『キリスト教の100聖人(著:島田裕巳)〜殉教と聖遺物――キリスト教の驚くべき信仰とその興味深さ
【内容】
キリスト教の聖者たちを、イエスの家族と関係者、12人の弟子、福音書の作者、殉教者、布教や拡大に尽力した者、有力な神学者や修道士、宗教改革者など8つのパートに分けて列伝化。数多の聞き覚えのある名前を手がかりに、歴史だけでなく教義や宗派についても言及された本。
【感想】
キリスト教史を手際よく解説しながら、聖遺物への驚異的な信仰や、聖書以前の外典についても興味深く紹介していました。
特に、殉教によって聖人とされるという独特の価値観から、信徒たちが進んで殉教を選んでいく点に驚かされました。さらに、その遺体が聖遺物として売買され、争いの原因となることもあったそうです。中には、遺体が調理され、食べられてしまうという衝撃的な話まで記されていました。偶像崇拝を批判する一方で、聖者の遺骸を崇め奉るという二重性にも、深い矛盾を感じました。
純潔を異常なほど重んじるキリスト教の価値観も印象的でした。イエスが教えた頃や、ローマ帝国がキリスト教を国教とするまでの歴史については多少は知っていたつもりでしたが、この本を読んで、その広まりや背景について改めて全然理解していなかったことがよくわかりました。
また、キリストの教えにはない三位一体説など、私が当然のように知っていると思い込んでいたことについて、実は本質的な部分を何も知らなかったと気付かされました。
この本は、人間の得体の知れない特異性や、深い業を浮き彫りにする話が多く、非常に興味深く読むことができました。
https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344987050/