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醜い心🖤
私は非常に傲慢な人間だ
幼い頃より、何事も広く浅く、なんとはなしにこなしてしまってきた。パッと思い付くことで、できないことはスノボと数学、絵を描くことくらい。かといって何か極めたことがあるわけではない。いわゆる器用貧乏だ。
パワハラですら、「反面教師先生は、マルチだからねー。私なんか何にもできないからー。」と卑下するくらい、初めての仕事でも取り繕うことはできた。
そんなんだから、心から尊敬できる人なんて5本の指で足りる。いつもどこかで誰かを見下しているような時期もあった。
現在、特別支援学級を担当し、その中でも稀な院内学級を務めている。
院内学級は、大学病院や市立病院などの大きな病院に設置されており、2週間以上の入院を余儀なくされた子どもの学習を保障するために存在している。
教員が常駐しているわけではなく、入級希望者が出ると、病棟が連絡があり、利用が決まると、早速次の日から勤務が始まる。すなわち、最低2週間は学校を空けることになる。そのため、通常学級の授業は持っていない。(院内学級でもなかなかなおもしろエピソードがあるが、それはまた後日)
そんな感じの勤務なので、基本的には特別支援学級と部活の生徒としか絡みがないが、校長の気まぐれで、放課後に英会話教室なるものをやってほしいと言われた。そのなんちゃって英会話教室がきっかけで、ある生徒と出会った。
そもそも放課後に望んで英会話をする中学生なんてそうそう居るはずもないので、とりあえずすぐ隣の図書室で勉強している生徒に声を掛けて人を集めていた。
最後の英会話の日。相変わらずの閑古鳥だったので、参加者を物色しに図書室へ赴くと、こちらも閑古鳥。
控えめで声も小さい女子生徒が、一人、受験勉強に励んでいた。
「英会話やらない?」と声を掛けると、
「私立の見直しをしていて、ここの長文がわからなくて…。」と返事が返ってきた。
『まあ、今日は他に拉致できそうなのもいないし、部活まで時間あるし、教えるかー。』と、とりあえず教えてみた。
控えめだが、こちらの指導に真摯に向き合う姿勢を見て、なんとなく応援したくなった。受験生が塾に通うのが当たり前のこのご時世、彼女は塾に通わず、一人、図書室でむつむつと勉学に励んでいた。
私の財産である全国の過去問を渡し、放課後に図書室で解説するという日々が始まった。
ある日、時間を計りながら問題を解かせていると、一冊の本を見つけた。
『シッタカブッタ』作:小泉吉宏
存在は知っていったが、読むのは初めてだった。
なんというか、自分の心の流れが掌で転がされているような、優しいタッチだが、痛いところを突き刺すような鋭さ。
本を読み終え、ひとしきり過去問の解説した後、私は彼女に本の感想をこう伝えた。
「すごい…!こんなに心に響くような本が書ける才能が羨ましい。妬ましい。」と。
彼女が一言。
『尊敬じゃないんですか?』
…何でもかんでも自分に置き換えようとする傲慢さを恥じた。
謙虚に生きようと15歳の中学生から学んだ一日だった。
どこかの誰かの何かの足しになりますように。