通勤は波のように激しく私を飲み込む

朝起きて支度をし、会社へ向かう。  
道中、波のように押し寄せる人の流れに身を任せ、逆らわずに進む。押し戻されそうな感覚を抱きながらも、ただ従うしかない。  
扉をくぐると、乗客たちはまるで缶詰の中の魚のように押し込まれ、互いの肌が擦れ合う。  
夏場だから最悪だ。  
ツンと漂う加齢臭、汗の臭いを掻き消そうと霧吹きのように撒かれた強い香水。それらが混ざり合う箱の中に閉じ込められるのは、正直しんどい。  
人混みが苦手なうえに、香りの暴力。やっぱり通勤手段を変えたほうがいいかもしれない。  
ようやく乗り物を降り、流れに押されるように歩き出す。できるだけ逆らわないように、周囲の波に身を任せる。  
少し歩いて人がまばらになった頃にいつも思う。  
あれだけの人がいるなら、その上をサーフィンのように進んだ方が速いんじゃないか、と。  
そんなことを考えているうちに、定時10分前にタイムカードを切る。  
「おはようございます。今日も頑張りましょう。」  
そう挨拶して、私は仕事を始める。

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