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TOKYO UTOPIA

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余白を余白のまま価値とする。モノに溢れた現代においては、そんなことが可能だと思う。光と水、香り、音、そして触れること。そんな簡単なものだけで、求めている世界は作れるのかもしれない…
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#建築

宗教と山、哲学と登山。

宗教と哲学の違いとは何だろう。もちろん明晰な答えがないことは自明だが、個人的には山に例えて「宗教=山」で「哲学=登山」だと思っている。 宗教は“教義”という山頂がある山のようなもので、頂へたどり着くにはどんな登り方(祈り方?)をしてもいいし、疲れたら休んでもいい。相手は山だからこちらに何も求めてこないが、求められれば(祈ることで)答えてはくれるような存在である。事実、日本では大体の寺が山奥にあって、修行といえばそこで行われるものである。 一方の哲学は登山という行為を指す。

自然と吸い寄せられる彫刻作品

「触れることができる美術館」について前回書いたが、その展示を行なっていた北海道立近代美術館には、こんな石のようなオブジェがある。安田侃という北海道出身の彫刻家の作品で、僕はこの方の作品が大好きだ。 北海道出身というだけあって、北海道立近代美術館をはじめ、北海道駅の待ち合わせ場所(下写真)や洞爺湖沿い(TOP)など、いたるところに彼の作品が置かれている。出身地・美唄(びばい)には「安田侃彫刻美術」もあるほどだ。 安田の作品は東京にも数多くある。一番有名なのは、六本木ヒルズだ

心洗われる空気のある場所に

あの本に出会って価値観が変わったとか、あの音楽を聴いてミュージシャンなったとか、海外旅行で見た光景が今のビジネスにつながったとか。取材をしていると、そういう話をよく聞く。 人生を変えるほどの出会いって、どの程度あるのだろう。ぼくには、そういう経験がない。もちろん、単純な経験不足かもしれない。気付くべき感性が欠如しているだけかもしれない。でも、何かとの出会いが人生を大きく変えたことは今のところ多分ない。 たしかに大学時代もその後の進路も今の仕事も、どれもあんまり普通じゃない

みんな“ゆらぎ”を求めている

大磯プリンスホテルに「THERMAL SPA S.WAVE 」というスパがある。海につながるインフィニティプールが話題だけど、温度帯の異なる4つのサウナが面白かった。自分の適温を見つけていくあの感覚、すごく心地が良かった。 サイトにあるロゴを見てもわかるように、“ゆらぎ”がこの施設の大切なキーワード。“ゆらぎ”に溶け込むような感覚が味わえるというわけだ。夜のインフィニティプールも、そういった意味ではすごく不思議な気分になれる場所。プールと海と空の境界が曖昧で、自分の居場所が

小田原から太陽へと続く長い道

僕が大好きな芸術家の一人・杉本博司による壮大な美術館「江ノ浦測候所」。小田原にある予約制の美術館で、今となってはかなり有名になったが、ここはやはり建築好きの人々にとっては垂涎の的だろう。予約制なので混むこともなく、ゆっくりと見られるのもいい。 とは言っても、芸術品が飾られているというよりは、建物自体がアート。その点で「豊島美術館」に通づるものがあって、好きなわけだ。しかも、建築は全て自然に向かって作られている点もいい。 たとえばこの「夏至光遥拝100メートルギャラリー」に

「感動の閾値」は人それぞれである。

人にはそれぞれ「感動の閾値」がある。自分が作った(広義の意味で記事とか写真とかSNS投稿とかも含めての)作品に対する感動の閾値は、人によって異なるのである。 自分が渾身の思いを込めて作ったものが評価されるかどうかは作り上げた作品の閾値次第で、最高傑作だと思っても案外評価されなかったり、6割くらいのパワーで作ったものが褒められたりもする。全力の作品が評価されると、この上なく嬉しいわけだが、このバランスはとても難しい。 閾値の設定ははたして自ずからできるものなのだろうか。ウェ

裏側まで見通せる真っ白な建築

神奈川県の横須賀市、観音崎公園内に「横須賀美術館」という美術館がある。東京からどうやっていくのか忘れたけれど、電車とバスを乗り継いで少し遠いところにあった。それほど大きくない美術館で、疲れない程度に見て回るにはちょうどいいサイズ。家族連れも多い。 設計は山本理顕。個人的には日本と欧米を掛け合わせたような控えめな建築が好きなんだけれど、無機質ながらも嘘のない山本理顕の建築はとても好きである。一番の特徴なのかわからないが、美術館の屋上がとにかく広くて開放的で(上の写真)、そこへ

