お父さんとお母さん「掌の童話」 3
スロープのあるエントラを通って玄関から建物の中に入ると、明るいフローリングと漆喰を塗ったような壁がまだ新しく、清潔で安全な印象だった。
お父さんが受付であいさつすると、
「どうぞ横の廊下をお通りください」って、受付のお姉さんが教えてくれた。
受付の横の廊下を歩いて行くとガラス張りの扉があって、少し待っていると、中から白いポロシャツとピンクのジャージ姿のおばさんが扉を開けてくれた。
「柴田秋香様の次男さんですね? お兄様から伺っています。遠いところをよく来られましたね。お母様、待っておられますよ」って、おばさんは、にこにこ笑って迎えてくれた。
「この度は母がお世話になります。入所のときに来られなくて申し訳ありませんでした」
お父さんはおばさんに会釈した。
「いえいえ、いろいろとお忙しいんでしょう。大丈夫ですよ。お兄様がついて来られましたから。今日はお子さんも一緒なんですね」
おばさんは私にも、にっこり笑ってくれた。
「柴田秋香様の次男さんですね? 後でお母様の病状を説明します。お母様の顔を見られてからでいいですから、こちらにおいでください」
扉の横のカウンターの向こうから、白衣を着た女の人が大きな声でお父さんに呼びかけた。
その人もきさくそうで太っていた。
<続く>
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