テニス上達メモ106.「ショートクロス」は一生打てないのか?
▶ショートクロスの打ち方は?
テニスのプロや上級者に質問する機会があったら、たとえば「ショートクロスはどうやって打つのか?」と聞いてみてください。
今の時代なら、SNSなどで気軽に聞けるかもしれません。
すると、「どうやって打っているんだろう?」「ああかな、こうかな?」などといって身振り手振りを交え、自分の打ち方を振り返ってみたりするでしょう。
「リストを鋭く使うかな」「面はかぶせ気味になっているかも」「打点はかなり前だな」などと思案してみるものの、とどのつまりはこういうこと。
自分では打てても、自分がどうやって打っているのか分からない。
もっと言えば、ショートクロスの打ち方について、上手く言葉で説明できないのです。
▶「感覚」は言葉にできない
上手く説明できないからといって、その言い分が間違っているわけではありません。
というよりもむしろ、それが正解。
「ショートクロスの打ち方」というのを、言葉で説明することは不可能なのです。
なぜなら「感覚」だからです。
▶「きゅうり」の味を説明できる?
たとえば今が旬である「きゅうり」の味を言葉で説明しろと言われても、それは感覚ですから、とてもできません。
「酸っぱさの中にほんのりと甘みがあって……」などと主観を伝えても、どうしても他者へは言葉で正確に伝えられません。
他者は他者なりに、酸っぱさ、甘さの主観的な感じ方があり、好みもあるから、おいしい、まずいとも決めつけられない。
▶「このきゅうりは絶対無二の一本なり」
また1本1本違うというのも、ショートクロスと同じです。
「このきゅうりは絶対無二の一本なり」
同じきゅうりの味は、2つとない。
テニスも「この一球は絶対無二の一球」である以上、同じショートクロスは2球とありません。
その言葉にできない感覚を、言葉で伝えようとするのは、どうしても無理筋なのです。
▶「アズイフの法則」「顛倒」……。なぜか人は「逆」をする
「リストを鋭く使う」「面をかぶせぎみにする」「打点を前にする」「腰の高さにフィニッシュを巻き込む」「ヒザを柔らかく使う」という説明は、一見するとショートクロスの打ち方を表わしているようですが、「はい、では打ってみましょう」と言われたとおりにやってみて、上手く打てるようになったという話は聞いたためしがありません。
なぜなら、言葉にできる外見上のフォームは結果であり、狙う手段ではないから。
きゅうりはおいしいというのは結果であり、味わう手段ではありませんね。
つまりここでも順序が逆で、腰の高さにフィニッシュを巻き込むからショートクロスに飛ぶのではなくて、ショートクロスを狙おうとした結果、腰の高さに巻き込むフィニッシュになった(りする)のです。
面白いから笑うのではなくて、笑うから面白い。
怖いから逃げるのではなくて、逃げるから怖い。
アメリカのウィリアムズ・ジェームズが提唱した「アズイフの法則」です。
専門用語で言う「顛倒」です。
▶女性が「告白」できない本当の理由
そういえば話が逸れますけれども、ベストセラー『嫌われる勇気』に出てくる印象的なエピソード。
女性は、好きな男性に告白したいから赤面症を治してほしいのだけれど、哲人は、女性が赤面症を必要としていて、「だから治してはいけない」と一蹴します。
あくまでも私の意訳ですけれども、赤面症であればフラれても「ほぅら、赤面症のせいだ」と心理的リスクヘッジができると説く。
これをアドラー心理学では「目的論」と説明します。
赤面症がフラれる「原因」なのではなくて、赤面症は必要としている「目的」。
真の問題は、「ありのままの自分を受け入れる勇気」が持てない「自己肯定感の低さ」を指摘しているのだと思います。
つまり赤面症はダミー。
これも「アズイフの法則」に似ていて、赤面症だからフラれるのではない。
フラれても真の問題を直視せずにいられるよう、赤面症を必要としている。
▶フォームを意識すると狙う精度は「半分」以下
話が逸れました。
ショートクロスの打ち方についてもうひとつ注意点は、「リストを鋭く使う」「面をかぶせぎみにする」など身体動作の意識が高まるほど、狙う精度は低くなるコントロールの低下について。
反比例の相関です。
人間は、一時にひとつの対象にしか集中できません。
2つを同時に行おうとすると(つまり身体動作を気にしながら狙おうとすると)、それぞれに気を向ける必要があるから、単純に2で割って集中力は半分です。
つまり、狙う精度は50パーセントでしかありません。
いえ実際には狙うどころから、ミスするでしょうから、半分以下です。
▶意識しない「意識改革」
改めまして、テニスのプロや上級者はショートクロスに限らず自分がどうやって打っているのか、気にしていません。
これを初中級者が気にしようとするところに、齟齬が生じます。
この根底の「意識改革」をしないことには、言うのも憚られますけれども「妙なテニス理論」がこれからもますます、まかり通るでしょう。
「フィニッシュは腰の高さに巻き込む」でショートクロスが打てたら、みんながみんな、ロジャー・フェデラーです。
あるいは「リバースフォアハンド」で打てたら、みんながみんな、ラファエル・ナダルです。
試しに「リバースフォロースルー」「バギーホイップ」等のワードで検索してみましたら、丁寧な打ち方解説が山のようにヒットしました。
▶「どうすれば分かる?」のファイナルアンサー
感覚で狙うのです。
感覚である以上、きゅうりの味を伝えられないのと同様に、ショートクロスの打ち方は言葉にできません。
それでは、ショートクロスは一生狙えるようにならないのかというと、そんな事実はあり得ません。
感覚は言葉では伝えられないとしたら、では、どうすればショートクロスの狙い方は分かるようになるのでしょうか?
きゅうりの味は、食べてみればイッパツで分かります。
テニスの場合は「分かる」というより、「できる」ようになるのです。
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