#3.ゴーヤのきんぴら。

夏になるとゴーヤが安くなる。チャンプルーが有名な調理法だが、苦味を楽しめるのならば、薄く切ってお浸しにするのも、爽やかで良い。私が好きなのは「きんぴら」にすることだ。この料理は、私の長い自炊生活の中で偶発的に生まれた、奇跡のレシピである。飲食店主の母をも唸らせた、夏の定番メニューだ。ちなみに保存もきき、野菜不足になりがちな独り身にとって、雑に不足する栄養を補える便利さもある。さらに安い。

ゴーヤを一本、縦に半分に割ってワタを取り、全て5ミリ厚ほどに切る。次にピーマンを3〜4個(一袋)程度、こちらも種を取って5ミリ幅ほどに切る。ここで重要なのはピーマンを切る方向である。TVの栄養士などは繊維方向に切ると栄養価が高いというが、むしろ垂直に、繊維を断ち切るように切る方が舌触りが良くなる。これは中華料理の巨匠、陳 建一氏の動画で学んだことだ。そして次の食材が、安い竹輪である。安くなければならない。主役のゴーヤを邪魔しない為である。4本100円ぐらいのものがいい。竹輪も全て5ミリの輪切りにする。これで下拵えは完了する。この、ゴーヤ、ピーマン、竹輪の3要素が必須だが、アレンジで蓮根の追加だけなら許される。その時は、同様に一口サイズ、5ミリ厚で切ること。

この調理では、ゴーヤを水に晒してはいけない(水に晒すと苦味が抜けるが、このレシピでは苦味を残さねばならないためだ。蓮根だけはアク抜きのため水に晒していい)。

フライパンに胡麻油を垂らし、火の通りにくいものから炒める。蓮根を入れる場合は蓮根から、入れない場合はゴーヤから炒める。ゴーヤを投入したら、青臭さを消すために酒を軽くかけて炒めていく。ある程度日が通ったら、ピーマンと竹輪を投入し、醤油と味醂をかけて一気に炒める。ピーマンが少ししんなりしとし、ゴーヤの表面に薄く調味料が染み込んでいる程度に熱が通ったら、火を止めて、最後に少しだけごま油で風味づけをする。そして粗熱を取り、白胡麻を振りかける。

出来上がってすぐに食べてはいけない。この料理は、熱いまま食べても美味しくない(おそらく、味があまりしないはずである)。粗熱をとった後、さらに冷蔵庫で一晩寝かせると、味が染み込み、こなれて、各食材が調和し、食するにベストな状態になる。

食べてみると、厚めに切ったゴーヤの歯切れの良さが大変心地よく、強めに残した苦味がピーマンの甘味を引き立て、調和する。ゴーヤを水に晒さなかった理由がここにある。もし水に晒してしまうと、ゴーヤの苦味が足りず、甘ったるい味になってしまうのだ。爽やかな苦味と甘さの調和の中で、竹輪の食べ応えが、料理全体に満足感をもたらす。単純だが完成度が高い。蓮根を追加した場合は、さらにシャクっとした歯応えが加わって、食べるのが楽しく、止まらなくなる。

個人的には、チャンプルーよりも手軽にゴーヤを美味しく食べられると思っている。ゴーヤの苦味は癌予防にも良いらしいので、このレシピを見た方はぜひ試して欲しいと思う。

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