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短編小説

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一話完結から、三話くらいまでの短めの小説を集めています。
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記事一覧

【短編小説】望月パセリとつきあうということ(4/4)

 年が明けて十日ほどして、パセリの大学の版画科の展覧会があった。 パセリは裏方で忙しいよ…

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【短編小説】望月パセリとつきあうということ(3/4)

 大晦日、僕は大学近くの自分のアパートに、初めてパセリを招待した。 僕は実家に帰らないし…

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【短編小説】望月パセリとつきあうということ(2/4)

 初めてのデートは、上野の国立西洋美術館に行った。待ち合わせの上野駅、改札を出たところで…

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【短編小説】望月パセリとつきあうということ(1/4)

「いま、どこにいますか?」  ファミレスのシートに座って、メニューを開き、なにを食べるべ…

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【短編小説】 翻訳

 物心ついたときにはすでに、外国の児童文学に育ててもらっていたような気がする。  日本に…

秋ノ宮 陽菜
4週間前
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【短編小説】蜜柑

 晃一は世田谷という街が好きだ。  学芸大学駅から徒歩5分のロフト付きのアパルトマンに住…

秋ノ宮 陽菜
2か月前
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【短編小説】天空レストランの紳士(3/3)

 美味しいものを、一流のお店で奢ってもらったはずなのに、いまいち気分の弾まない帰り道だった。男だったんだ、このひとも。そう思ったら、やりきれなさでいっぱいだった。  九州の夜を想像したら、ぞっとして鳥肌が立った。明日香は車のなかで、自分の身体を抱きしめていた。  さっきと同じ歌手の曲が流れる。くたびれた。早く帰りたい。  先ほどと同じ楓の街路樹の下で、渡良瀬取締役は車を停めた。 「これ、プレゼントしようと思って。」  取締役は、МDを車から取り出した。 「最近、注目してる

【短編小説】天空レストランの紳士(2/3)

 連れて行かれたのは、街で一番高いビル。夜景の見える最上階の、眺望レストランだった。  …

秋ノ宮 陽菜
2か月前
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【短編小説】天空レストランの紳士(1/3)

 内藤明日香は、とかく老人にモテる。  どこか野暮ったいからなのか、今時じゃない感じがす…

秋ノ宮 陽菜
2か月前
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【ショート・ショート】混沌の海へ

 男と女の性差について語ることは、完全にタブー視される世の中になった。性的マイノリティー…

秋ノ宮 陽菜
3か月前
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【短編小説】エビのように、舞うように

 平日の一番陽の高い時間に、駐車場に車を止めると、渋谷真治はため息をついた。ホームセンタ…

秋ノ宮 陽菜
3か月前
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【短編小説】蜘蛛の糸

 日暮れの早い秋の終わり、ビルディングや店のショーウィンドウが一斉に夕映え色に染まる時間…

秋ノ宮 陽菜
3か月前
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【短編小説】悲しき恋のはなしなど(2/2)

 琢磨は受験大学を、東京六大学に絞ろうと決めた。勉強頑張って、ユキのことを見返してやるん…

秋ノ宮 陽菜
3か月前
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【短編小説】悲しき恋のはなしなど(1/2)

 白鷺琢磨は、昭和四十三年、芸術家の家に生まれた。  琢磨が生まれたときにはすでに、父親は上野で行われる国展に毎年出展するような、日本でも指折りの画家であった。母親は子供たちに絵を教えるための教室を開いていた。  琢磨も母の教室に参加して、絵を描いたり工作をしたりしながら幼少期を過ごした。  だれかがからかって琢磨の顔に絵の具でもつけようものなら、そいつに馬乗りになって、ごめんなさいを言うまで絶対許さない、たとえ年かさでも。  負けん気が強いくせに愛嬌もあるから、ひとを