記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『室町無頼』を見て「やばい」以外をなんとか言いたい

ずっと見たかった『室町無頼』をようやく見ました。
もう本当にやばい映画です。ああ、見てよかった。
以下、感想です。ネタバレを含みます。
『RRR』も大好きなので、ときどき『RRR』モードになります。

主人公がかっこよすぎた

主人公の蓮田兵衛がえらくかっこいい。青系の着物を着て、青いストール(じゃないけど、そう見える)を適当に巻いて、ぐいぐい歩く。むちゃくちゃ強く、ワイルドだ。なのに優しいまなざしをしたり、鋭い目つきになったり。適当にやっているようなのに、どうにもかっこいい。誰もがその魅力にやられてしまう。
そーんな蓮田兵衛が大泉洋だというところもすごい。こんなかっこいい大泉洋は初めて見た。なんて言ったら失礼なんだけど。
真田信之の大泉洋も、源頼朝の大泉洋も、紅白歌合戦の司会をしていた大泉洋もすごかったけど、今回の蓮田兵衛の魅力は破壊的だ。
『RRR』のビームみたいだ。

相手役もかっこよすぎた

ビームがいるならラーマもいなければいけないが、ストーリーを無視して無理矢理あてはめるなら、ラーマにあたるのが骨皮道賢である。黒っぽい着物を着て、すっと背筋を伸ばし、蓮田兵衛に対峙する。かつては友達だった、一緒に志を語ったこともあったとされ、今は政権側につき、民衆の敵になってはいるけれど、何かそれだけではない魅力を感じる男である。部下たちに信頼されているのも、人間的にすごい人物だからだろう。
蓮田兵衛のことも実力を認めている。何か汚い手を使って蓮田兵衛に勝とうとは思っていない。こういう堤真一もいいなあ。
最後、泣いている骨皮道賢も笑っている骨皮道賢もすごかった。(この部分はネタバレしたくないのでぼかしとく。)

才蔵の成長もよかった

才蔵はもともと骨皮道賢が捕らえた若造である。蓮田兵衛がひきとった。
最初は威勢がいいけど隙だらけの甘っちょろい若造だったのに、修行を積むにつれ、顔つきも身のこなしもまなざしも成長していく。
修行が滅茶苦茶なのを見ているから、才蔵の成長が嘘っぽく見えない。本当に成長したんだ、すごいやつになったぞ、と思える。
蓮田兵衛同様に皆から慕われるのも納得できる。
長尾謙杜。知らない俳優さんだ。なんて言ったらファンの人から怒られるか。あの才蔵から発せられるまっすぐな力に惹きつけられる。
みんなファンになっちゃうよ。

悪役の皆さんのクズっぷりがいい

しつこいが『RRR』に無理矢理あてはめると、悪役が無茶苦茶の非道でなければならない。その点、この映画の悪役の皆さんも相当なもんである。
民は「虫けら」だと言う。虫けらのように殺しても殺してもわいてくるのだと。虫けらだからどうなっても何の痛みも感じない。
なんなんだこの人たち……と呆れるような極悪非道な皆さんだ。
名和好臣なんて、お前はローマの貴族かと思いたくなるほど、嫌な奴である。北村一輝だ。ゲロの吐き方に呆れた。
こういう人たちを蓮田兵衛は眼光鋭くなぎ倒していく。そりゃそうだよね。
どうしてこんな人たちを「皆さん」と言ってしまうかというと、本当に気の毒なほどこてんぱんにぐさぐさとやっつけられてしまうからだ。

さて、ある意味一番すごい悪役は将軍様である。本当に下々の人間は虫けらにしか見えないらしい。(後半で「蛍が……」とか言っているし。)本人は悪いことをしているなんて思っていないだろう。何も見えてないし、聞こえていないのだから。中村蒼がやると雅ですごい。呆れながら見ていた。

民衆の皆さんのつらがまえがリアル

清潔で贅沢な世界に住んでいる悪役の皆さんに対し、民衆の世界は過酷だ。多くの死体(白骨化したものまで)がごろごろし、それら死体を燃やしている河原や、死にそうな物乞いにあふれた道がリアルだ。
この悲惨な世の中で生き抜いている民は男も女もたくましい。悪逆非道を尽くされて怒りに震えているつらがまえが強い。
彼ら彼女らが蓮田兵衛と共に立ち上がる。やられてばかりでたまるか!と渾身の力をあわせて京の町を駆けていく。こんな戦いをしたら無事ではすまないだろう、犠牲は多いだろう、でも縮こまっていられるものか、蓮田兵衛に続くんだ! ああ、こんなに苦しんできたんだもの、立ち上がるとも!
蓮田兵衛だけではない。
怒れる民の力で京の町の借金の証文は紙くずになった。

音楽が体の奥底に響く

打楽器の音がかっこいい。なんなんだろうね。
蓮田兵衛かっこいい! 
骨皮道賢かっこいい! 
才蔵いけいけ!
という気持ちをがんがんとひっぱっていってくれる。
一揆が始まる時なんかぞくぞくした。
『RRR』(しつこい……)でラーマとビームの戦いのなか流れる音楽にうちふるえたように。
一揆で燃えさかる炎と舞い散る借金の証文を見て、ごんごん体に響く音楽を聞いて、「うわあ、やったなあ、やったなあ」と泣きながら見ていた。

何か見る前に言葉にしてみた

数日前から『「好き」を言語化する技術』という本を読んでいる。
サブタイトルの「推しの素晴らしさを語りたいのに『やばい!』しか出てこない」には納得してしまった。
この本に書かれている具体的な文章術は一朝一夕に身につくものではなさそうだけど、とりあえず、「感想を文章にする前にSNSを見て、他人の言語に頼ってしまわない」というところには共感した。
面白い作品をより面白く、つまらない作品もつまらなさをかみしめるという意味で面白くしてくれるのがSNSだ。
これをやってしまうと、自分の感想、自分の言葉が消えてしまう。
そうなる前に、この作品の感想を書いておきたかった。

長々と、私の映画感想文を読んでいただきありがとうございました。
よかったら『室町無頼』を見てください。




いいなと思ったら応援しよう!

たか
よろしければサポートお願いします。いただいたサポートはふるさとを盛り上げるための活動費に使わせていただきます。

この記事が参加している募集