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【ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(第3部 自信過剰)】読み進める度に自分の意思決定に自信が無くなる

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〜みんな"運"の要素を無視してしまう〜

「こうなる事は分かっていた」
こんなセリフを聞く機会は多くないだろうか?

僕はこんなセリフを聞くたびに、イライラしていた。
「わかってたんなら、先に言えよ」と。

職場の人間にもいるし、テレビのコメンテーターでもいる。それなりに頭の良い人間(のハズ)なのに、なんでこんな恥ずかしげもなく自分を大きく見せるような事を言うのか、昔からの疑問だった。

その答えの一つとして、本書の中では「後知恵バイアス」と「結果バイアス」というものが人間の意思決定には働いているのだそうだ。
いわば、後に分かったことや結果を基に、遡って物事を解釈してしまう、ということだ。
これらのバイアスが働き、他人の失敗や大企業や政府の失敗に対して前述のような恥ずかしいセリフを吐いてしまう者もいるが、これが逆に働くこともある。成功した事例についてもだ。

この第3部を語るにあたり、大前提となるのは大きな失敗も大きな成功も、本人の能力や資質に左右される面も少なからずあるが、大抵の場合、"運"の要素が強い、ということだ。

しかしながら、ある誰かの成功体験があれば、その成功へ導いた方法がさも成功への万能ツールのようにもてはやされて、メディアで取り上げられ、ビジネス本が出版され、、、となるわけだが、その成功は本人の能力というよりも"運"が良かったと考える方が妥当だという。

しかしながら、本人も含め世の中の人は「"運"が良かった」などという事は考えもしない。「成功した」という結果を基に、あらゆる理屈を肉付けして、一つのメソッドとして作り変えてしまうのだ。

〜統計よりもドラマチックな予測を〜

そして、"運"を考慮しないという点に於いては、専門家と言われる人々の未来予測にも当てはまる。

専門家が社会や経済などの未来を予測するには、彼らの様々な知識や理論が用いられる。そして、彼らは自信たっぷりに自らの知性を集約した未来予測を立てる。
しかし、本書によると、専門家の未来予測よりもいくつかの変数を組み合わせた簡単なアルゴリズムで立てた予測の方が的中率が高い、というのだ。

劇的な社会の変化を言い当てた専門家はメディアなどで重宝されるが、その変化は"運"による要素が大きい。また、アルゴリズムで立てた未来予測はつまらない内容である事が多く、ドラマチック性にも欠けるため、メディアは取り上げない。そうなると、どうしても僕らの耳に入ってくるのは「専門家が大胆な予測を的中させた」という内容ばかりになる。
これに対して、僕は以前読んだ「影響力の武器」にも書かれていた「権威」に対する影響に気をつけなければいけない、とさらに強く思うようになった。

〜経済にも影響を与える「自信過剰」のバイアス〜

さて、この第3部において、僕が1番好きなのは第24章「資本主義の原動力」だ。このあたりから、著者の皮肉めいた本性が徐々に現れてきた笑。

タイトルからも分かる通り、資本主義を進めているのはこの「自信過剰」という思考が原動力となっている、というのだ。

アメリカでは、スタートアップ企業が存続する確率は約35%だ、という本しか読まない僕でも知っているような統計データがあるが、多くの起業家はこの統計に自分が含まれるとは思っていない。本来なら、このデータを目の前にすれば起業など出来なさそうだが、様々なバイアスがかかり、このようなデータや統計は無視されてしまう。本人が非常に楽天的であるというのに加えて、自身の事業を様々な観点から見て確実に業績をあげる事が出来ると確信しているからだ。

そして、こういった起業家達の企業活動により、経済全体にとってはプラスとなる。もちろん、個人としては悪夢に違いないが。


さて、ここまでざっくりと、第3部の内容を書いてみたのだが、人が「自信過剰」に陥る原因は往々にして、事実や統計を無視してしまう点にある。しかし、これはシステム1の働きなので、僕らがこれに逆らう事は簡単な事ではない。本書を読み進めていくほど、自分の意思決定に自信が持てなくなってしまっている。

(続く)

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