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「なくなりゆく建築」について考える

 高度経済成長にともなって次々と生まれた昭和の名作建築が危機に瀕している。完成からおよそ半世紀、多くが老朽化を理由に取り壊されたり、建て替えられたりするのである。

 坂倉準三による「札幌パークホテル」もその一つで、ホテル併設型の大型展示場への建て替えのため、2020年には工事が着工する。ここは天皇陛下が宿泊されることでも知られる老舗ホテルだったので、なんだか悲しいものだ。

 札幌で言えば、近くにあった黒川紀章建築の札幌大同生命ビルがすでに解体されて更地になった。ここにあった螺旋階段が見たくて、寒い冬にわざわざ外を歩いて、ワクワクした気分でたどり着いた時のショックは相当なものだった。

 それからインスタグラムで「#なくなりゆく建築」というハッシュタグを作った。あんまり更新できていないのだが、都内では丹下健三による「駐日クウェート大使館」などもすでに建て替えが始まっているはずだ。

 取り壊しを希望する所有者と存続を願う団体の対立が続く黒川紀章建築の「中銀カプセルタワー」は有名だが、実は一部の客室を取り外して別の場所でホテルとして利用されたりもしている。改装された旧帝国ホテルの「ライト館」(フランク・ロイド・ライト建築)も愛知県犬山市の明治村にその玄関部分だけが移築される結果となった。

 今後もこうした老朽化による建て替えは増えるだろう。最近話題の原美術館もどうなるものだろうか。民間による買い取りやホテルとしての補強工事など、何か手立てはないものなのだろうか。古き良き文化をなんとか現存するテクノロジーが欲しいなと思う。

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