江戸時代後期に建てられた土蔵に潜入!
我々宇宙人1号と2号は将来安心してのびのび暮らしたいと、何でも揃った便利な都会生活から自給自足の生活をする静かな田舎への移住を目指し、その予行演習で長野県塩尻市と辰野町にある『たのめの里』に滞在中。『たのめの里』で生まれ育った友人が住んでいる古民家には敷地内に立派な土蔵もある。どちらも江戸時代後期に建てられたものだという。
土蔵…蔵…
「くら」と言えば・・・
『やぁ、クラさんだよ!』
いやいや、そのクラではない。
『100人乗っても大丈夫!』で有名な物置や倉庫なら色々な場所で何度も入った経験がある。しかし、蔵、しかも土蔵は友人宅を訪れるまで実際に目にしたことがなかった。外観そのものが『ザ・日本』『日本昔話』的な独特な雰囲気を漂わせていて、とても興味がそそられる。
友人は時々、母屋を出て土蔵へ向かい、しばらくすると何かを携えて出てくる。
蔵の中に一体何が?
入ってみたい。
RPGのダンジョン突入くらいの仕掛けが我々を待ち受けているのだろうか。
そう思っていると、ある日友人から我々に一つのクエストが。
『蔵が暗いので、出入りする時のために照明器具を設置したい』
おぉ!これはチャンス!
母屋からコードを引っ張ってきて、蔵の入口(内側)に照明を設置するために内部を確認せねばならぬ。土蔵に潜入する立派な口実ができたではないか。
かくして宇宙人1号と2号は喜び勇んでスマホとカメラを携えて友人が指差す方向にある土蔵へと向かったのであった。
カメラ片手に息を弾ませる我々宇宙人の目前で、
ゴゴゴーーーと音を立てて遂にその扉が開かれた。
祝㊗️土蔵初潜入。
まずは宇宙人1号が、次いで2号が土蔵の中へと進む。
友人にとってはいつもの暗い蔵への一歩だが、
我々宇宙人にとっては歴史的な一歩である。
おぉ!
薄暗い土蔵に入った瞬間からドラクエのBGMが脳内で流れ出す。
蔵の内部を案内すべく先頭を進む友人の目の前にドーンと板壁が現れたからだ。
一、二、三、四、五、六、七、八
一、二、三、四、五、六、七、八
下から順に1から8までの数字が並んでいる。
それが2列。
しかも右側の列の『四』の字は他の字に比べてグダグダな感じである。
(八と書き始めて、四を書かなければならない事に気づいて無理矢理修正して四っぽくした結果だろうか?)
ギミックを前にして
おぉ〜!と写真を撮りまくる宇宙人らをよそに
友人はオモムロに左側の列の『五』に手をかけた。
『五』には取手のようなものが付いており、友人はこれを掴んで手前に引いた。
すると、いとも簡単に『五』が開いた。
次いで、『四』、それから、『三』
一番下の『一』は……
全ての板を外すと、そこには米袋がたくさん積まれていた。
お宝発見である。
友人の説明によると、農薬を一切使用せず栽培している米を収穫後、昔ながらの『稲架掛け・天日干しでゆっくりと自然乾燥させて』から、籾の状態で袋に入れる。この土蔵で保管することにより、『最適な環境で少しずつ熟成され長期間美味しさを保っている』のだそう。
米を取り出した後は、
一、二、三、四、五、六、七、八 の板を下から順に乗せて閉じる。
こうしてピッタリ閉じてしまえばネズミが入り込めず、
適度な温度と湿度が保たれたまま、
安全かつ安心して長期保管可能となるのである。
先人の知恵が現代でもこうして活用されているのは実にスバラシイ。
土蔵の中にあるのは米だけではなかった。
「サルかに合戦」を連想させるような大きな臼と杵もある。
切り出された一本の大木から作られた臼は非常に重く、
動かすとゴトンゴトンと鈍い音をさせる。
それを友人と宇宙人1号の2人がかりで転がしながら移動させた。
友人宅のこの土蔵内部は二階建てになっている。
木製の細くて急な階段の上には魔物が潜んでいるのか
はたまた宝箱があるのか。
松明ならぬオレンジ色に光る電気を持って
(長いコードを引きずりながら)
我々宇宙人は階上を目指して進んで行った。
👆この写真上部に見える棟木には
安政三年丙辰年
四月八日
と書かれている。
1856年か。
他にも明治初期のものと思われる大きめの箱や、
いつの時代かわからないけど相当古そうな道具一式など
歴史を感じさせるものがズラリ。
まるで郷土民族歴史資料館のよう。
『エクスカリパー』でもあるかと期待してみたが、
さすがにソレはなかった。
母屋の屋根裏で最近発見されたスズメバチの巣も相当な大きさで、
博物館のように展示すれば、
きっと都会から訪れる見学者がそれを見て
みんな感嘆の声をあげるだろう。
土蔵には更に入口の扉にも『へぇ〜』という秘密がある。
友人宅の土蔵には無いが、近隣の土蔵や長野市松代町で見た土蔵には分厚い土の扉がある。
その分厚くて重い一枚目の扉は防火と防水など災害に耐えるもの。
(しかしこの分厚い土の扉を修繕出来る職人はもうおらず、その扉の作り方もわからないのだそう)
土の分厚い扉を開けると、更に二重三重に扉が重なっている。
防犯用(ドロボー避け)や通常出入りするための簡易的な扉など。
あんな扉、こんな扉……
時代や地方により蔵の内部構造や使い方に差はあるが、
どれも昔々の人々の知恵が詰まった建物。
最近は蔵の入口を改造してシャッターを取り付けて車庫にしているところもある。
魔改造は現代人の新しい工夫として50年、100年後にその価値が見出されるかもしれぬ。
いずれにせよ土蔵は
『100年経っても大丈夫〜!』
将来この『たのめの里』に移住が決まり、
我々宇宙人が住める家が見つかったとき、
そこに土蔵があるといいな。
そう思いながら、今日も『たのめの里』であちこちの蔵を見て散歩している。