お笑いの話。17話。
「ちょ!その肉焦げてない?焼きすぎじゃない?」
楽屋の先輩と価格がリーズナブルなお店。焼き肉店にいた。
焦げてません。焼きすぎてません。
「いや、今だって。そのぐらいがちょうどいい焼き加減だって」
「脂が多い肉は火がぶわってなって焼きすぎてしまうから気を付けな」
「ネギ塩ひっくり返したらもったいないって」
「え、今キムチ食べる。キムチの辛みで焼き肉が辛くならない?」
「辛い味にならない。味わからなくならない」
「後、野菜も食べなって」
このやり取りが30分以上続いていた。
ちょ!先輩!さっきからなんなんですか!
焼き肉大臣ですか!焼き肉奉行ですか!
こっちのタイミングでいいじゃないですか!
あーだこーだ言われながら食べる焼き肉は美味しくないって。味しませんって!
そんなん言われたら誰でも不機嫌になりますって。
後、何ですか。こっちからそっちがわ。そっちからはこっちがわっていう焼き肉の網の範囲。
どうでもいいじゃないですか。
ポカーンとするなー。
呆気にとられるなー。
「す、すまん。ついベストなタイミングな美味しさ教えようと思って」
ベストなタイミングは人それぞれです。
「そ、そうだな。そんなに怒るなよ」
「すまんって」
「怒ると結構怖いね」
「そう見えなかったから」
それよりクーポン券の先輩とは仲直りしましたか?
「クーポン券の先輩?」
「ああ、あの話しか」
「あれから会ってない」
「というか売れてるからなー」
「テレビやラジオが忙しくて劇場ライブに来ようとしても来れないのかもな」
この前、いましたよ。
「マジで!いつ?」
先輩が支配人に注意された日です。
「え、教えてくれたら良かったのに」
先輩より先に来てたから時間が合わなかっただけじゃないですか。
「そうか」
「でもなー。謝るっていってもなんだかなー」
そんな子供みたいなこと言わないでくださいよ。
先輩がギクシャクしてると後輩も気を使いますから。
「そうだよなー。頭ではわかってるけどなー」
そんなに苦手な人ですか?
「いや、苦手というか」
「前は良く飯に連れってもらったりしてたけど」
「けどなー」
けど?
「芸人ってなぜかわからないけど急に売れる人っていない?」
いや、まだ事務所所属したばかりで良くわかりません。
「急に売れる人っていてな」
「その一人がクーポン券の先輩でなー」
「売れはじめてから調子に乗るようになって」
「前はあんな態度でかくなかったのに急に変わって」
「もう、お笑いの天下は取ったー!見たいな顔してて」
「そこから苦手になってな」
あー。なるほど。あるあるですね。
そういう人って本当にいるんですね。
「そうなんだよー。あるあるなんだよー」
「だからなー。苦手なんだよー」
「ていう話し」
「あ、そうだ。この前の割り勘の代金いくらだっけ?」
先輩がおごるって言ってクーポン券が使えなくて割り勘になった時の事ですか?
「それをいうなってー。さりげなく傷つくから」
「さりげなく傷つく」
「さり傷だから」
そんな、すり傷みたいに言わないでください。
いや、いいですよ。
「え、何で?」
いや、いいですって。
「いやいやいや、何で?」
それってクーポン券の先輩が多めに渡した差額の金額ですよね?
「え、何でわかったの?もしかして超能力!」
そうです。超能力です。
て。なんでやー。
あの場所にいれば誰だっておおよそなんとなくわかるでしょ。
「そうか。そうだよな」
「じゃあさ、その分もっと頼めって!」
「シャトーブリアン頼んじゃう?」
「なんつって」
「今日は祭りだ祭りだ!焼き肉祭りだ!」
先輩。頼みすぎてまた割り勘になりませんか。
「それはない」