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【ニュータイプの時代】新しい世界のための新しいタイプの人物像

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜安易な自己啓発本ではない〜

世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」「ビジネスの未来」に引き続き、3冊目となる山口周さんの著作。
山口周さんは非常に好きな著作家さんの1人である。「良い社会とはなんだろう?」という疑問を考えるにあたり、前2冊で新しい視点を与えてくれた。

さて、本書はタイトルから見るに「新しい時代で生き抜くために求められる人材」を語るような、よくあるビジネス系自己啓発本のように思えるかもしれないが、そうではないことを最初に述べておきたいと思う。

正直、途中まで僕もそういう本だと感じていて「ん?なんか、今まで読んだ山口周さんの本と違うなぁ」と思っていたのだが、最後まで読んだらその違和感は無くなった。

詳しく後述するが、本書は新しい社会を作るために全ての人に求められる人間像を記した一冊である。


〜ニュータイプの人物像とは?〜

さて、では、ニュータイプの人間とはどういった人物像なのか。
それを語る前に現状の社会がどういった問題を抱えているのかをまず本書の内容から確認したい。

「ビジネスの未来」でも述べていたように、山口周さんは「これまでの資本主義の役割はすでに終わりに近づいている(もしくは、終わりを迎えている)」と考えている。
かつて、まだまだ世の中にモノが少なかった時代には、大量生産しモノを作り出すことが望まれていた。モノが足りないことへの社会の不満を解消することが大量生産を善とした資本主義の姿だった。

しかし、現代においてはモノがすでに飽和している。基本的な生活に役に立つモノは、日本においてはほとんどの人が手にできるような時代となっている。生活上の不満もほとんど解消されてきた。役に立つモノを作る、という観点で言えば、もはやどの企業も同じような正解を導き出しており、モノが過剰になっている。

そんな社会においてモノに代わり価値を持つものが「意味」になってきている。
差し当たって今日を生きるのに大きな心配がない、という世の中にあっては、人々の不安や不満は「何か満たされていない」という人生における何か本質的なものに向かっている。

各人が自分の人生や仕事、生活に意味を求めるようになると、世界中で人々の価値観が様々な形をつくりだすようになる。つまりは、大衆にとっての共通の正解が無くなるのである。
そうすると、不安定、不確実、複雑、曖昧を表すVUCAという状況が世界中で進行していく。

これまで、ひとつの大きな正解に向けて動き出していた世界が、モノに満たされて意味を求めるようになったこと、VUCAが進行していくことにより、旧来資本主義の世界において正しいと考えられていた思考・行動様式が通用しなくなってくる。こうした思考・行動様式をオールドタイプ、新しい社会に適応するためアップデートされた思考・行動様式をニュータイプ、と著者は表現する。

では、ニュータイプとはどういう人物像なのか。
・正解を探すのではなく、問題を探す
・予測するのではなく、構想する
・KPIで管理するのではなく、意味を与える
・生産性を上げるのではなく、遊びを盛り込む
・ルールに従うのではなく、自らの道徳観に従う
・一つの組織に留まるのではなく、組織間を越境する
・綿密に計画するのではなく、とりあえず試す
・奪い、どくせんするのではなく、与え、共有しる
・経験に頼るのではなく、学習能力に頼る

複雑化しモノが溢れた世界においては、上記のようなニュータイプの人物像が求められる。
各詳細については、ぜひ本書を読んでいただきたい。


〜資本主義の脱構築のために人間が変わる必要性〜

さて、上記の人物像をざっと見ると
「なんだ、結局自分を鼓舞するための自己啓発本か」
と、感じる人もいるかもしれないが、前述したように、そういった類の本ではない。

山口周さんの主張のひとつは「資本主義の脱構築」である。
これは、資本主義を否定するものでは決してない。
「資本主義を否定してもどうしようもない」と山口周さんが述べているように、今の社会のシステムがダメだから別のシステムに替えようという単純な話ではない。
何か他のシステムに変えればうまくいくかも、という考え方こそ山口周さんのいうオールドタイプの人間なのである。

そうではなく、「システムと人間との関係性を問う」ことが重要なのである。
システム、いわば制度や政治がキチンと機能すれば、社会は良くなるという、「システムが主で人間が従」という考え方で、資本主義に根本的な問題があると考え続けても、何も解決しない。
「人間が主でシステムが従」と人々が考えなければ、今の暗い世界情勢を明るくすることは難しいのである。
結局のところ、どんな社会システムが構築されようが、その中にいる人間次第で良くも悪くもなるのである。
すなわち、社会システムで世の中を進歩させる時代は終焉を迎え、今後世の中を進歩させるには人間が進歩しなければいけない、ということを山口周さんは言っているのではないか、と僕は思うのだ。

そして、その進歩した人物像が山口周さんの提唱するニュータイプなのだろう。


自分のことだけを考え目先の利益に飛びつくような人間になるのではなく、社会を良い方向に進めるために自分を変える。
そういう意識をもっと多くの人が持つべきなのだろう、と僕は思う。

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