なぜこの駅が好きなんだろう

昨日も書いたように、移動自体が目的になるような旅があれば面白いと思うのだけれど、その駅自体が楽しみで電車に乗るってのもの悪くない。その一つが日立駅だった。妹島和世による設計で、建築好きにも海好きにもたまらないであろうこの駅には、全面オーシャンビューのカフェもある。 僕は茨城へ行くついでに、足を伸ばして、日立駅まで行ったのだけど、疲れ果てていたことと帰りの電車が1時間に1本くらいしかなかったので、改札を出て、景色を眺めて、そのまま電車に戻った。往復数千円をかけて、この景色を数

沈みゆく夕日を眺めるための場所

 今日は今年最後の日記を書いてみる。以前、誕生日でもある元旦には毎年鎌倉へ朝日を見に行くということを書いたけれど、もちろん来年もそのつもり。一年の最初の日の出はなんとも気持ちがいい。  そんなわけで年末最後に何を書こうかと思案し、やっぱり年始が朝日なら年末は夕日だなと思った。夕日を見る場所もいろいろあって、個人的には日本最西の佐賀県から沈む夕日を眺めてみたいのだけれど、まだ行ったことがない。他にも千葉の房総半島から眺める夕日もすごく綺麗なので、これはまた来年どこかで紹介する

教えたくない、大都会の憩いの場

 誰にだって、人には教えたくないような場所がある。特に東京に住んでいると、週末出掛けた先でカフェが見つからない・・・・なんてことがよくあって、そんな時に「人には教えたくないけれど、くつろげる空間があるんだよなあ」という話は是非とも知りたいもの。  でも、当たり前だけど、そんな貴重な憩いの場を喜んで人に教える人は少ない。雑誌に掲載されている「穴場スポット」はすぐに人でいっぱいになるし、好きだった定食屋がテレビに取り上げられると、たちまち行列ができたりする。悲しい。  フリー

みんながカメラを向ける反対側

 今年はクリスマスにあわせて、週末に丸の内でディナーを予約した。別にクリスチャンではないけれど、世の中がウキウキしているとなんだかこちらも合わせたくなるのが人の常。僕ら夫婦は日本らしくない落ち着いた街並みが特徴の丸の内が大好きで、日比谷から東京駅までの長い道のりを何度も歩いたりする。  そんな散歩コースの最果てにある東京駅も大好きなスポット。すでに有名観光地となっている東京駅だが、日本がほこる建築界の巨匠・辰野金吾による設計で、2012年に全面修復が完了したばかり。  こ

どうしても南国が好きになれない。

 僕は暑いところが苦手だ。反対に寒いところが大好きで、冬になると北海道や北欧へ行きたくなる。冬だからといって南国にバカンスを求めたことがないし、今年の夏なんか最初は冬を求めて南半球へ行こうかと思った。  そんなわけで、沖縄には3〜4回しか行ったことがなくて、リゾートらしい離島に限っては宮古島の1度きり。しかも高校の卒業旅行で、当時も暑いところが苦手だった僕は同じように沖縄にあまり興味のない友達とずっと楽器屋で遊んでいた記憶がある。今思えば勿体無い。  しかし、先日仕事で沖

「なくなりゆく建築」について考える

 高度経済成長にともなって次々と生まれた昭和の名作建築が危機に瀕している。完成からおよそ半世紀、多くが老朽化を理由に取り壊されたり、建て替えられたりするのである。  坂倉準三による「札幌パークホテル」もその一つで、ホテル併設型の大型展示場への建て替えのため、2020年には工事が着工する。ここは天皇陛下が宿泊されることでも知られる老舗ホテルだったので、なんだか悲しいものだ。  札幌で言えば、近くにあった黒川紀章建築の札幌大同生命ビルがすでに解体されて更地になった。ここにあっ

水面に浮かぶ琵琶湖の美術館

 昨日から仕事で滋賀に来ている。琵琶湖をのぞむ温泉街だ。滋賀といえば、やっぱり琵琶湖で、どうしても水の印象が強い。そんな滋賀にぴったりだと感じたのがこの佐川美術館だった。  琵琶湖のすぐ近く、1998年に佐川急便創立40周年を記念して開館した美術館で、日本画家・平山郁夫などの日本美術をメーンに扱う。美術館の敷地のほとんどが水庭になっていて、まさに水に浮かぶ美術館。  しかも、この美術館には巨大な地下展示室がある。こうして水の中に潜っていく感覚が面白い、とてもいい建築だと思