負わない感じで聴けるコンテンツとして、長く続けてくれたらなあと思ったりしています。


この本で紹介されている文章作成術や、ポッドキャスト『こんな本、どうでしょう?』での作文必勝法を通じて、今まで文芸評論を中心に活動していた著者が、今後は文章や作文の分野でも重要な存在になっていくのではないかと感じました。山田ズーニーのような独自の教育者的な立ち位置、あるいは俵万智のような文化人枠としてとか、公的な教育審議会に参加する未来なども想像出来るなあとも思いました。さらに、この種の文化人枠(?)のNHKの『日曜美術館』のナビゲーターのようなポジションにも進むのでは、と思ったりもしました。
近年では、国語の教科書にも演出家の平田オリザや、短編小説のノウハウを広めている田丸雅智の文章が掲載されているそうです。著者もそうした方向に進み、若者の文章力を引き上げてくれる存在になることを期待しています。加えて、小説の依頼も既に来ているのではないかと思いますし、創作の分野でもさらなる活躍が見られるかも知れないと感じました。
とはいえ、私がこうした予測をしなくても、著者は自然とそのような道を歩んでいくのでしょうね。ただ万が一、こっそりとやっているというSNS(ヤバい?)裏アカがさらされたりとかといったスキャンダルとかなければ、大成していく方なのだと感じました。

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