「市場ってなんだろう -自立と依存の経済学-」著:松井彰彦
自立とはなんだろうか?
この問いを市場経済から読み解こうとする本です。
自立とはどういう状態なのでしょうか?
「自立」の対義語としては「依存」があります。ですが自立の本質を考えてみるとそれは「依存」なのではないかと思います。
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依存の例として、親への依存(特に母親)が取り上げられています。
子供と母親との関係性は一本の太い命綱のようなもので、切れてしまえばそれは子供の生死に関わります。この状態が健全であるかというと決してそんなことはありません。
ただ、これだけ太く安全で(ほとんどの場合)たやすく切れることのないこの依存関係はとても居心地のいい関係であるととも言えます。
「マザコン」と揶揄されることもありますが、これだけの関係性で生死に関して困ることはないでしょう。
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一般的にいう「自立」とは、親元を離れるということを意味します。経済的にも精神的にも1人でなんとか生きていけるというのが「自立」できたという状態です。
ここで、人との関わり方という観点で見てみると「1人で」という部分に誤解が生まれます。
子供と母親の間にあった命綱を使わなくて済むようにするには、他に支えてくれる何かを見つけなくてはなりません。
しかし、世の中に親子関係以上に安心安全な関係性というものはほとんどありません。ということは、少し細い糸を何本も繋いで自分を支えることになります。
細いとは言え、命を預けていることには変わりありません。一本に込められた重さが違うだけで、生きるために必要な関係性ということに違いはないです。
つまり、依存先を増やすことによって自立していると言えるのではないでしょうか。
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近頃のノマドブームや副業ブームも結局はここにつながります。親との関係性を単に会社にすり替えただけの自立に限界がきたのです。
自ら積極的に「依存」関係を持つことで、みんなが「自立」を目指し始めたのです。
ここに目をつけたのがいわゆる「依存ビジネス」というものです。
依存先のなさに不安を覚えている人がたくさんいますが、実際その状態にあることを自覚的に理解できている人は少ないのではないでしょうか。
そうなると全時代まで依存先であった会社に替わる、新しい一本の太い依存先を求めようとしてしまいます。
結局そんなものは幻想に過ぎないので、ダメだと思ったらまた新たな依存先を求めて彷徨い続ける。でしょう。
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弱いつながりをたくさん繋げ、「自立」することは本当に難しいです。
私も、今あるつながりを大事にしながら、弱いつながりをどんどん作っていけたらと思いました。