映画「湯を沸かすほどの熱い愛」がくれた大切な想い。【note💞Voicy】
昨日、Voicy放送をスタートし、多くの方にお聴き頂いて本当にありがとうございます。
本日第4回目のVoicyを配信しました!
今回は映画です!
是非、お聴き頂ければ嬉しいです。
また、これからVoicyとnoteを連動して音声でも文章でも、同時にでも楽しめる投稿をして参りますが、今回はその第1弾でもあります。
ぜひ、お楽しみください!
※今回配信の記事内容は、Voicyのお知らせの後に掲載しています。
※初回3回分はこちらです。
【初回放送】 自己紹介とチャンネルの紹介、配信で大切にしたいこと
【第2回放送】ADHDの私を救ってくれたKPOPとの出逢いを話しました。
【第3回放送】NewJeansの東京ドーム公演の模様を臨場感たっぷりに話しています。
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では、初めて劇場で観た時に、滂沱の涙が止まらず
暫く席から立つことができなかった
あの時の感動と衝撃を受けた数日後に
想いのままに書いたレビューを
掲載させて頂きます。
映画「湯を沸かすほどの熱い愛」レビュー
涙を多く流した映画が、傑作だとは限らない。
ただ、この映画は紛れもなく傑作であり
私の人生でおそらく最も涙を流した映画となった。
決して不幸を嘆くお涙頂戴だとは思わない。
あまりにも強い愛
あまりにも強い生きる力に心が震え
何度も涙が溢れてしまう。
物語はシンプルだ。
末期がんで余命まもなく死にゆくお母ちゃん=宮沢りえが
残りの時間に家族に何をすることを決断したのか。
失踪した夫を連れ戻す。
銭湯を再開させる。
いじめに遭っている娘に立ち向かう勇気を伝える。
そしてより重い決断をもって、家族に向き合ってゆく。
とにかく宮沢りえ扮する双葉=お母ちゃんの存在が凄まじい。
長い彼女の役者人生を全て詰め込んだような
圧倒的なエネルギーで迫ってくる。
決して綺麗ごとでも優しさだけでも済まされない
家族に対する厳しくも深い愛情に
「そこまで、あなたは、家族と向き合えますか?」
と痛烈に問われた気がした。
家出中の夫にオダギリジョー。
情けないながらも妻を想う気持ち。
何にも行動できない彼が絞り出す愛情表現が
これまたたまらなく胸を突く。
そして娘の安澄を演じた杉咲花があまりに素晴らしい。
「私は最下層の人間だから……お母ちゃんとは全然違うから……」
陰湿ないじめを受けている彼女の痛みが
苦しいほどに伝わってくるが
母親の双葉の、娘に対する容赦ない態度が
様々な想いをこちらに呼び起こす。
何が正解かわからない。
ただ、本気でぶつかりあう母と娘の姿に心震え
そしてまた予想だにしない行動に出る
安澄の必死の勇気を絞りだすシーンには
滂沱の涙が止まらなかった。
杉咲花は新人賞ではなく全映画部門の助演女優賞に足る
素晴らしい演技だと思った。
稀有な運命で双葉の元にやってくる
鮎子役の伊東蒼も素晴らしい。
母の愛を求め、焦がれる彼女の姿は
もう涙無くしては見られない。
彼女のシーンだけで
コップ1杯分いったかもしれない 笑
中盤のロードムービー的展開の先にも驚きが待っているが、
それは映画をぜひ観て欲しい。
人と人との繋がりというよりも
人と人と真正面からぶつかり合った上で
思いきり抱き締める愛の大きさ。
「ああ、こんなに心から人と向き合ってきただろうか……」
と胸が苦しくなった。
そして彼女が弱り果てていきながら
命の灯火が仄かに輝く姿はもはや演技を超えていて、
涙と鳥肌が止まらなかった。
中野量太監督が今後
日本映画の王道を牽引する一人の監督となることは間違いない。
自身で脚本を書きメジャー配給でもなく
その物語の強さで宮沢りえが新人監督の作品の出演を決め
中野量太監督は、彼女を含めた全役者から
真実を感じさせる生の感情を引き摺り出した。
印象的なシーンを創り上げる映像センスも素晴らしい。
この物語をどうしても届けたいという
熱く一貫したぶれない姿勢でたどり着いた奇跡に
感嘆の意を感じざるを得ない。
観終えて数日経っても
一文字もレビューが書けなかった。
どんなに言葉を弄しても
この映画に詰まった想いの熱さは
とても表現できそうにない。
ただ、本当にこの映画は観て欲しい。
私は一人で観たけれど
できれば大切な人と
そしていまだに心の底に
じわじわと暖かく燃えている炎は
決して消えそうにない。
愛を出し惜しみして
この世を去りたくはない。
しっかり生きねば
心底そう思った。
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一つ後日談があります。
この映画への溢れんばかりの想いが通じたのか
この映画を初めて劇場で観てから3か月後
2017年1月31日。
今から7年半前ですが
私にとっては宝物のような
ちょっとした奇跡が起こりました。
私は当時ある地方のミニシアターの
番組編成マネージャーをしていました。
地域に愛されて、想いのこもった
素晴らしい映画館でした。
ただ劇場経営としては経済的な困難もあり、
私も番組編成担当としての責任も感じて
前年の年末に、退職を申し出て
映画業界から別の道に進むことを決断していました。
そしてその映画館の最終出勤日に
リバイバル上映されたのが
「湯を沸かすほどの熱い愛」でした。
その映画をブッキングしたのは、
私がこの映画を好きなことを知らぬ
後任のマネージャーだったので
人生、不思議なことはあるものだと
つくづく思いました。
そして私はオープンから3年間、番組編成を行ってきた
最愛の映画館で過ごす最後の1日に
中野量太監督に会って
直接ご挨拶と御礼を言うことができました。
そして舞台挨拶の後、
この後掲載する映画レビューを印刷した紙を
ぶしつけにも監督にお渡しさせて頂きました。
中野監督はその場で読んでくださって
そしてにっこりと柔らかい笑みで
一言、ありがとうと言われました。
その後、監督と2人で写真を撮ったあの時。
それまで十数年にわたって映画という夢を追いかけ続けて
大手映画会社のプロデューサーから
ミニシアターの番組編成マネージャーまで
映画業界でさまざまな仕事をした
最後の瞬間でした。
あの時の奇跡に感謝を込めて
これからも映画愛を忘れずに。