田中京子

京都市在住のフリーライター。「上阪徹のブックライター塾」10期生。元朝日新聞記者。大阪生活文化部で記事を書いていました。喫茶店、銭湯、書店によく出没します。猫2匹。お仕事のご依頼はDMでお願いします。

田中京子

京都市在住のフリーライター。「上阪徹のブックライター塾」10期生。元朝日新聞記者。大阪生活文化部で記事を書いていました。喫茶店、銭湯、書店によく出没します。猫2匹。お仕事のご依頼はDMでお願いします。

最近の記事

【京都】勝新太郎の映画「不知火検校」を見てあの場所に行ってみた。

フリーライターになって半年以上たった。会社に行くわけではなく、非社交的な性格なので、気づくと家にこもったまま。あかんあかん、ちょっとは外出しないと。そんな時、ふらっと足を運ぶのは京都文化博物館だ。500円でフィルムシアターの映画を見る。最近見た中では勝新太郎の「不知火検校(しらぬいけんぎょう)」が良かった。映画を見て、そういえば、と京都のある場所に足を運んでみた。 ※以下、作品のネタバレを含みます 「不知火検校」は、「座頭市」シリーズの勝新太郎がブレイクするきっかけになった

    • 【東京】出張のついでに戸越銀座へ。天然黒湯温泉につかり、江戸っ子だった父を思い出す。

      私は京都に住んでいるが、たまに東京まで「出稼ぎ」に出かける。ライターの仕事で取材や営業をするためである。猫がいるので、いつも日帰りだが、この日は戸越銀座の銭湯に寄って帰った。ブックカフェで故・杉浦日向子さんの『入浴の女王』を読み、無性に東京の銭湯に浸かりたくなったのだ。『入浴の女王』には「中の湯」として紹介されているが、現在は「戸越銀座温泉」という名前に変わっていた。 出発は五反田駅。本来なら、戸越銀座まで東急池上線に乗るのだが、方向音痴の私は池上線のホームがわからず、五反

      • 【京都】どこの誰かは知らないけれど。お寺に現れ、猫に愛されるサムライ。

        人は噂を好むもの。京都人とて例外ではない。私は最近、知人とある男性の噂で盛り上がった。その男性は時々、京都の小さなお寺に姿を見せる。長髪で物静かだが、時代にそぐわない不思議な雰囲気を醸し出している。私たちは「もしかすると現代の世に生きるサムライなのでは?」と推測しているが、真相はわからない。 サムライ氏の名前はわからないが、S氏としておく(サムライのS)。 氏は50代にも、60代にも見える。私はお寺の境内で氏を見かけた時、「喋れない人なのだろうか」と思った。それぐらい言葉を

        • 【京都】東寺の近くで育った私。五重塔とストリップ劇場があるまち。

          私は京都にある世界遺産・東寺の近くで育った。高さ約55メートルの五重塔は新幹線の南窓からもよく見える。こう書くと、いかにも「ザ・京都人」という感じだが、このあたりは京都市の中心部から離れており、大学生まで「東寺の近くに住んでいます」というのが恥ずかしくて仕方なかった。東側に「DX東寺劇場」という有名なストリップ劇場があり、「東寺」と口にした瞬間、そちらを連想される方が結構いらっしゃったのである。7月の弘法市の日、ふと懐かしくなって東寺を訪ねた。 ※DX東寺劇場の写真はありませ

        • 【京都】勝新太郎の映画「不知火検校」を見てあの場所に行ってみた。

        • 【東京】出張のついでに戸越銀座へ。天然黒湯温泉につかり、江戸っ子だった父を思い出す。

        • 【京都】どこの誰かは知らないけれど。お寺に現れ、猫に愛されるサムライ。

        • 【京都】東寺の近くで育った私。五重塔とストリップ劇場があるまち。

          【京都】純喫茶ブーム。おっちゃんがたまるレトロな喫茶店もいいもんですよ。

          若い人の間で「純喫茶」がブームだという。レトロな内装や、クリームソーダ、ナポリタンなどの定番メニューが受けているようだ。もともとカフェより喫茶店が好きな私は、「ようやく、この良さがわかったかい? お若いの。ふっふっふ」とドヤっているのだが、京都にはもう一つ、「おっちゃん喫茶」とでも名づけたいジャンルの喫茶店が存在する。別におっちゃんだけが来店するわけではないのだが、そこはかとなく、ゆるい楽園ぽさがあって、そこが何とも好ましい。私が勝手に、おっちゃん喫茶のレジェンドだと考えてい

