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質問150:ボールに集中するのってやっぱり難しい?

今回はダブルスの件でお話したいのですが、前にもお話ししました通り、自分、テニスコーチ研修中の身でして、その某テニススクールの練習会でダブルスをやったのですが、前衛にいるとき、全然届くようなボールですらも試合中ほとんどボレーしても空振りしてしまい、ボレーがたまにあたってもポイントにならず、バックアウトしてしまいました。
正直ボールのケバケバを見るようにするくらい集中していたと思います。その上、ボレーにおいても別に今では苦手というほどのショットではないのですが、ダブルスになるとかなりの確率で空振りがおこってしまいます
ボールに集中するのってやっぱり難しいんでしょうか?
もはやどういう状態がボールに集中している状態なのかが分からなくなってしまいました。
かなり速いボールになると逆に今度は見えなくなってボールに対しておびえてしまいます。
ボールに対する恐怖心を取り除くにはまた、どうすればいいんでしょうか?

回答


▶「集中しよう!」は非集中


集中することは、コツさえつかんで慣れてしまいさえすれば決して難しくないのですけれども、多くのプレーヤー(特に初中級者)がプレー中に、集中できていないと言えます。
 
なぜなら「集中しよう!」「集中しなきゃ!」と考えた時点で、もはや集中ではないからです。
 
この違いは、お分かりいただけていると思います。

▶「結果至上主義」も非集中


マンガやテレビゲームを楽しむときには、「集中しよう!」と意識しなくても、ついつい没頭してしまうようなもの
 
そうなる条件はすでにお伝えしているとおり、ひとつは未来の結果を気にしすぎないこと(関連記事「『成功しかない』必ず結果が出る方法!)。
 
複雑な計算式の問題を解いている試験中に「合格するかどうか」の結果を気にすると、うーん、合格は難しいでしょう

未来の結果はどうあれ、まるでマンガやテレビゲームを楽しむ感覚で、テニスに取り組むのです

▶「自分のところに飛んで来てほしくない」と思う心理


それともうひとつ、「好き」という要素が挙げられます。
 
どんなマンガやテレビゲームでも、嫌悪感があってはやはり集中できにくい。
 
ご自身はテニスが好きと言いながら、潜在的に(嫌いとは言わないまでも)ネガティブなイメージを持っているところがあると拝察します。
 
たとえばダブルスで「自分のところに飛んで来てほしくない」と思ってしまう心理。
 
この状態では、集中しづらくなります。
 
飛んで来てほしくないと「考える」ため、ボールに集中するエネルギーが弱まるからです。
 

▶「欲」が暴走するとき


「結果を気にしないように」とはいっても、多くの初中級者(完全なビギナーではないアベレージプレーヤー)が、結果を気にしてしまいます。
 
ビギナーは結果を気にしないからビギナーズラックが起きる話はこちら(「ビギナー」がうっかりフローする)
 
「飛んで来てほしくない」のは、自分がミスするのが怖い結果を考えるからです。
 
つまり「こうしたい」「ああしたい」「こうなりたくない」という「欲」をコントロールし切れないのです。

▶心の勢力図を「感謝」で埋める


だけどここでご提案申し上げたいのは、私を含め欲をコントロールすることは難しくても、「感謝することは誰でもできる」ということ。
 
テニスができない環境・状況にいる人も大勢いる中、自分は何の心配もなくプレーできる恵まれた境遇に感謝(関連記事「足るを知る『余裕』が、普段の『気持ち』や『立ち居振る舞い』に現れる」)。
 
これなら、今すぐ、どこでもできます!
 
空爆で練習コートを奪われたアナ・イバノビッチは、代わりに水を抜いたプールでさえ、テニスができたことに感謝したことでしょう。
 
感謝の気持ちが優勢となり、勝ちたい欲や、ミスに対する恐怖心が劣勢となったとき、心は動揺しないから「集中しよう!」としなくても(←それは非集中)、集中するのです
 

▶テレビゲームを取り上げられた子どもたち


「なにを今さら感謝?」
 
そんな反感もあるかもしれませんけれども、「きれいごと」ではありません。
 
テレビゲームを親に取り上げられた子どもたちが再びプレーすることを許されたとき、彼らはゲームできる喜びに感謝して、高い集中力を発揮します
 
「お母さん、ありがとー!」などと(笑)
 
だれが言ったか忘れましたが、この世に万能なるものはほとんど存在しないけれど、「感謝は万能」と。
 
集中しようと直接的に働きかけるのではなく、心が動揺しない結果、ブレないから、間接的に一点集中になるイメージです。
 

▶「一切皆苦」で「楽」になる!?


「感謝できるほど自分は恵まれていない」という気持ちも、おありでしょうか?
 
とはいえ向上心が大事とは言うけれど、むしろ下(という言い方がふさわしいかどうかはさておき)を見て、安心できるのであれば、それも選択肢のひとつとして採用するのは悪くありません
 
「そんな他者も頑張って生きている」と、他者肯定(リスペクト)できます(関連記事「心の実験『他者肯定感=自己肯定感』」)。

そして自分は「まし」だと、自己肯定できます
 
それは仏教が説く「一切皆苦」と似た効用。
 
「(どんなに外からは羨ましく見えても)誰の人生も結局苦しみしかない!」と分かっていれば、誰かを言い負かしたくなったり、自分はすごいんだと虚勢を張ろうとしたりする衝動も落ち着きます。
 
つまり「苦しみしかない!」と分かると、逆説的に精神的には、ずいぶん「楽」になれるのですね(関連記事「『イージーモード』の人生を『一切皆苦』でついに実現!?」)。

ですから仏教では、苦しみは「聖なる真実」と言われます。

「何! 苦しみが聖だと?」

ですから、俗世間は顛倒(あべこべ)という見方になる(関連記事「『ズレ』を修正して伸び悩み解消!」)。

※苦しみには、身体的苦痛のみならず、どこまでいっても満足できない、寂しい、虚しい、切ない、つまらない、などといった感情も含まれます。

相対性の世界ですから、上ばかり見ていると、自己否定したくもなる気持ちになるのは、人として当然です。

友人の幸せや活躍、成功を喜ぶどころか、衝撃を受けるのと同じです(リアルタイムで聞いていた私が小学生のころはよく分かりませんでしたが、当時からそれを見抜いていたシュガーのヒット曲「ウエディングベル」は、だからすごいと思ったしだいです。関連記事「人の幸せが『不安を煽る』とき」)。

▶速いボールが怖い理由


速いボールに対する恐怖心を取り除くには、こちらをご参照いただければと思います。
 
速いボールが怖いのは、体に当たると痛いからというよりも、やはりそれにタッチしてミスするのが怖い結果を考えるせいです。
 

▶感謝の気持の「効果」にあやかる


コーチ研修を受講されているということは、ゆくゆくは指導される立場に身を置かれるのだと思います。
 
生徒さんたちに、感謝の気持ちの「効果」をお伝えください。
 
脳をアルファ波状態へ誘導し、ゾーンに入るきっかけを提供できます
 
フォームを教えるよりも、生徒さんたちはみるみる上達するはずです。
 
そしてそれは、「教える側が教わる」のだから、ご自身の上達には一層寄与します。

▶だから伝統校・強豪校は、精神性を重んじる

 
スポーツの伝統校や強豪校ほど精神性を重んじるのは、こういう理由によるのでしょう。
 
つねに感謝の気持ちでいることが、競技力の向上につながるという智慧を、経験的に肌で感じ取っているのだと説明できます。
 
もちろんこのことは、ご自身や、私自身にも言えることです。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero