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【デンマークのスマートシティ】良い社会には技術だけでは足りない

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

〜日本からも注目されているデンマーク〜

デンマーク、という国名を聞いた時、福祉や社会保障が充実した国、というイメージがすぐに思いつく。
しかしながら、デンマークはそれだけでは無い。

IT技術の高さはEUの中でもトップクラスで、世界的に見ても高水準だ。国をあげてテクノロジーを駆使して、交通、金融、医療、福祉、教育等のオープンイノベーションを実装する都市づくりを進めている。

日本でも、大手企業や自治体がデンマークに視察に行き、連携している現状がある。IT技術や再生可能エネルギーなどの分野で遅れをとっている日本がデンマークを参考にしているのだ。

日本よりもはるかに進み、国民の幸福度も高いデンマークから学ぶことは多いだろう。


〜デンマーク社会を支える哲学・思想〜

デンマークの町づくりは「人間中心」という考え方が基本となっている。
「国民すべてが平等な生活を送ることに価値をおく」という理念は、政府だけでなく企業や市民にも浸透している。
とある課題を解決するために、政府や企業、大学だけでなく市民も巻き込んで考える。とあるテクノロジーを、1つの企業の利益のために発展させるのではなく、「その国に暮らす人々のためにどのように活用するか」という視点で活用する。

そのためスタートアップ企業への行政からの支援も手厚いし、技術開発への援助の手も惜しまない。

教育においても、「知識ではなく対話を重視」「知識から、知恵や問題解決能力を習得する教育」が理念として人々に影響を与えており、能力の高い人々が育成される社会となっている。

本書で紹介されるデンマークの都市デザイン、オープンガバナンス、エコシステム、スマートシティ、フレームワークはいずれも優れた社会システムを構成する高い技術力に感心させられるが、その高い技術を発展・改革していく力はやはりその国を作る人々の考え方や哲学によるところが大きいのだなと思う。


〜日本人は日本人を知り日本のやり方を見つけなければいけない〜

さて、こういった海外での成功例の話があると決まって「海外ではこうしているんだから、日本でも同じことに取り組むべきだ」という人がいる。
本書を読んで、デンマークの成功例をそのまま取り入れれば良いのではないか、と思ってしまう人もいるかもしれない。

以前読んだ「日本社会の仕組み」の著者も言及しており、この本の著者も述べていることだが、文化や歴史の違う海外の仕組みをそのまま日本に持ち込んでも必ず弊害があるのだ。

制度を支えている社会的な理念や人々の考え方、文化風習を踏まえて日本版にローカライズしていかなければうまくはいかない。

前述したように、社会は、新しい技術やサービスよりも、その社会に住む人々の考え方に大きく左右されるものだと思う

デンマーク人は、税金は高いが国民はそれに不満を持たない。政府の信頼が高く、税金が何に使われているか国民が理解しているからだ。それだけ国民が政治に自主的に参加しようとする意欲が高い。

一方、日本は。不祥事も少なくない日本政府が国民から信頼されていない、という事も大きいだろうが、そもそも国民が政治に自主的に参加しようとしていないのではないだろうか。

ここからは僕の個人的な感想ではあるが、社会が悪くなると「国が失敗したからだ」「国がうまくやらないからだ」と、社会システムに自分自身が組み込まれていないかのような、外側からの意見を言うような人が多いように思う。
選挙の投票率の低さもさることながら、自分たちが暮らす社会への関心が低いように思える。
本書の著者は日本人の特性を「共生」「互助」と表現するが、そうとは思えない。「自分のやりたいようにするけど、自分だけで出来なければ他人にやって貰えば良い」というような「個人主義」と「村社会」のダメな部分だけを持ったような人が増えたように思う。

本書を読む限り、デンマークの人々は自分たちが暮らす社会に対して関心が高いのは「自分も隣人も良い生活を」という、各個人が各個人を尊重した真の「個人主義」を持っているからなのだ。

自分たちが暮らす社会の一部である自分、という意識を一人一人が持たないと、どれだけ技術が発展しようが、スマートシティという言葉が日本では夢のようにしか思えない。

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