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特別支援は姥捨山じゃねえんだぞ!
10年間通常学級の担任をした。
学年懇談会では幾度となく、生活や学習に関する話を200名余りの保護者の前で、冗談を交えつつ、ペラペラと話す。
昨年、初めて特別支援学級を担任することになった。
年度末の学級懇談会。
参加者は、わずか10名程度。
しかし、障がいを持つ子どもの親を目の前にして、何を話すべきなのか、
いや、何を話してはいけないのか、
初任に戻ったように、大量の汗をかいていた。
『褒めすぎるのも不自然だよな…』
『でもできないことを指摘してそれが障がいに起因することだったどうしよう…』
正直、何を話したのか、覚えていない。
当たり障りのない話をして終わったのだろう。子どもたちと多くの時間を共に過ごし、喜びを分かち合い、苦難も乗り越えた。
何もしていなかったわけじゃない。
でも、親を目の前にして何も伝えられなかった。
主任はというと、相変わらずの調子で、はきはきと話していた。
なぜこの人はいつもと変わらずに話しているのか。
主任も通常学級からスタートした人だった。30代後半くらいだろうか、特別支援学級を任され、そこからずーっと特別支援学級一筋。
技術科で、木工が得意な職人気質の人だ。
職員会議では、おかしいと思うことはきちんと発言する救世主のような存在。
かと思えば、子どもたちをいつも笑わせ、時には厳しく指導をする。
子どもたちからも保護者からも信頼が厚い。
お酒が好きで、持病の痛風がでると、片足をぴょこぴょこさせて歩く。
先日、特別支援学級の先生たちで新年会を開いた。その帰り道。
「他の学年にもさ、色々溜まってる人いるかもしんねえだろ。○○先生とかさ。次はそういう先生も誘うべ。」
義理堅い男である。
仕事の報告をすると、「オーライ!」と答える。
気のいい、でもちょっとツンデレなおんちゃん。
そんなおんちゃんに聞いた。
なんでそんなに、はきはき話せるんですか?
「社会にでたら、障がいなんか関係ねえ。」
平手打ちをくらった。
そういえば、いつも言ってた。
「特別支援は姥捨山じゃねえんだぞ!」
主任くらい、子どもたち、そしてその家族と向き合えるようになりたい。
#心に残る上司の言葉