靄
最初は灰色の靄だった
現れる度に黒みを帯びて
次第に人の形になってきた
お前などいなくなってしまえ
生きたまま火に焼かれれば
死んでしまえばいいのに
朝になって彼が消えても
ことばだけが耳に残る
いや違うわ、あれは
私が口にしたの?
足りないアタマでよく考えなくちゃ
悪いことばは使ってはいけない
ちゃんと教わったはずなのに
蔑ろにしてきたから現れる
靄にイジメめられるのよ
最初は灰色の靄だった
今では疼いた躰まで
弄ぶようになった
ママが正しかったと覚ったけど
自分では止められないのよ
悪いことばが泉のように
止め処なく溢れてくる
だからもう媾うしかないのよ
散々口にしてしまったから
私の足りないアタマでは
抗う術は思いつかない
媾うしかないのよね