          【京都】純喫茶ブーム。おっちゃんがたまるレトロな喫茶店もいいもんですよ。

          アフロ記者・稲垣えみ子先輩の『家事か地獄か』を読む。ずぼらな私も共感。

          アフロヘアーがトレードマークの元朝日新聞記者、稲垣えみ子さんの本『家事か地獄か』(マガジンハウス)が出た。稲垣さんは、私が新聞記者だった頃の先輩である。私たちは2016年に朝日新聞社を辞めた。稲垣さんは東京で、夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしのフリーランス生活をおくっている。私は京都暮らしで、息子の独立を機にライター生活を始めた。稲垣さんとはタイプが全く違うため、別世界の人のように感じていたが、本を読むと似たところもあって興味深かった。 ※一部、本の内容に触れる部分が

          アフロ記者・稲垣えみ子先輩の『家事か地獄か』を読む。ずぼらな私も共感。

          話題の映画「怪物」を見て、私の中の「悪」に思いをはせた。

          是枝裕和監督の映画「怪物」を見た。第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した作品だ。テレビドラマで多くのヒット作を生んだ坂元裕二が脚本を手がけ、音楽は坂本龍一が担当した。黒澤明の「羅生門」を思わせる多視点構造、子どものクィア性に関わる描写など、様々な所で話題になっている。私の心に強く焼きつけられたのは、誰もが心に「悪」を持っていること、だから「赦し」が大きな意味を持つということであった。 ※以下、作品のネタバレを含みます 映画は、クリーニング店で働くシング

          話題の映画「怪物」を見て、私の中の「悪」に思いをはせた。

          人生の秋を迎えた今考える。私はなぜ、女に生まれたのだろう。

          以前から考え続けていることがある。私はなぜ、女に生まれたのだろう。女に生まれてよかった、と思ったことは一度もないし、自分が女であることは重荷でしかない。そうかと言って、自分の体を男に変えてしまえば、はい、問題解決! というような話でもないのである。何だろうなあ。この、自分の性別を肯定できない感じ。人生の秋、更年期を迎えた今、ここまで自分が女をこじらせてしまった理由を考えた。(写真は京都府立植物園ですが、今回の文章とは関係ありません) 自分の性別について初めて考えたのは、幼稚

          人生の秋を迎えた今考える。私はなぜ、女に生まれたのだろう。

          【京都】琵琶湖疏水④ 哲学の道でキジトラと一期一会の出会い。信じるとはニャニか?

          琵琶湖疏水を歩くシリーズ4回目。今回は哲学の道である。熊野若王子神社のあたりから銀閣寺の方まで続く約2kmの道だ。哲学者で京都大学教授の西田幾多郎氏(1870~1945)が、この道を歩きながら思索に耽っておられたことが名の由来だという。凡人ゆえに悩みが尽きない私でも、歩くと何かの答えが見つかるだろうか。期待を胸に東天王町のバス停から歩き始めた。 熊野若王子神社は、京都三熊野のひとつである。残りのふたつは、新熊野神社、熊野神社。いずれも後白河法皇ゆかりの、歴史ある神社だ。背後

          【京都】琵琶湖疏水④ 哲学の道でキジトラと一期一会の出会い。信じるとはニャニか?

          【京都】琵琶湖疏水③ 蹴上駅から南禅寺。レンガ萌え。ないないづくしで文を書く。

          琵琶湖疏水を歩くシリーズ3回目。今回は蹴上かいわいである。歩いてわかったことだが、私は本当に体力がない。おまけに暑さに弱い。なぜ、夏に歩く企画なんて思いついてしまったのか。自分のバカヤロウ! と毒づきたい思いを抑えて、台風がこないうちにと、8月31日、蹴上を訪れた。この日、京都の最高気温は36.1度。私の両足の甲は茶色く焼け、サンダルの白い跡がT字型にくっきり残った。 地下鉄の蹴上駅で降り、三条通へ。空は晴れ、雨が降る前のもわっとした蒸し暑さがたちこめる。西に進むと、すぐ、

          【京都】琵琶湖疏水③ 蹴上駅から南禅寺。レンガ萌え。ないないづくしで文を書く。

          【滋賀・京都】琵琶湖疏水② 大津から山科疏水を歩く。もう紅葉? 涼しい季節が待ち遠しい。

          明治時代、琵琶湖から京都に水をひくためつくられた琵琶湖疏水。第1トンネル出口を出てから日ノ岡まで、全長約4kmの区間を山科疏水という。疏水沿いに遊歩道がつくられ、自然あり、寺院あり、散策にぴったりである。普段は犬を連れた人やジョギングする人とすれ違うぐらいで、とても静かな道だ。ヤマザクラを中心に約660本の桜並木が続く。紅葉の季節も素晴らしいに違いない。行ってみよう。 琵琶湖疏水は取水口から水をとりいれ、三井寺の近くで第1トンネルに入る。今回は、京阪追分駅から、第1トンネル

