イップス克服に向けて022:「イップス」と「自己肯定感」
回答
▶完璧主義ほど、完璧から遠ざかる
イップスになる人って、悲しいかな、完璧主義なんですね。
それが完璧に機能しているうちは、まだいい。
第1シードにもなります。
周りからも評価されて嬉しくなります。
しかし、どうしても完璧にできないときが、やがて訪れます。
人前で、失敗をさらすのが嫌。
だけどテニスなんて「失敗するスポーツ」ですから、さらすのが嫌であればあるほど、プレッシャーが過大になって、むしろ「失敗」します。
完璧主義ほど、完璧から遠ざかる皮肉です。
▶他人の目を気にすると、心身ともにがんじがらめになる
周りに評価されて嬉しくなるのは、実は、とても不自由なのですね。
何しろ評価の基準が周りにあるのだから、自からに由(よ)っていない。
これって、いつも他人の目を気にしているから、とても不自由です。
精神的にがんじがらめになる。
いえ行動も、自分のやりたいことではなく、他人がどう思うかが基準になるから、身体的にもがんじがらめになる。
今パッと思いついた卑近な例でいえば、自分は暑く感じるのに、周りの人にどう思われるかが心配(基準)だから、エアコンの設定温度を、下げる申し入れができなかったりするのです。
▶「評価」とは対極にあるのが「自己肯定感」
ここまで書くとお気づきかもしれませんけれども、もちろん「自己肯定感」が関わっています。
自己肯定感というのは「評価」に依存しません。
ありのままの自他に対する受け入れです。
「※※ができるから、優れている」
「※※がダメだから、劣っている」
このような「評価」とは、対極にあるのが「自己肯定感」です。
つまり良くも悪くも自他に評価を下すほど、自己肯定感は下がるのです(良い悪いと判断している時点で、すでに「評価」なのですけれども)。
▶「成功した出来事」で、自他を認めさせたい罠
先述した「失敗をさらすのが嫌」というこだわりも、「自己肯定感を読み解く感じ方」と、言えるかもしれません。
なぜか?
自分で自分を肯定できないから、せめて「成功した出来事」で、自他を認めさせたい。
これが「成功した自分はスゴイ!」という「評価」なのであり、それはありのままの自他を受け入れる「自己肯定感」とは、対極なのでしたね。
完璧主義者の自己肯定感が著しく低いのは、こちらの理由によります。
▶「知らんけど」でいい(笑)
「どうやって打ったかよく分からないけど、いいところに入った」というのがいちばんです。
ボールに集中していると、打ち方なんて分かりません。
だけど、ちゃんと打ててしまいます。
完璧主義の人は、いいショットを完璧に再現したくて、どうやって打ったか分かろうとしたくなる衝動に駆られます。
「どうやって打ったか分からんけど、まぁ上手くいったから良かったわ、チャン・チャン」で終わりでいいんです。
今風に言うと「知らんけど」でしょうか(笑)。
良くも悪くも、過去を引きずらないのですね。
なぜそれができるかというと、「良い、悪い」の「評価」にとらわれないからです。
そして「今」にとどまるのです。
▶自己肯定感を高める「直接的な力」
とはいえ、「評価」のすべてが、必ずしも悪いわけではありません。
「あの人は陰口を言う人だ」などと「評価」することで、人との距離の取り方を適切にコントロールできる場合があります。
だけどその「評価」は、主観的で一時的で、状況にもよる。
「評価」のすべてが必ずしも悪いわけではないけれど、決めつけないでいると、それもまた自己肯定感を高める「直接的な力」になり得ます。
▶求められないアドバイスは「暴力」
私もオンコートでレッスンしますが、一方的に教える立場ではありません。
どちらかというと一緒に遊ぶ「仲間のひとり」といった感じです。
指導しているといよりも、必要に応じて客観的な事実を伝えるだけ。
「アドバイス」というのは、相手から求められない限り、一方的に「よかれ」と思ってやったとしても、支配的、暴力的にすらなります。
また「人は対等」なのに、「上下関係」を意識させてしまいかねません。
それが「ありのまま」の自己肯定感を損なう温床ともなるでしょう。
教える側が「上」、教わる側が「下」などと「評価」する。
資本主義社会では、金持ちが「上」、貧乏は「下」などと「評価」するのも、似たような錯覚ではないでしょうか。
▶カバの母さん賢い母さん、教えずに泳がせる
これは、子育て中に学んだ教訓なのですけれども、子どもと一緒にプールに行くからといって、泳ぎ方を教えようとしてもダメ。
一緒に水の中でふざけ合っているのが、いちばん水泳が上達します(笑)。
ですから、周りから見ていると指導しているとは、気づかない人もいるでしょう。
『新インナーゲーム』(P125)でいう、「カバの母さん賢い母さん、教えずに泳がせる/本能の引き出し方」ですね。
サーブも同じです。
上手く打てるときは、「ヒジが下がる」など分かりません。
「ヒジが下がる」と分かるとき、トスしたボールの「ケバ」や「印字」は、見えないはずです。
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