マガジンのカバー画像

六花と父ちゃんの生きる道

15
長編連載小説『六花と父ちゃんの生きる道』を集録しています。
運営しているクリエイター

記事一覧

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第十五話(最終話) 世界は動き続ける

 父ちゃんが米の予約タイマーをセットして、それからふたり並んで歯を磨いた。こんなことも初…

秋ノ宮 陽菜
2週間前
15

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道第十四話 六花のふたつのお願い

「十一月四日、十九時に魚政予約したから―――」 早く帰ってきて、は、おかしいか。そもそも…

秋ノ宮 陽菜
2週間前
15

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第十三話 たこ焼きパーティー

 父ちゃんの気分が上々のまま、たこ焼きパーティーが始まった。父ちゃんの手さばきは、やっぱ…

秋ノ宮 陽菜
3週間前
14

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第十二話 煮込む

 机の上に置かれたレジ袋のなかに、お母さんの元カレたちが切り刻まれて入っている。ここまで…

秋ノ宮 陽菜
4週間前
19

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第十一話 魚政

 六花は一旦二階に降りて、自分のスマホを手に、屋根裏部屋にもどった。  お母さんのスマホ…

秋ノ宮 陽菜
1か月前
15

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第十話 受け取り損ねたプレゼント

 その言葉を聴いたとき、六花とお母さんは並んでソファに座っていた。座って、ドラマを観てい…

秋ノ宮 陽菜
1か月前
10

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第九話 お母さんの恋路

 もっとも、とても簡単な錠前だったし、鍵はびっくりするほどすぐ見つかった。棚の上のガラス瓶のなかに、鍵ひとつだけが入っていた。たぶんこの鍵で間違いない。  まるで見つけてくれと言わんばかりに、置いてある鍵。じゃあ、なんのための鍵? 六花に見つけてもらいたかったのだ、と、お母さんが言っている気がした。  瓶から鍵を取り出し、恐る恐る差し込むと、あっけなく鍵は開いた。六花は恐ろしくなり、心臓がばくばくと音を立てる。お母さん、一体なにを残したの?  机に置いたアルバムの上に、

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第八話 お母さんの秘密の小部屋

 家に着いて電気を点けると、父ちゃんは相変わらず畳の部屋で布団を被っていた。さっきと体制…

秋ノ宮 陽菜
1か月前
27

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第七話 憧れのお店、そして祈り

 エコバッグは使ってしまっていたから、三円払ってビニール袋を買った。  変な世の中だ。コ…

秋ノ宮 陽菜
1か月前
22

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第六話 六花のともだち

 そのひとは六花のかごを取り上げて下に置き、両手を両手で包んできた。あまりにも真剣なおば…

秋ノ宮 陽菜
1か月前
20

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第五話 卵ってなに?

第一話 第二話 第三話 第四話  六花は向かいの卵売り場に向かう。卵十個パック、六個パック…

秋ノ宮 陽菜
1か月前
20

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第四話 ついてないときに食べるもの 

第一話 第二話 第三話  アーケードのなかに入ると、右手の二軒目がお花屋さんだった。店頭に…

秋ノ宮 陽菜
1か月前
16

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第三話 動き出した運命

第一話 第二話  さて。買い物に出た六花は、徒歩三分の場所にあるコンビニに向かう。  も…

秋ノ宮 陽菜
2か月前
19

【長編小説】六花と父ちゃんの生きる道 第二話

 六花のお母さんは、前触れもなくいきなり死んだ。  買い物帰りに横断歩道を渡っていたら、左折してきたトラックが突っ込んできた。トラックは曲がるくせにスピードも落としておらず、前もろくに見ていなかった。  即死。百パーセント、相手が悪い。  知らせを聞いた六花と父ちゃんが病院に駆けつけると、お母さんはすでに霊安室にいた。 「念のため、本人確認してください。」  と言われて、手を震わせていた父ちゃんが立ち上がる。六花も続こうとしたら 「ご遺体の損傷が激しいから、あなたは