『神様のカルテ(著:夏川草介)』〜現役医師が描く、リアルな医療現場と人間ドラマ
※ネタバレします。
【内容】
地方病院で奮闘する若き医師の成長物語。
【感想】
つい数日前、テレビのバラエティ番組で、小説家が夏目漱石の『草枕』を暗唱している場面を観ました。その小説家は現役の医師でもあると知り、彼の処女作を読んでみることにしました。
ちなみに、この小説の主人公である医師も『草枕』を暗記しているという設定があり、筆者のキャラクターが投影されているのかもしれないと思いながら読み進めました。
基本的には、近年流行しているエンタメ系のお仕事小説ですが、リアリティのある医師仲間とのやり取りや、コメディセンスのある文章、そして20代の若者たちの苦悩や成長がしっかり描かれており、非常に力のある秀作だと感じました。
現役の医師である著者だからこそ描ける、さまざまな患者のエピソードや、医局をはじめとした日本の医学界の裏話など、どの話も興味深く、楽しく読むことができました。
また、同僚や先輩医師、妻などのサブキャラクターも魅力的で、バリエーション豊かでした。冒険写真家の妻、文学研究をする友人、才能あふれる若き画家志望者など、それぞれのキャラクターが生かされたエピソードが展開されており、非常に好感が持てました。
さらに、現代においても夏目漱石の時代に書かれたかのような文体が使われている点に、この小説ならではの独自の魅力があると感じました。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09408618