          【滋賀・京都】琵琶湖疏水② 大津から山科疏水を歩く。もう紅葉? 涼しい季節が待ち遠しい。

          【滋賀】琵琶湖疏水① 取水口から三井寺へ。境内の広さにびっくり! もっと時間があればなあ。

          お盆を過ぎ、ほっとするような涼しい風が吹く。夜になるとコオロギが鳴き、秋が近づいているのを感じる。新涼。本格的な秋になったら、琵琶湖疏水をたどって散策しよう。桜に紅葉、蹴上インクライン、南禅寺の水路閣など、見所がいっぱいある。手はじめに、琵琶湖から疏水に水を取り入れる取水口から、近くにある三井寺(長等山園城寺)に回ることにした。 琵琶湖疏水は、明治維新による東京遷都の後、第3代京都府知事の北垣国道が京都の活性化のために計画した。明治18年に着工し、5年後に大津から鴨川合流点

          【滋賀】琵琶湖疏水① 取水口から三井寺へ。境内の広さにびっくり! もっと時間があればなあ。

          【京都】大文字山に登って女子トーク。50代になっても、心は乙女なのさ。

          送り火で有名な京都の大文字山は、気軽なハイキングコースとして知られている。幼稚園の遠足で訪れた話もよく聞く。日頃運動をしない私だが、園児が登れる山なら大丈夫ではないか。送り火を見るだけでは物足りない。「大」の炎がともされる場所を、ぜひ近くで見たい。銀閣寺道から千人塚を通り、火床を目指すコースを友達と登ってみた。  大文字山は標高465.3メートル。銀閣寺道のほか、鹿ケ谷、蹴上、山科、三井寺などから登ることができる。私たちが行くコースだと、1時間もあれば送り火の舞台となる火床

          【京都】大文字山に登って女子トーク。50代になっても、心は乙女なのさ。

          【京都】暑い…。嵐山の大悲閣千光寺で木々と川の水、絶景に癒される。

          暑い。私は暑さに弱い。毎日、エアコンを効かせた部屋にしがみついているうちに、気分まで滅入ってきた。五感が鈍くなったような気がする。どこか涼しい所に行って気分転換しようと、4年前に知人と訪れた嵐山の大悲閣千光寺を再訪した。観光地に近いのに静かで、川の水と木々のおかげで涼しかったのを思い出した。 嵐山は、いわずとしれた観光地。渡月橋、竹林の小径、天龍寺、野宮神社など見所がいっぱいある。大悲閣千光寺は、安土桃山から江戸時代初期の豪商、角倉了以が、大堰川を開削する工事で亡くなった人

          【京都】暑い…。嵐山の大悲閣千光寺で木々と川の水、絶景に癒される。

          【京都】【祇園祭】昭和30年まで山鉾が巡行した寺町通と松原通を歩いてみた

          京都は祇園祭の季節。今年は3年ぶりに山鉾巡行があるので、まちはカメラやスマホで撮影を楽しむ人たちで大賑わいだ。ところで、この山鉾巡行、お年寄りから「昔は松原通を巡行してたんや」と聞くことが多い。昭和31年、観光推進などを目的にコースを変更したが、それまでは松原通を巡行していたのだ。昔の祇園祭の雰囲気を味わいたくなり、昭和30年以前の巡行経路にあたる寺町通と松原通を歩いてみた。 現在の祇園祭の山鉾巡行(前祭)の巡行経路は、四条烏丸→四条通を東へ→四条河原町を左折→河原町通を北

          【京都】【祇園祭】昭和30年まで山鉾が巡行した寺町通と松原通を歩いてみた

          川端康成の「千羽鶴」を再読。お茶を習うことで自分に現れた変化。

          8年前からお茶を習っている。いつもお点前を間違えて自己嫌悪に陥るし、長時間正座すると膝が割れそうだ。お稽古さぼりたいと思いながら本棚を整理していて、川端康成の「千羽鶴」を2冊も見つけた。お茶に関係する小説なので読んだものの、忘れてもう1冊買ったらしい。再読すると、自分の感覚が8年間で大きく変化したのを感じた。 「千羽鶴」は、昭和24年から26年にかけて発表された小説である。川端康成の戦後の代表作の一つで、志野茶碗(白釉を使った茶碗)が呼び起こす官能的な感覚、愛欲、死の世界が描

          川端康成の「千羽鶴」を再読。お茶を習うことで自分に現れた変化。