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季節を、感じるーーー【東京季語譚訪】

ほんの少し、周りの全てに目を向けて。
風の香り、花の色、鳥の声に気づき、心に刻む時間を、大切にしたいと思っているこの頃です。

少し風も優しくなって、
夕焼けがより綺麗になってきました

夏の終わり、少しずつ朝夕の風が涼しくなってきました。
赤とんぼを見かけることも増えてきました。
まだまだ暑い日が続きますが、それでも確実に、季節は巡っています。

幼い頃から、その移ろいを感じることが大好きでしたが、
椎橋寛先生の漫画『東京季語譚訪』に出会って、その思いがより深まりました。

季語の世界を描いた、優しい作品

主人公の、感受性が高い青年・青蛙(せいあ)は、謎めいた男性と出会ったことにより、不思議な力がさらに開花していきます。
それは、『季語を”視る”力』です。
季節を表す言葉である”季語”が、身の回りで共に生きているさまを視ることができるのです。
物語の根底には、季節の移り変わりの爽快感や寂しさ、そして懐かしい思い出と共に感じる優しさがあります。
そして、”人ならざるもの”に対する敬意も描かれています。
人が操ることのできない季節の力と素晴らしさが、一コマ一コマに繊細に紡がれているのです。

青蛙くんが大好きな夏をメインに、
美しく季節が過ぎていきます

主人公と私の共通点

初めて作品を読んだとき、私は涙が止まりませんでした。
青蛙くんが抱えている思いに、深く共感したからです。
青蛙くんは幼い頃、一人で遊ぶことが多く、夏休みの思い出といえば本屋さん、そして、自転車で知らない街へ漕ぎ出すことが彼にとっては”冒険”だったといいます。

自転車で知らない街へーーー
どんどん漕ぎ出してーーー
ボクの知らない世界がこんなに広がっているってワクワクしたっけ

今思えば
何でもない ただの住宅街がボクの「冒険」のダンジョンだった
草や石にも意味があり
ただの雑木林が「魔境」だった

『東京季語譚訪』1話 青蛙くんの回想より

私もそうだったのです。
思えば、物心ついた頃から、一人の時間を大切にしていました。
友達と遊ぶのも好きでしたが、
一人で図書館や本屋さんに行くことも、
水筒を持っていろんな道を辿り、どこに通じているのかとワクワクしながら進んでいくことも、大切な喜びの時間でした。

京都に住んでいても“道好き”は変わらず。
この道はどこに繋がっているのか、
ワクワクしませんか?
これはお店ですが…、
こんな感じの狭い裏路地みたいな道も大好きです。


青蛙くんが、とある出来事に巻き込まれて3年間眠り続けていたというのも、8年間寝込み続けていた私と通じるものがあります。

この漫画が連載されていた当時、私はまさに寝込んでいる最中で、人生に絶望していました。
でも、たとえ漫画の世界の中であっても、私と似ている人がいる。
そして彼が、双子の姉や初夏の季語・木下闇に支えられながら、自分が見ている世界を捉え、季語たちと交流し、自分にできることを模索していくのを読んで…。
こんなに素敵な物語があることが嬉しくて、泣いてしまったのでした。

木下闇とは、茂った木立の下にできる薄暗さのことです


それまで私は、「人と違うから嫌われたんだ、失敗したんだ」と思っていました。
自分が変だからうまくいかないんだと思ってきました。
でも、この漫画を読んで……、「これでいいんだ」と思えました
人と違う感性があるからこそ、生きづらいことも多いけれど、
違うからこそ、できることがあるのではないかと考えることができました。
あの辛い時期、それでも何とか生きていくことができたのは、『東京季語譚訪』のおかげだったのです。

木下闇は三夏の季語なので、
5月から8月まで使える息の長い季語です

季節とともに生きる

それからも、色んなことがありました。
どうしても、「普通じゃない」と思われることが怖くて、普通のフリをして。
演じきれなくてまた寝込んで、それでも前を向こうともがいてきました。

時々、果たして自分は前に進めているのだろうか?と不安になることも多いです。
でも、その度に、季節を感じるのです。

寒さの中でも梅の花が開けば、少しずつ春が近づいている。

曇天に咲く春の先駆け

梅雨の中、ひときわ大きく雷が轟けば、輝くような夏がやってくる。

太陽に咲くサルスベリ

木々の葉っぱの色が変われば、金木犀が香る秋になる。

優しい香りが懐かしい


そして、鋼色の雲が空を覆えば、雪がふわりと舞い降りてくる。

冬の花たちに降る雪


一瞬の変化も、ほんの少しずつ変わっていくものも。
確実に世界は、私は進み、成長している。
それらを知覚することが、知覚できることが、私はとても嬉しいと感じます。

X(Twitter)で、ほぼ毎日暦生活さんの記事の感想を短歌にしてポストしているのも、季節の移り変わりを感じ、生きていることを実感したい、という思いがあるからです。


そしてその気持ち……、自然のことが大好きな自分の気持ちを発信できるようになったのは、『東京季語譚訪』の、青蛙くんのおかげなのです。

そして、また外へ

少しのお休み期間を経た私は、そろそろまた社会の中へと飛び立とうと思っています。
まだまだ体調が悪く、不安もたくさんあります。
でも、たくさんの方に背中を押していただき……、『東京季語譚訪』のことを思い出して、「自分らしく生きていこう」と思えました。
普通とは感性がちょっと違う私。
それでもきっと、青蛙くんのように、できることが見つかるはずと信じて。
今度は普通のフリをしすぎるのではなく、私らしさも混ぜながら、進んでいきたいと思います。

青蛙くん、季語の皆さん、
そして、彼らを生み出してくださった椎橋寛先生。
本当にありがとうございました!!


おまけ

椎橋寛先生が現在連載されている『岩元先輩ノ推薦』も、「人と違うことによる弱さや儚さ」を優しく包み込んでくれる、おすすめの作品です。
現在、1巻分無料で読むことができますので、ぜひ読んでみてください!

PVはこちら。(福山潤さん、ファイルーズあいさんが主演です!)

私もにぎやかしで作品の魅力を記事にしています!!


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朝日みう
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