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世界で進む「ニューロダイバシティ」
column vol.833
昨日は、「マッチョ×介護」「サッカー×農業」など、働き方の多様性をご紹介させていただきましたが
「多様性」ということで言えば、最近、日本でも注目されてきているのが「ニューロダイバシティ」でしょう。
ニューロ(Neuro)とは「脳・神経」という意味なので、ニューロダイバシティとは「脳の多様性」ということ。
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)など、発達障がいを神経や脳の違いを「個性」と捉える概念です。
今年の4月に経済産業省のWebサイトでも推進についてのメッセージが発信されました。
〈経済産業省Webサイト〉
「障がい」ではなく「長所」と捉える
「個性」と捉えるのは、もちろん平等な社会の実現ということもありますが、発達障がいと言われている特性は、実は一般的な人に比べて「有能」な面も持っています。
例えば、自閉症の方は高い集中力と分析的思考能力をもっていてIT能力が高いことが多いと言われています。
AI開発に必要な反復作業に長時間取り組んだり、論理的推論を活かしてAIモデルの開発やテストに取り組むことに優れているのです。
ちなみに、モーツァルトやアインシュタイン、トーマス・エジソン、レオナルド・ダ・ヴィンチなどの偉人たちは、現代であれば自閉症と診断されていただろうと指摘されています。
現在ご活躍の方で言えば、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツさんも自閉症的な傾向があるそうです。
ですから、マイクロソフトを始め、IBMやHPE、デル・テクノロジーズなどIT関連の企業はこぞってニューロダイバシティ採用を進めています。
特に注目しているのが「Google」です。
スタンフォード大学のニューロダイバーシティ研究者とともに、自閉症の当事者を対象とした採用プログラムを構築。
これまでの採用プロセスでは、候補者に公平なチャンスを与えられていなかったとし、特性を考慮した面接時間の延長、事前質問の提供、口頭ではなく書面による面接の実施などを行っています。
他にも同僚となる社員の理解を深めるため、自閉症に関するトレーニングの実施や採用後の継続的なサポートを通して、ニューロダイバーシティの実現を目指しているのです。
未活躍による損失額「2兆3000億円」
日本でもヤフー株式会社などではニューロダイバーシティを積極的に推進しています。
採用した発達障がい者の9割の方はアプリテスターとして働いているのですが、誰も想定できなかったようなバグを発見するなど活躍を見せているそうです。
また、先述のハードウェアの製造・開発を行うHPEはニューロダイバーシティ人材がいるチームを構成したことで、他のチームより30%高い結果を出したことを発表しています。
ニューロダイバーシティ人材が優れている点は、前述のような高い集中力だけではなく、自閉症の人の多くはパターン志向があり、細部までこだわる性格をもっています。
注意欠如・多動症であるADHDの人にも特徴があり、発想力に富み、アイデアが豊富な人が多いのです。
そして、好奇心旺盛で新しいことにもチャレンジし、決断力も早い傾向もあります。
特性を活かして適材適所の配置をすればニューロダイバーシティ人材は立派な戦力になる。
一方で、我が国は世界に比べてこの分野の理解が遅れており、2021年3月野村総合研究所が行った調査結果によると、日本で未活躍であることの損失額は2兆3000億円であると推計されています…
ちなみに、日本で発達障害と診断された人は全部で48万人。
診断を受けていない人を合わせると人数はもっと大きくなるでしょう…
日本橋から「標準」を変えていく
最近のトピックと言えば「日本橋ニューロダイバーシティ宣言」が挙げられます。
〈日本橋ニューロダイバーシティプロジェクトWebサイト〉
「人それぞれ異なる特性を尊重して、多様性の違いを社会で生かそう」という考え方を広げるための取り組みで、2022年10月10日「世界メンタルヘルスデー」に発足。
企画・運営は「武田薬品工業株式会社」。
そこに賛同企業・団体として、花王株式会社、株式会社クマヒラ、株式会社コネル、株式会社スマサポ、非営利組織DiODEN、株式会社テラスカイ、株式会社日本水道設計社、野村ホールディングス株式会社、株式会社voice and peace、三井不動産株式会社、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)が加わっています。
〈PRTIMES / 2022年10月13日〉
古くは五街道の起点でもあった日本橋から、全国へと「ニューロダイバーシティ」が日本のスタンダードになる象徴的なプロジェクトとして発足し、効果的な啓発を行いながら、全国に活動を周知していくことを目指しています。
具体的には3つの活動を実施。
①発達障害のある人に対するインクルーシブな社会的土壌の創出
②発達障害のある人との相互理解を促進するツールの配布
③ワークショップなどの啓発活動の企画・主催
ちなみに、メディアでも取り上げられており、ハフポストの記事を共有させていただきます。
〈HUFFPOST / 2022年11月11日〉
ニューロダイバシティは硬直化した従来の組織をほぐし、イノベーションを引き起こしていくことはもちろん、今後の労働人口減少への光を射す取り組みでもあります。
日本は、そもそもジェンダーギャップ指数においても156か国中120位(2020年調査)と遅れをとっております…
国籍、人種、宗教、性別、年齢、そして「脳の個性」など、多様性をどのように組織として力に変えていくかが、とても重要なポイントとなっていくでしょう。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
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