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たなしゅう短編小説集

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短編小説を書いています。10分くらいで読めるかと思います。ほら、移動中とか待ち合わせとか寝る前とかに読むのに丁度良いよね。スキとか感想を貰えると嬉しいです。ちょっと不思議な話。
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#お笑い

短編小説|月見布団

短編小説|月見布団

【1】「ねぇルナさん、今日さぁ僕の家で月見…しない?」

と彼氏に言われて全私が小躍りした夕暮れ。

初めて彼が自宅に誘ってくれたからだ。

あぁ良いよぉでもなんで~?と上ずってしまいそうな声を何とか抑えて冷静ないつもの私の感じで答えた。

彼は今、家にいるらしい。

付き合って3ヶ月。やっと家に呼んでくれた。何にも他意はないみたいだけれど、まだ信用されてないのかなぁとか思ってたから嬉しい。距離が

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短編小説|然りとて

短編小説|然りとて

【1】2020年1月の成人式を以て、推しのアイドル『望月あいり』は引退した。「大人になる。」と彼女は言った。

生活にアイドルは必要だ。

呼吸が深くなるから。

応援して良い対象。

日常を吹き飛ばす自分だけの光。

推しが必要なんだ。

そう、思っていた。

「どうぞ。ロイヤルミルクティーです。」

「あ、ありがとうございます。」

マスターが紅茶を持って来てくれた。

久しぶりに開いたSNS

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短編小説【瓶と紙とペン】

短編小説【瓶と紙とペン】



【1】
瓶と紙とペン

この瓶を貴方が拾い上げて、瓶から手紙を取り出してくれた時に文字が滲んでしまっていたり、濁ってしまったりしていない事を願います。

この瓶を拾い上げてくれて、ありがとう。

私の身勝手な想いと言葉の連なりにどうか、貴方の貴重な御時間を少しばかり、お譲り下さい。

この島に来たのは確か、一年ほど前ではないかと思います。

どういう経緯で私がここに来たのかは覚えておりません。

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短編小説【チロルチョコ何個分?】

【1】

「中学ん時?いやチョコなんてあげてねぇわ。ふざけんなぁ!店員さーん!ハイボールおかわりー。」

何年ぶりに会うかわからない清田育実は当時の雰囲気のまま、温度のまま、僕に言った。

髪型は陸上部の頃の短髪ではなくなっていて、長く大人っぽくなっていた。
髪型とか大人っぽくなったなぁと言う僕に、お互いもう大人なんだよと清田は言った。

飲み物は購買のコーヒー牛乳からサントリーの角ハイになってい

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